大災害と能力発動のこと 7
この夜の話はチルドレンについて、で終わり
「あとは、能力みたいのはあるの?」
僕は念のため聞いてみた。
「それがさ、わかんないんだよ」
「どういうこと?」
「例えば、ポケットって見える人が多いけど視力がいいってわけじゃないよね」
「うん、そうだね」
「ポケットの場合は、見えるとか見えないとか区別が付きやすいんだけど、触れたとか味覚とかってわかりにくいというか…」
「そういうことか」
感覚には共有しやすいものと、しにくいものがある。脳波とか見たらわかるのかも知れないけれど、それだって同時に感知できる人間がいなければ客観性を得ることは難しいということだ。
たとえば「こんにちは」というひらがなだけ読める人間と「コンニチハ」とカタカナだけ読める人間では情報を共有できるか危うい。
感じることと解釈できるのは違うということか。僕はタケルに聞いてみた。
「能力なのかどうか判別する方法って、あると思う?」
「思うよ」
…意外な答えだった。
「え?あるの?」
「沢山同じ人がいたら出来るよね」
「ということは…そうか」
「チルドレンだよ」
タケルは空中を見ていた…なにかに思いを馳せているのだろうか。
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大災害の直後に、被災地を中心に能力を持っている子供たちが見つかった。
ほとんどが就学前の子供たちだったため、世間では彼らのことを「(大災害)チルドレン」と呼んだ。
チルドレンは政府に登録され、能力開発のための学校もあるという噂もある。
チルドレンはその能力がどれくらいのものか定期的に検査され、これらの情報は都道府県ごとと国で管理しているということは世間では知られているが、タケルの言う通り、情報は集めやすく比較しやすいということか。
ある意味で突出した能力の持ち主ならスポーツのエリートと同様に育成をしていてもおかしくない。
そういう意味で、この国は突然多くのサンプルを手に入れたということでもあるのか…
「多分、なんだけどさ」
タケルはボソボソと話し始めた。
「どこにでもいるレベルってのと、そうでもないレベルってのがあると思うんだよね。あと、目立つ能力とか、役に立たない能力とか。
そんなので等級までつけられて、作物とか家畜みたいにさ。俺はイヤなんだよ、よくわからないことで比べられるのは」
まあ、そうだよな。僕も小さいころに手先が不器用で兄弟からバカにされたんだけど、身内ですら比較されて悔しかった。
もしも僕が欲しくもない能力が発動した上で「あなたの能力は役立たずレベルです」って言われたら…とってもイヤだ。
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「俺も誰かの役に立てようとは思ってなかったし、これからもこの能力は世の中の役には立たないと思う。お前が聞いてこなかったら誰にも話す相手もなかったよ」
タケルの言葉はちょっと憂鬱そうだったが、そこはタケルらしく、
「まあ、この前もスーパーヨーヨー見つかったから。悪いことばかりじゃないよ」
と、楽天家を気取って見せた。
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「チルドレンのことは不幸だと思う?」
これはタケルに聞いてみたかったことだ。
…チルドレンのことは、窮屈だとは思うけれど不幸だとは思わないよ。
能力があるといっても個性レベルの話であって、差別を受けているわけでもなさそうだし。
俺は国にID管理されるのはゴメンだけど、もしも能力が誰かの役に立つことがあれば、それはその人の人生を明るくするかも知れないと思ってる。
被災地にチルドレンが沢山見つかったんだけど、あれって、大災害を実体験した当人だってことだし、大きくなってからでも「あのとき助けられなかった」とか悩むチルドレンもいるかも知れない。
そんな時に、誰かの役に立つ経験が出来ていたら…そう思うよ。
タケルが幼稚園の時の女の子のリボンの色まで憶えていたのは、少し後悔のようなものがあったのかも知れない。僕はそう思いながらビールを飲みほした。
ご覧いただきありがとうございます。
次は、子供時代の思い出です。




