霧
爪を噛む
霧のまちで
ペンを執っている
ひとをおもうとき
そこにひとはいないこと
すこしの矛盾で
わたしは死ねる、とおもう
孤独はいつも
みがってで
きれいなことばを書きたい
たぶん
つぎの朝は
すぐ朽ちてしまって
噛む爪のかたさまで
ふんわり、忘れてしまうから
すこしの矛盾で
ひとつ、ひとつ
ていねいに首を吊り
のこったさいごのひとにぎりだけ
永遠
まちの骨格が
ぼんやりしていく景観
そこにひとを描けないまま
死んでいくのかな、とおもう
爪を吐く妄想しながら
ふんわり忘れた霧のりんかくを
たぐりよせて、永遠