悪役令嬢と卒業式13 第四婚約者候補の発言
婚約者候補が一人ずつ断罪されたような流れですが、現在は王族が学院に在籍している卒業式のクライマックス婚約者決定の下り中です。すっかり忘れてましたけれど。
ベロニカ様によるわたくしへの断罪?からの、ルールカ様によるベロニカ様断罪からの、ワトソニア先生カルセオラリア伯爵ルールカ様の断罪を経て現在に至ります。
とりあえず、婚約者候補のうち言い掛かりすらない完全無傷がユイリィ様、何度も槍玉に上げられたけれど一応?傷無しなわたくし、罪には問われるベロニカ様、処されるレベル?なルールカ様と言ったところでしょうか。
「……えー、他に異議ある者は」
進行係がやっと本来の仕事を全う出来そうで、ほっとした様子が伺えます。令嬢同士のキャットファイトレベルかと思いきや、他国を巻き込んでの出来事に発展し、自国の王子のみならず他国の王子に王太子まで発言したと合っては仕事のしようがありませんでしたからね。
けれど発言の際、『もう無いよね?』と恐る恐る感があったのは仕方ない事だと思いました。
そんな中、すっと手を挙げたのはユイリィ様でした。
……え?婚約者候補は一人ずつ何か発言しないといけないとか言うルールがありましたっけ?
わたくし、ユイリィ様に断罪される何かしらってあったかしら。流れ的にわたくしかユイリィ様で残った候補から選ばれるのだとばかり思っておりました。
「発言宜しいでしょうか?」
進行係は、もう勘弁してくれという顔をしながらノイエ様の顔を伺い、許可しました。
「発言のご許可ありがとうございます。わたくしが申し上げたい内容は二点。先ず一点目。
先日行われた学院の必修科目淑女のマナー上級C最終課題についてです。
ご存知の通りこの課題は上位貴族、下位貴族に分けグループ毎に実技試験を行うものでした。
この課題において、聖女リリーナ様を不合格にするよう指示した方がおります。実際、リリーナ様は三度、巻き込まれる形で不合格となりました」
わざとお茶を溢したり、お茶をかけられたり、下世話な噂話に無理矢理話題転換されたり、リリーナが散々だったこの最終課題。
確かにね、これらを捌いてなんぼなので不合格にされたのでしょうけれど、話を聞く限り貴族初心者には難易度が高過ぎる。下位貴族にはそこまで求められるものではありません。
ベロニカ様かルールカ様による策かと思っていましたが……ここで敢えて発言なさると言うことは、誰かが違う意図を持っていらした?
「リリーナ様に悪意を持って仕掛けた方は、リリーナ様同様に不合格となりました。ですが次の機会では、前回の態度が嘘だったかのようにきちんとした対応だったそうです。これは何らかの意図があったとしか思えません。
そしてこれを仕組んだ方は……、ノイエ殿下でお間違いないでしょうか?」
ユイリィ様の言葉で、会場内が騒つきました。勿論わたくしもびっくりです!
あの、執拗にリリーナを不合格にしようとする策が、ノイエ様の?一体何の為に!!!
「 ……お見通しとは、恥ずかしい。だがこの案件、無事解決したと聞いているが?まさか聖女リリーナや、彼女が支える予定のアナベルが何か便宜を図らせたと言いたいのか?」
この言葉に勢いよく顔を上げるベロニカ様。……いえ、今は何も言わないのが吉ですよ!ホント。
「まさか!公爵家の力をお使いに……?」
ベロニカ様はノイエ様が言わせたかっただろう台詞をまんまと発言しました。シナリオライターであるノイエ様は本当に人が悪いなあ。
騒つく会場内を静めるように進行係が声を掛けました。
「静粛に。……聖女リリーナ、件の最終課題はどのように合格したのか、発言ください」
会場内がゴクリと息を呑み込みました。
ノイエ様によるわたくしの不正誘引があったとしたら、それはわたくしを婚約者に選ばないという事になります。そしてそれを無傷のユイリィ様が暴いた。
そうなると、第四位婚約者候補の逆転を意味するのでは?と思っているからです。
「下位貴族用の実技最終課題では、残りの少ない機会で嫌がらせが起きないという保証がありませんでした。そうなれば私は学院を卒業出来ない聖女となり、支える予定のアナベル様にもご迷惑が掛かる。なので私は、アナベル様に相談して策を頂戴しました」
ざわり。
『まさか』『最後の最後で!』など、わたくしの悪口も聞こえてきましたけれど、忘れないからね?
それから、幾人かの貴族がモントブレチア伯爵に近寄って行ったのが見えました。
凄い、人が擦り寄る瞬間を見てしまったわ……。
「それから一週間、地獄のようなマナー指導を頂き、特例を利用し、上位貴族用の淑女のマナー上級Cを合格する事が出来ました」
下位貴族でも特例を使えば上位貴族用の最終課題を受ける事は可能です。けれど、明らかにレベルが上がる為にそれを利用する者は居ません。
リリーナの発言に主に下位貴族のご令嬢方が『凄い!』『信じられない』という声を上げていました。
ピンと来てない男性陣でしたが、この声に如何にレベルが違うかと言う事が理解出来た様です。
「ノイエ殿下、聖女リリーナ様は貴族として迎えられてまだ一年と少しです。にも関わらず彼女にこれを仕組んだのは……、スターチス様の指導力を試されたのですね?」
リリーナのピンチにどう動くのか、どう助けるか、何の力を使うのか。それらを試されたという事でしょう。リトマス試験紙にされたリリーナが不合格になったらどうなると思っていたのかしら!
「そこまでお見通しとは、本当に恥ずかしいな。その通りだ」
「いえ、本題はここからです。ノイエ殿下はスターチス様を試した上で、最高の形で実を結ばせると確信していましたね?……そうして、スターチス様の指導力をこの場にいる全ての方に知らしめるおつもりだった。いかがでしょうか?」
ユイリィ様は、いつか見た屈託のない笑顔でノイエ様に語りかけました。
「……」
それに対しノイエ様は何も答えません。ユイリィ様、流石にそれは飛躍し過ぎなお考えでは?
「策を練って、周りを全部潰して、外堀を埋める前に、さっさとご自分の気持ちを仰れば良いだけですのにね!
それから二つ目ですが、わたくし長年殿下の手足として働かせて頂いておりました。その褒美として!殿下の婚約者候補辞退と、クレロデンドルム伯爵子息との婚姻の許可を賜りたく!」
この言葉に、ついに会場は騒つきでは治らず騒然としてしまいました。
「ははは!この場で言うとは君らしい。勿論、認めよう。引き続き、クレロデンドルム伯爵子息と共に私に仕えよ!」
「有り難き幸せ!」
満面の笑みで言葉を交わしていらっしゃいました。
という訳で、残った婚約者候補はわたくし一人なんですけれど、ずっと言おうと決めていたわたくしの告白タイムって、今更設けるタイミングって有るのかしら?
恐らく、次回に!終われる筈です……!
誤字報告ありがとうございます。ガッカリ煽るってなんでしょうね……ガッツリに直しました。
いつも助かります!




