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断罪予定の悪役令嬢の行く末  作者: みずのとさやか
断罪予定の悪役令嬢
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悪役令嬢と卒業式12 黒幕の真実

二日程更新出来ず申し訳ありませんでした…!

「わ、わたくしの何処が!掌の上で転がされているだけの存在だと言うのです!?」


 ルールカ様の初めて発した怒声、それは嫌疑を掛けられた時でも、嘲笑うように揶揄られた時でも無く、傀儡だと指摘された今でした。


「では、これらの所業は君の策だと?いくつもの領地を陥れ、たくさんの学院生を巻き込んだこの大それた計画を君が考えたと?そんなまさか!件の隣国からやらされていただけの憐れなご令嬢なのだろうに。

 カルセオラリア伯爵からの指示は無かったかもしれないが、隣国からは有ったのだろう?大丈夫、単なる歯車でしか無い君には、寛大な措置を考えている。君はただ操られていただけ、彼等の掌の上で転がされていただけなのだから」


 ノイエ様が大袈裟に煽り始めました。

 そんな、安い煽りに釣られる訳無いでしょうに。


「わたくしは!掌の上で転がされるだけの、傀儡じゃない!わたくしは、わたくしこそが!全てを転がす側になるのよ!」


 どうやらルールカ様のコンプレックスに触れてしまったようで、ガッツリ煽られていました。


「何も知らず、分かったふり。相手の良い様に操られているとも知らず、自分が支配していると勘違い。これの何処が転がす側なのか」


「わたくしが!わたくしが彼女たちがベロニカの友人になる様提案したし、ベロニカが毒に興味を持つ様餌を撒いたのよ。何も疑わず自分の策だと思わせる為にね!失敗しても良かった。成功すれば聖女も殺せるかもしれないし、失敗すればベロニカを陥れるだけ!全部、全部わたくしの発案よ」


 必死になって自らの悪事を暴露するルールカ様。取り乱し、叫ぶ様はいっそ憐れでそれでいて滑稽でした。


「わたくしを!大嫌いなベロニカやお父様お母様と一緒にしないで。何も考えず、ただ言われるがまま操られるだけの存在だと思わないで!

 あはは、頭空っぽの見てくれだけ素敵な王子様を演じてるアンタなんか!隣国の彼の方たちに良い様に転がされるんだから!」


 やぶれかぶれなのか、笑いながらベロニカ様やご両親、ノイエ様を罵るルールカ様は、丸で気が触れてしまったかの様で異様でした。


「カルセオラリア伯爵領に隣国から多数密入国者が潜んでいる事は随分前から分かっていた。そして、現在伯爵領は彼等の手中にある事も。アナベルが襲撃されそうになった日カルセオラリア伯爵を会議に呼んだと言ったろう?伯爵は自領について把握していない事が分かった」


 ノイエ様が説明し始めると、先程まで意気消沈していたカルセオラリア伯爵が息を吹き返しました。


「わ、私は知らない!私は知らなかったんです!娘がそんな事をしでかして、隣国と繋がりが」

「自領の現状を把握出来ないのなら返上するのを提案する。もう何年も、伯は領地運営に携わっていない証拠も抑えてある。まぁ、乗っ取られた後の運営の方がいくらかマシだった様だから、領民にとっては良かったのかもな?」


 伯爵の反論をピシャリと封じ、更に嫌味も加えていました。

 隣国に運営を乗っ取られた方がマシって……、隣国の乗っ取った方は他国だから好き勝手バレない程度にやっただろうに、それでもマシって……。今代のカルセオラリア伯爵はどうなっているのかしら。名門伯爵家だった筈なのに。


「隣国に良い様にやられたのは本当でしょう?わたくしをずっと、婚約者候補に置いたままだったのだから。残念だわ、王子様の妻になりこの国を転がす存在になるまであと一歩だったのに。愚かなベロニカやお父様に足を引っ張られて」


 ルールカ様は前世で見た2時間サスペンスドラマの悪役の様に色々話し始めてくれていますが、聞けば聞くほど、何というか……


「驚く程傀儡だな、カルセオラリア嬢。こちらが手を打っていないと思っていたのか?」


 ノイエ様はニヤリと笑ってユーフォルビア様を見つめました。


 ……ユーフォルビア様は隣国の第二王子です。我が国には隣接する国が5つ程有ります。そのうち、件のハーブが特産なのは2国。

 ルールカ様が言う隣国、ワトソニア先生がハーブを輸入していた隣国、これらは同じ国だと想像出来ていましたが、え?ユーフォルビア様の国の方なの?

 じゃあ、途中から情報が手に入らなくなったのはユーフォルビア様のせい???


「この件に関して、私からも説明させてもらう」


 ルールカ様は、隣国の繋がりは大物だと確信している様な口ぶりでしたが、ユーフォルビア様が出てきた事に大変驚いているようでした。つまり黒幕を知らなかった様子で、そのあたりも大変申し訳ありませんが、小物感が物凄いです。


「私がこの国に留学したのは今から3年前になる。ノイエから密かに情報を貰い、調査も兼ねて留学するに至った。元々2年留学する予定でもあったので都合が良かったのだ。


 秘密裏に情報を集め、カルセオラリア伯爵領に我が国の者が不法に入り込んでいるのが分かった。ノイエからの情報通りだった。そして、何故私に相談を持ち掛けたのかも。

 カルセオラリア伯爵領にいるのは、王弟……私の叔父の手の物だと分かったからだ。

 国際問題にするかを考え、ノイエは私に情報を送って来たのだと分かった。温情には感謝しかない、この恩はいずれ必ず。


 さておき、王弟である叔父は、歳の離れた陛下……叔父にとって兄であり私にとって父である陛下にコンプレックスを抱いていた様だ。自分が生まれる前に王太子になっていた兄は、不当に王位を継承したのだと。

 現在の王位継承権は私の兄が第一位、私が二位、私たち兄弟が継げない状況になって初めて第三位の叔父が王となる。兄と叔父は十程しか変わらない。叔父は、逆恨みを募らせていた様子だった。


 叔父に計画を提案したのは王弟妃だと分かっている。この国の王妃となる者を掌握し、私を傀儡にしようとしたのだ。

 叔父が王位を継承するには序列を二度変更する必要がある。これはなかなか難しい。だが今なら私の兄に子はいない。序列を一度変えるだけなら出来ると彼女は確信していた」


 王弟妃がユーフォルビア様を支持なさっていて、王位継承権の序列を変更する策があった?乙女ゲームでは単純に、タイプの違う二人の王子様が出て来るというだけの認識だったのに、そんな裏があったの?

 ワトソニア先生ルートの時にも思ったけれど、このゲームの現実ってかなりドロドロだわ!


「ノイエから情報を貰い、私が予定より早く留学する事が決まった時、留学は3年にしろと言ったのも王弟妃だった。王弟妃は言った。『留学3年目に聖女が現れるから』と。

 本国では魔術師が少ない。魔獣被害も有り、この国よりも聖女を欲しているのは事実。長い間不在の聖女を娶れば王位継承権の序列が変わると、王弟妃は確信していたのだろう」


 ユーフォルビア様ルートを選んだ場合、リリーナは隣国へ行き、隣国にて聖女の力を遺憾なく発揮する。ユーフォルビア様と共に。二人は英雄と讃えられ、祝福の中王位を譲り受けるエンディングだった筈。

 ゲームプレイ中は気にならなかったけれど、そうよね、王位継承権二位よね?序列変動があったって事よね?


 本来ならユーフォルビア様は学院5年目と最終学年の2年間留学する筈だったけれど、ノイエ様の情報によって留学が早まった。なのに王弟妃はさらにもう一年留学しろと言う、聖女が現れるからと。長い間聖女は現れていないと言うのに、最終学年時に聖女が現れると知っていた。


 それはつまり、王弟妃もまたわたくしと同じ転生者である可能性が高い。

 今後起こる事がおおよそ分かるから、夫である王弟が優位になるよう立ち回ったという事?


「叔父の関わった証拠を集めつつ、機会を待った。王弟を罪に問うのだ、慎重に、そして決定的なものが無ければならない。だからハーブの流行や聖女への毒針事件、スターチス公爵令嬢への襲撃事件を黙認した。本当に申し訳なく思う」


 ユーフォルビア様は武術大会の時、『本国からの指示があって』リリーナに接触したと打ち明けてくださった。

 リリーナとの関係性と自らの意思を王弟側に悟らせる事の無い様に、けれど友好である事を見せ付けるために。


「叔父の本意はどうあれ、私を担ぎ上げる為に行われた事は事実。後程正式な使者を立て謝罪と賠償を約束する。そして私は責任を取って王位継承権を放棄する」


 まさかの発言に会場はざわつきました。明らかに巻き込まれただけのユーフォルビア様が王位継承権を放棄する。

 国を挟んでの大事になりました。


「まぁ、近いうちに私の順位が下がる事も決定していたし、むしろ気楽になれる。……という事で宜しいだろうか、兄上、いや、王太子殿下」


 恐らくユーフォルビア様のお兄様の奥様、つまり王太子妃が御懐妊なさったのでしょう。ユーフォルビア様の言葉にはそんな意味合いが含まれていました。

 そして、ユーフォルビア様も卒業生な為、ご家族が来ております。流石に隣国の王が来てしまえば公式行事にせざるを得ないので、今回は御忍びという枠でユーフォルビア様のお兄様がいらしてました。


「……お前はいつまでも自由と強さを求めていたからな。良かろう、陛下に打診してあった件は強く進める事とする」


 他国の王子の王位継承権が放棄されるという前代未聞の卒業式となりました。







という訳で久々!な隣国の第二王子ユーフォルビア登場回でした。

ずっと国名が出て来ないのはこのせいでした…。

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