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断罪予定の悪役令嬢の行く末  作者: みずのとさやか
断罪予定だった悪役令嬢のその後
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恋って中々の状態異常だわ

短めですみません

 久々にお見かけしたノイエ様は、なんというか……キラキラしていました。あれ、この人こんなに格好良かったかしら。

 これが恋愛脳……中々の状態異常ね。嫌な気分ではないけれど、制御が効かないのが玉に瑕よね。


 ノイエ様は、わたくしを見るなり手で口元を押さえ、耳を赤く染め上げながらはにかんでいらっしゃいました。

 不覚にもきゅんとしそうなので自重して欲しいですね。だってアレでしょう?わたくしに会えて嬉しいのを噛み殺してこうなってらっしゃるんでしょう?


「アナベル様、ノイエ様の事よく分かってらっしゃいますね。多分その通りです」


 すかさずリリーナがコソッと伝えてくれました。わたくしが分かっているというより、ノイエ様が隠さなくなったのでしょうけれど。


「王宮に住んでいるのに、こんなに会えないなんて思わなかった。何か不足は無いかい、アナベル」


 ノイエ様と合流後、近隣国から留学予定の王女殿下をお迎えする予定なので、いつものメンバー以外にも護衛その他がいるせいかノイエ様が王子様モードを保とうとしていました。

 デルフィニウムはきちんと無表情でしたが、カンパニュラが呆れ顔です。


 ちなみにノイエ様の側近たちですが、デルフィニウムが護衛のためほぼずっと側に控えていて、カンパニュラ、ムスカリ、ネメシアは機会に応じてという体制です。執務室にそれぞれ彼等の席はありますが、デルフィニウムは近衛騎士団に、カンパニュラは宰相府に、ムスカリは運送ギルド立ち上げ室に、ネメシアは魔術協会に所属しています。


「ええ、良くしてもらってますわ、とっても」


 チラリとガザニアと何人かの女性騎士に目を向けると、彼女たちは少しだけ表情を固くしていました。わたくしがノイエ様に言いつけるとでも思ったのでしょうか。

 陰口が聞こえている事もバレていないと思っているようですし、ホント底の浅い……。


「スターチス様には快適に過ごして頂けるよう努めております」


 取り繕うようにガザニアが発言をしました。推しに言い訳をしたかったのか、それともお話をしたかったのかは分かりませんが、なんとも悪手。


「アナベル、護衛騎士を変更しよう。私の方から手配しておこう」


 殊更冷たい声でノイエ様が言います。

 そうなのよね、発言を許していないのに何故でしゃばったのガザニア。

 アレか、本人を目の前にしてテンションが上がったのかしら。それとも自分なら許されているとでも?


「そ、そんな!ノイエ殿下!」


 すがるようにガザニアは声を上げます。

 長らく冷めた関係と言われていたわたくしとノイエ様。色仕掛けでノイエ様を落としたと思っているようでしたので、わたくしよりも『ぼんきゅばーん』なガザニアを処罰するとは思っていなかったみたいです。


 大体、スケベじじいじゃないんだから、そういう魅力的な女性にメロメロなノイエ様で貴女たちは良いわけ?その考えって、ノイエ様を馬鹿にしているわよね。


「発言を許した覚えは無い。お前の今の態度一つでも普段が窺える。

 アナベル、我慢しなくていいんだ。もう少し時間が取れていればもっと早く気づけたものを……。いや、言い訳だな。小さな事でもいいから、私を頼ってくれると嬉しい」


 言葉の前半と後半の声色が違い過ぎてびっくりしました。わたくしに向けた言葉……なんて言う声出してるんですか!


「だっ大丈夫です。配置換えも結構。この程度、わたくしが諌めておきますので、ノイエ様こそわたくしを信頼してください」


 声が上ずってしまきました。

 王子モードとの差がね、凄いんです。あ、甘ーい!って叫びたい。あと、この声を出させているのがわたくしだと思うと、身体が熱くて、それから恥ずかしくて、逃げ出したくなります。


「長年の淑女教育のせいか、お顔には全く出ないのがアナベル様の素晴らしいところであり、乙女としての欠点でもあります」


 リリーナ、思っていても今言わないで欲しかったわ。

 ノイエ様は耳を赤くしながら肩を震わせて、デルフィニウムはニヤりとし、カンパニュラは頷いていました。


「アナベルがそう言うなら、今回は見逃そう。次は無い」


 結局、ガザニアに一度も視線を向けずノイエ様はこの話を終わりにしました。

 ガザニアが縋る様にノイエ様を見て、振り向いて貰えないと分かるとわたくしを睨みます。


 武術大会でノイエ様の対戦相手にもいらしたけれど、騎士って直情型が多いのかしら?もう少し教育が必要ね。

 次回のデルフィニウムによる護身術指導の時に、それとなく指導するようお願いしてみましょう。


 今後について考えながら、近隣国の王女殿下をお迎えするための広間に向かいました。





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