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第24話 妹は大事



 大まかな貴族の情報をオリアナから入手して数日が経過した。その結果、にわかには信じがたいが、ド田舎の街であるここリヒトにとんでもない上級貴族が滞在しているらしいと言う事が分かった。


 それも父さんが何も言わないと言う事はお忍びとか言うやつなのだろう。リヒトの騎士である父には街に出入りする貴族の情報が入って来るようになっているので、お偉いさんが街に来たらちょっと騎士っぽい服を着て街を巡回したりするが、今はそれもない。つまり、父さんはルドルム三光家(さんこうけ)とか呼ばれているストラティア家とか言うヤバ目の貴族がリヒトに居る事を知らないのではないだろうか。


 しかし、外套の紋章とかめちゃくちゃ目立っていたからお忍びとしてはどうなんだと言いたいきもする。


『お忍びで間違いないやろ。市長辺りには情報行っとるやろけど、下のもんに伝えてないってのはお忍び以外のなにもんでもあらへん。仮にも騎士であるルーのオトンに隠すメリットなんてなんもないしな』


(仮じゃなくて父さんは立派な騎士だぞ)


『紋章隠してへんのは単にリヒトの人間の事舐め腐っとるだけや。ここらの連中はどうせ王都のお偉い貴族のことなんて知らんやろし、仮にバレてもどうせ何も出来んやろって思っとるんやろ』


 畑仕事を終えていつもの岩場でこそこそと隠れ勉強をしながら、俺とクラーは勉強もそこそこに先日おっぱいを掴んでしまった女の子について思い出していた。


(なるほどなー……何しにリヒトに来たんだろうね)


『さてな、目的まではわからんが……でっかい貴族が動く時ってのは戦争か悪だくみくらいやからな。何でもない用事ならお忍びなんかせんで済ましゃええやろ』


(…………確かに。でもなー……リヒトは周辺地域とも仲良しで無害な街だから、戦争とか勘弁してほしいんだけど……)


『仮にどっかと戦う事になったらそれそれでええんちゃう。うちは少年兵って基本的に嫌いなんやけど、ルーはもう十分戦えるしどうせうちらの攻撃を防げるような盾はこの世界にはあらへんからな。ちまちま実績積み上げるんやめて戦功あげまくって一気に出世もええかもしれん』


 ふーむ……やはり出世になるには戦いで手柄を上げるのが一番か。

銃士部隊や騎銃兵とかにぶつからない限り、近接戦闘で聖剣を持っている俺の攻撃を防げる人間がまず居ないであろうことは何となくわかるが……戦場にでて生き残れる気がしない。俺はまだ自分が強くないことくらい知っている。


『よしよし、自分がクソザコや言うこと自覚しとるんやったらそれでええ。今の話を肯定しとったらボロクソに怒ってたところや。少なくともこないだの街中での攻撃くらいうちに言われんでも気付いて回避できるようにならんと、安心して戦場に行けとかよう言わんわ。あんな雑魚グレイブロンやったら遠くで様子みとった3人含めて瞬殺やったで』


(あぶなかった……戦争万歳とか言ってたら一体どんな悪口を言われたことやら……)


『ルーはそこまでアホやないやろ。9歳のガキにしてはよう考えとるし、うちが教えた事に忠実やからな。その年で自分を客観視できるんはそうそう居らんから、ちゃんとそのまま謙虚に成長せえよ。間違っても調子乗ってわけわからん失敗すんなよ』


(わ、わかった!)


 少し無駄話をしてしまったが、岩場ではいつも通り勉強と修行が始まった。



 ◇ ◇ ◇ 



「ヘクターさんからですか?」


 夕食のパンをもしゃもしゃと食べている時、それを父から聞かされた。


「ああ、オリアナちゃんも10歳になったからな。それを祝って食事会をするらしいんだが、ルーも来て欲しいんだってさ」

「あら、オリアナちゃんって此間うちに遊びに来てた子よね?」

「リアちゃん?」


「食事会……わかりました」



 表向きは10歳になったオリアナを祝うための集まりだが、


『いよいよやな』

(うん、長いようで一瞬だったな)


 メインイベントは腕時計の発表だ。 


 腕時計の試作品が出来てから約5カ月、特許申請や販路の確保のような今の俺ではどうにも出来ない事は全てヘクターさんとウェズに任せた。かつて王都でグランドマスターとして鍛冶ギルドの頂点に君臨していたと言うウェズが動いて尚も調整に5カ月掛かったのだから、何の人脈も知識もない俺が根回しをしようと動いていたら何年かかっていたのやら……



「父さんたちは招待されてないの?」


「一応呼ばれたが、どっちかってと俺は警備側だな」

「私とクレアはお家でお留守番かしらね」

「えー!クレアもいきたいー!」

「クレアがもうちょっと大きくなったらお食事会も家族で参加しましょうねー」


 テーブルを叩きながら母さんに抗議しているクレアは可愛いが、まだ5歳だから流石になー……


「クレア!お兄ちゃんに任せろ!何かお土産を持って帰って来る!!」


「ほんとー!!」


 ぶー垂れていたクレアのほっぺたを触りながら、俺は食事会から何かしらのお土産をもぎ取る約束をした。カラレスクラーを拾ってから遊びにもあんまり付き合えていないから、この辺りでちょっとクレアのご機嫌を取っておこう。可愛い妹は大事にしなければな。


「ほんとほんと、お兄ちゃんとリアは仲良しだから多分何かくれると思う」


 クレアの為にもなにか良い感じのお土産を持って帰ろう。

 最悪の場合は何か食べ物を持って帰ろう。


『ざっくりしとるって言うか、時々アホになるよな』


 食事会が開かれるまでの数日間、俺はちょっとそわそわしていた。


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