転校生は美少女で能力があったような 3
ヒロミちゃんの能力って
タケルはいつもよりも訥々(とつとつ)と、言葉を拾うように話し始める。
…ヒロミちゃんって、体が弱いから駆けっことか体を動かして遊ぶのは苦手で、林の中に入って花を探すのがせいぜいかな…って感じだったんだよ。
先生もそこはわかってて、タケル君、ヒロミちゃんの近くにいてくれるかな?って。
先生がついてあげていても良かったんだろうけど、子供の自主性っての?あれを尊重したんじゃないかな。
俺はちょっと恥ずかしいとか思ってたけど、ヒロミちゃんって体弱いし…背が低い同志ってちょっと連帯感みたいなのもあったからね
「うん、わかった。ヒロミちゃん、どこ行く?」
そんな感じで林の方に一緒に歩いて行って。手はつながないんだよね、ガキだから。
林も人がいっぱいのところじゃなくて静かなところなの。なんでかって言うと、先生が座っているところの近くだから。
子供って先生から離れれば離れるほど冒険してる気分になるというか自由になった気がするというか…。
まあ結果的に先生が座っているところから近くの林は人が集まらなかったんだよ。
近くの林だから声も届くだろうし、先生はほかの子供たちを見てたと思う。
その林にはどんぐりが落ちてたから二人で拾ったな。両手いっぱいになったら、まとめて置いて。
花もちょっとだけあったけど、ほんのちょっとだから可哀そうだかろ取るのはやめようねってヒロミちゃんが言ったのを憶えてる。
ほんとに花はいらないの?って聞いたらヒロミちゃんが、いっぱいあっても一つだけあればいいし、きっとこの花は家族なんだよ、こっちはお母さん、こっちは子供って言ったりしたから絵本のお話みたいだなと思った。
で、少しだけ開けたところに出たの、大人が2人寝たらちょうど位の場所。そこでヒロミちゃんが
「誰にも言わないでね?」
って言ってきたの。いきなり。
なんのことだろう?と思ったんだけど、それは『前へならえ最前列』の連帯感ってやつだよね。
即座に「うん、言わない」って答えたよ。いまでもそういうと思う。
そしたらヒロミちゃんが「そこで見ていて」っていうの。
俺が突っ立っていると、ヒロミちゃんがピョンピョンってジャンプし始めたのね。
なんなんだろうなーって思って見てたら、ジャンプが高くなってきて、体力のないヒロミちゃんが出来そうな高さじゃなくて、そのうちクラスで一番運動神経が良かったケンジよりも高いジャンプしてて、さらに俺の背を超えてジャンプしたんだよ。
ほえーって声が出た。見えないトランポリンがあるみたいだった。
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「つまり、ヒロミちゃんが地面からジャンプで1メートル超えをやったということか」
「うん、今まで秘密にしてた理由はわからないけど、ヒロミちゃんジャンプすごいんだねって言ったら」
「…言ったら?」
「こう言ったんだよ『ちょっとだけ飛べるときもある』って」
???僕の理解というか想像の域をちょっと超えたセリフが脳内をかけめぐる。
飛べる?ヒロミちゃんなら天使の羽くらい生えていてもおかしくないけれど、飛ぶってなんだ?
「飛ぶってどういうこと?」
「実は俺も見ていないんだよ、そのときは飛べないって言ってた。
でもジャンプを見た後だから信じてる。それで、飛ぶってどうやるの?って聞いたら…」
「聞いたら?」
「ヒロミちゃんも言葉にするのが難しいのか、こう話していたよ」
…あたしが飛ぶときはね、長いまっすぐな道で誰もいたいときにやるの。
山の方のおばあちゃんのうちの近くとか。
そこで、ちょっと速く歩いてジャンプすると、少しスーって前の方に降りれるの。
それで今度は、少し走ってからジャンプすると、もう少しスーって行けるの。
どれくらい行けるかわからないけど、おなかに力を入れると遠くに行ける。
その次に、走ってジャンプしてヒザを曲げたままにすると、ずっと浮いたままなの。
ずっと、スーってなるの。
それからおなかにもっと力を入れると浮くの。
もっともっと力を入れるともっと高くまで行けるんだけど、怖いから行ったことはないの。
おばあちゃんの家の近くの道は『ひみつの道』って言っているんだよ、これも秘密ね。
道の近くに溜め池があって、子供が死んだこともあるんだって。
近づいちゃダメだよっておばあちゃんに言われてるの。
あと、飛んでいるときに風が吹いて溜め池に落ちたら怖いから。
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「…今まで秘密にしてたんだけどさ。話したらいけなかったかな」
タケルは少し後悔したのか、下を向きながら呟いた。
ご覧いただきありがとうございます。
ヒロミちゃん凄かった。




