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第10話 テンション下がりすぎでしょ



 カラレスクラーがピカーっと光った後の俺のリアクションがいまいちだったようで、


『あー……テンション下がるわー』


 聖剣は不貞腐れていた。



「もう機嫌直せよなー……出たり消えたりできる剣ってだけでも十分凄いじゃん。そんな剣聞いた事ないし、便利だと思うけどなー」


 ピカピカ光ると人目に付くので場所を家から少し離れた場所に移した。

動かすのが面倒なのか大変なのか、大きな岩がごろごろと転がっていている場所……単純に岩場と呼ばれているその場所は大きな岩が陰になるので良い感じに人目を避けられるお気に入りの場所だ。そんなお気に入りの場所で俺は、完全に不貞腐れているカラレスクラーを握りながら会話をしていた。



『あぁ?あんなもん別に聖剣の力やないし、ウェアラブルデバイスの収納機能なんて当たり前の事やろ』

 

「うぇあ?よくわかんないけど、ピカーって光るのも便利そうだったとは思うぞ!騎士になると訓練で野営したりもするって言うし夜は明る──」


『それただのライトやんけ!!魔術で代用せいボケ!!神威光(しんいこう)をただの照明代わりにすんなや!!』


「だってよくわかんないし……でぃーでぃ?が修復とかいわれても、俺それわかんないし」


『DNA修復にテロメアの回復、組織復元やぞ?人類がよだれ垂らして欲しがるような技術が詰め込まれとるんやで?…………いやでもそうやな……そんなんわかるわけないか、第九界アメロイデスはまだそこまで発展してへんかったか』


 何となく馬鹿にされているような気がするが……さっぱりわからないので仕方ない。事実、カラレスクラーに比べればこの世界の人間は全員馬鹿なのかもしれない。


『あー……そうなー…………わかりやすく言うと、元気になる光や』


 すげぇ馬鹿にさてる気がする。


『怪我しても治るし、病気しても治るで』


「へー?治癒魔術みたいなやつ?」


『いや全然ちゃうけど………じゃあもうそれの凄い版ってことでええよもう……』


 な、なんだこの剣……めんどくさい……

 テンション下がりすぎでしょ……



「わかったわかったわかりました!!俺が馬鹿なんでよくわからないけど、正直もうカラレスクラーの事は聖剣なんじゃないかなーって信じてます!機嫌直してください!その他に何か凄い事はありませんか!」


『ほかー?まあ……なんでも斬れるで。基本的にうちは何も斬れんけど、担い手が斬りたいと考えたもんはなんでも斬れるで。まあ斬るっていうか分解して原子に戻しとるだけやけど』


「はいはい!原子は物質の最小単位ですよね!」


 少し前に習ったやつだ!


『ん?ああ、せやな。ルーが斬りたいと思ったものはうちを介して分解されるから、基本的にこの世界の物質ではどれだけ頑張っても聖剣の一撃は防げへんようになっとる。原子核まではちょっかい出さんようにもしとる』



「す、すげーーーー!!!!」


 なんだそれ強すぎないか!?


「じゃ、じゃあこの岩も斬れるの!?」


『そりゃな、岩に限らず体心立方格子でも六法最密構造でも完全結晶でも関係なく斬れるで。ちょうど今でかい岩に座ってるしやってみたらええんちゃう?』


「何言ってるかよくわかんないけどやってみる!!!」


 あらゆる物質を斬れる剣……そんなものが存在するのだとすれば、これは最強なのではないだろうか!

家の近くにあって大きすぎてそのまま放置されていた岩の上に座っていた俺は、右手にもったカラレスクラーを今一度強く握りしめた。


「い、いきます!」


 岩の上に立ち上がった俺は、ガラスのように透明な剣を今まさに自分が立っている岩に向けた。


「………お、折れたりしない?」


『はよせえや!!叩きつけるんが怖かったらゆっくり突き刺してみたらええで、それでも斬れるし』


「わかった……」


 岩に向かってこのしょぼい剣を叩きつけるのは少し怖かったので、とりあえずゆっくり岩に突き刺してみる事にした。これなら折れる事も無いだろうと思ったのだが……聖剣の力は想像を絶したものだった。



「……………」



 何の抵抗もなく、何の力を入れることなく剣先は岩に飲み込まれていった。砂場にショベルを突き刺すよりも柔らかく、木剣で素振りをしている時よりも容易く、聖剣は硬い岩を切り裂いた。


 俺の心臓はかつてない程に高鳴った。

 


『ほらな?この世界にルーが斬れない物質は存在せえへん。聖剣は担い手を導き、あらゆる困難を切り開いて世界を変革する勇者を支える為の道具やからな、このくらいは当然や』


「………すごい」


 あまりの切れ味に興奮した俺は、何故か岩に突き刺した聖剣をぐりぐりと動かして岩に絵をかいて遊んでいた。可愛い猫の絵が描けた、よかった。


「認めよう……カラレスクラー!お前は聖剣だ!!!」


『いや岩に猫の絵描きながら言われてもな……』



 何と言う事だろうか。


 家の近くで畑を耕している時に地面から出て来た、美しい声で汚い言葉を放つ土塗れの汚らしい棒きれがまさか聖剣だったとは…………いや待てよ?なんでも斬れると言うのは何も魔物や戦争の為だけのものではないのではないか?


『クソほど失礼な事考えてるところ悪いけど、正解や』


(伐採だって出来るし……)


『岩の切り出しも見たらわかるように簡単に出来る。分解が出来るから気付いてたかもしれんけど、もちろん結合も可能や。鉄の加工も簡単なもんや』


(すごい!!よくわからないけど、多分凄い事だよね!)


『わからんねやったら無理に驚いたふりせんでええわ!!』


(よくわかんないけど……多分わかる……勇者の武具(・・・・・)……アレだ)


『ほーう…………直観にしては、冴えとるな。てか、ボケナスグレイブロンの作品ってまだまだ残ってたんか?なんや、あいつの興した国もとっくに無くなっとるみたいやしその辺のアイテムは全部なくなってるかと思ってたわ』


(ううん、多分王都とか偉い騎士様とか貴族様が持ってると思う)


『ふーん……ま、どうでもええけど。でもせやな、とりあえず正解や。うちを使えばルーはこの世界の技術を超過したアイテムを生み出す事が出来る、材料さえ揃えてくれりゃ適当に作ったってもええけど……』


(いやだ!自分で作りたい!!)


『はいはい……まあ好きにしたらええよ。どうせこの世界は現状人間同士で殺し合いしとるクソつまらん時代やしな、無理に武具だのなんだの作る必要はない思うとるが……とりあえず………』


(……うん)




『岩に猫の絵描くんやめろ』




 こうして俺は、魔剣改め、聖剣改め、先生改め……聖剣を手に入れた。


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