第01話 なーんだ……んじゃゴミか……
創世記に記されたそれは、誰もが知るお伽噺
天を裂き、地を穿ち、星を覆う剣
その刀身はこの世の何よりも眩しく輝き
この世の何よりも眩く輝く
決して折れず、決して曲がらず、決して穢されず
七色を纏いし担い手は、何者もこれを害せず
七色を繋ぎし担い手は、何者もこれを防げず
ひとたび振るえば空は割れ
その一撃は山をも貫き、大地を裂き、聖なる力は星を覆った
勇者はいつの日か再び聖剣が必要になる日が来ると考え
相応しい担い手にしか抜けぬよう
聖剣が悪しきものの手に渡らぬよう
神々に『選定の台座』を造らせた
『選定の台座はいつか必要な時が来ると人々の前に現れる。
そして、次代の勇者がこれを引き抜くであろう!』
勇者の残したその言葉を………
またいつの日にか聖剣が現れると言う言葉を、人々は…………
鍬を打つと何か固いものが刃先に当たった。
石だろうと思いながらちょこちょこと掘り起こしてみると
「うーわ……なんだこれ……きったね……」
土で汚れたよくわからない硬質な棒きれがそこに埋まっていた。
「父さん父さーん!!畑になんか埋まってるんだけど!!!父さん!!」
どうしたものかと考えたものの、何か危ない魔物だったりすると怖いのでとりあえず父に確認をしてもらおうと思った俺は、遠くで同じように畑を耕している父を大声で呼んだ。
「わーかったわかった、ちょっと待てって……なんだぁ?人骨でも埋まってたのか?」
「いや、なんかよくわかんないけど、なんか埋まってた」
「どれどれ………っと……」
鍬で謎の物体の方向を指し示した俺に従って、父はこれと言って何も考えた様子もなくそれを地中から引っ張り上げた。
「それなに?」
地中から取り出された棒っぽい何かは土や植物の根のようなものががびっしり付いていて、全体像がよくわからない感じだった。
「ん-……っしょっと、おらっと……ほら、ルークも手伝え」
取り出したそれを父は乱暴に地面に叩きつけて土を飛ばし、持っていた鍬でごりごりと棒きれについた土汚れを削り始めた。
「なにこれ、危なくないの?魔物とかじゃない感じ?」
「いや違うな。俺も一瞬、棘ミミズの一種かと思ったけど、どうみても無機物だな。んで、多分これは……」
適当に会話をしながら2人でごりごりと土を削っていくと……
「やっぱりな、ん!!んん!!……ダメだ抜けねぇや……こりゃ剣だよ剣。ほれっ」
「おわっ!と、とと……」
未だに土で汚れまくったそれを父が放り投げて来た。
汚いのでちょっと触りたくなかったが……
「おー……ホントだ。汚れててよくわかんないけど鞘に入ってるって事は結構いい剣なのかな?」
「さてどうだろうな……この辺の地域で戦争があったのなんてそれこそ何百年も前って聞くし、いい剣だったらその時に回収されてるだろう。宝剣とか魔剣とかの名剣ってのはきっちり回収されるもんだからな……捨て置かれているってことはまあ……」
「なーんだ……んじゃゴミか……」
ただのガラクタだろうと言う言葉を聞いた俺は急激にテンションが下がったが、
「ゴミっちゃゴミだが、鍛冶屋にもっていきゃいくらかにはなるかもしれん。見つけたのはお前だから金になったらお前の小遣いにしてもいいぞ」
「え!?マジ!!やったー!!!」
父のその言葉を聞いた瞬間、少し元気になった。
「……でも、なんだって今まで気付かなかったんだろうか……まあいいか、こういう事もあるか……ってほーら!鍛冶屋にもってくのは後にしてまずは耕せ耕せ!農閑期はもう終わるぞー」
「わーーかってるって!」
そして俺は、剣を適当な場所において畑仕事に戻った。
勇者の残したその言葉を……
またいつの日にか聖剣が現れると言う言葉を、人々は……
これと言って信じていなかった。
数ある物語の中からこの作品に目を通していただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、少しでも楽しんでいただければと思います。
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