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断罪予定の悪役令嬢の行く末  作者: みずのとさやか
断罪予定の悪役令嬢
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悪役令嬢と卒業式11 暴かれる悪事

遅くなりました…!

 ぶつぶつと独り言を言うカルセオラリア伯爵を冷めた目で見るルールカ様。うーむ、この後の展開はもはや一つ。


「お父様!なんて事でしょう、そんな恐ろしい事に手を染めていたなんて」


 案の定ルールカ様が伯爵の切り捨てにかかりました。今の内容ならばルールカ様が関わっている確証は無いものね、そうなるわね。


「きっとお父様も誰かに騙されていらっしゃるのだわ!なんて事でしょう!」


 現在はノイエ様の婚約者決定の場だった筈ですが、四人中二人……つまり半分の候補が断罪されております。当初はわたくしへの断罪だった事を考えれば四分の三?なかなかに酷い展開ですね。


「まさか!お父様も既にハーブの中毒者で、ハーブ欲しさに……」


 そうこうしている間に、ルールカ様は伯爵切り捨てからのワトソニア先生への擦りつけにルート変更なさった様です。

 ルールカ様、もしもを考えて逃げ道をたくさん作ってらっしゃったのね……。


「……な!君は!私迄切り捨てる気か……!」


 ワトソニア先生も反論なさるわよね、そりゃあ。


「お父様がソリダゴ男爵とゴールデンロッド子爵のご令嬢方を軟禁してやらせた事は学院内にハーブを流行らせる事でした。そのハーブはワトソニア先生のご実家で作られているのでしょう?力関係が明白では無いですか!」


 ルールカ様は上手くやったのでしょう。事がバレても、いかにもワトソニア先生に言われて仕方なく……と言い訳が出来るように準備をしている筈です。

 哀しげな表情を作り、ワトソニア先生を糾弾する姿は名女優の域でした。


「力関係!ははは、そうだね、力関係は明白だった!は、ははは、ワトソニア先生は気付いていないようですが!」


 二人のやり取りに割って入ったのはネメシアです。ツボに入ったのか爆笑しております。


「そもそも、ワトソニア先生がハーブの栽培に興味を持ったのも、ワトソニア伯爵がハーブ栽培を渋々許可した原因の災害も、全部指示があったからですよ、カルセオラリア領から!

 あのハーブは元々隣国で栽培されていたものだった。それをこの国に根付かせる為にも、栽培地が欲しかったが残念ながらカルセオラリア領は適さない。だから、適した領地の脇の甘そうな人物にハーブの可能性を説いた……覚えはありませんか、ワトソニア先生?そもそもハーブについて知ったきっかけが何だったのか」


 ワトソニア先生はハッとして、青褪めた表情でネメシアを見上げました。


「伯爵夫人は陛下の婚約者候補だった。ワトソニア先生を殿下の側近にねじ込みたいと思っていたのも有名だった。ワトソニア領はハーブの栽培に適していて、その子息は幸いにも植物魔術の使い手だった。ワトソニア伯爵は領民を愛する手堅い領地運営をなさる方だが、夫人に良く似た性質の子息は現状に満足していないようだった……全部、調べられてたんですよ。ワトソニア先生がハーブについて知った時から、ずっと!」


 ネメシアが笑いながらワトソニア先生に告げました。

 力関係は明白でした。ずっと、カルセオラリア伯爵の掌でワトソニア先生が転がされていた事になります。


「ワトソニア伯爵領で起こった災害は意図的なものだった。隣国が戦争を仕掛ける前に行う工作によく似た仕掛けだったよ。ああでも、先生が精神魔術を使えたのは予想外だったみたいだけどね」


 会場内がざわっとしました。精神作用魔術は登録が必要ですが、勿論ワトソニア先生は登録しておりません。


「ワトソニア先生はカウンセラーとして優秀だったのにね。ハーブに手を出さなければ学院の教授にも推薦されたかもしれない。

 けれど先生は精神魔術でハーブティーを飲ませた。信頼して相談にやって来た学生に。手製のハーブティーに戸惑う学生も居ただろうに……」


 殊更可哀想感を出して語るネメシアだけれど、真実はワトソニア先生に好意のある女子学生が喜んで飲んだのが大半でしょう。まあ、ワトソニア先生が素敵に見える精神魔術を使っていたかもしれませんが、ちょっと盛り過ぎです。


「指示はカルセオラリア伯爵領から出されているけれど、こんなに手の込んだやり口、そこでぶつぶつ言っている伯爵が出来るとは思えないよね。……誰がやったんだろう、ね?」


 ネメシアの目線につられる様にワトソニア先生の目線も動きました。勿論、ルールカ様に。


「ハーブの高濃度抽出を依頼されませんでしたか?」


 カンパニュラの言葉に、ワトソニア先生が弱く頷きました。


「ワトソニア先生はもしもの時を考えて、鳥が運ぶメモを保存していますね。学院の講師用控室の机の、二重底になっている抽斗に。でも、整理整頓は得意じゃ無いみたいですね。今後は心掛けた方が良いでしょう。何処から綻びが出来るか分かりませんから」


 ごちゃごちゃしたあの机に、そんな証拠が有ったなんて!色々調べたのに!

 まさか仕切りがパーテーションだけの講師控室の机にあるなんて思いもしませんでした。意外と大胆ですねワトソニア先生。この意外性を違うところで活かせていればなぁ。


「動物は意外と証拠を残す。裏切らない配下がいれば、口頭指示で良かっただろうに……、失敬、信頼の置ける友人の一人も居ないご令嬢には無理な事でした」


 デルフィニウムは思っていたより辛辣でした。まさかこんな事を言うとは……。だから今まで無口キャラでいたのかしら。


 ワトソニア先生の失態やデルフィニウムの嘲笑に似た指摘に、ワナワナと身体を震わせるルールカ様。

 けれどまだ、彼女の仮面を完全に壊すものてはありませんでした。


「わたくしが、お父様に言われて書いたものです」

「ルー!何を言い出すんだ!」


 そうです、まだこの逃げ道が有りました。


「尋問すれば直ぐ落とせそうだけどね、でもあまり証拠を残していないのも確かだろう」


 ノイエ様がゆったりと笑っていました。


「わざと作ったアナベルの隙、まんまと引っかかってくれてありがとう。あの日カルセオラリア伯は王城で会議に出ていたから、指示は出せないよ」


「もっと前に指示されていたとは考えられませんか?」


「難しいだろうね。あの日アナベルの護衛が一人になると情報を流したのは私なのだから」


 わたくしが暴漢に襲われそうになったあの事件。

 わたくしの護衛は何人か交代で着いていますが、あの日は急にデルフィニウムになったのでした。


「護衛が一人だと情報を流したけれど、8人だって?なかなかの念の入れようだったのに、残念だったね?」


 全くもって残念では無いのですがね、成功していたらわたくし舌を噛み切っておりましたよ?

 わたくしのイラつきに気付いたのか、ノイエ様がわたくしを見て、小さく手でゴメン、と言ってきました。まぁ、信じてましたけれど!


「デルフィニウムが有象無象の8人に不覚を取るとは思ってなかったけれど、聖結界で冷静に防いだアナベルにもびっくりだった」


「スターチス嬢は隙を作らせず、自分が戦闘中、落ち着いて聖結界を発動。微力ながらも魔力を持っていた賊のうちの数人は結界にて弾かれました。混乱時、自ら身を守る事を既に想定している冷静な判断、感服しました」


「君のおかけでアナベルの評価はまた上がったよ。これも君の計算の内かい?」


 ノイエ様は『そんな訳無いだろうけどね』とせせら笑っていました。腹黒感が前面に出て来てますがいいのでしょうか。


「捕縛の際、彼等は全員口に仕込んでいた毒により死亡。毒は、聖女リリーナの靴に仕込まれた毒針と同じ成分だと調査結果が出ています」


「聖女と婚約者候補に同じ毒。勿論賊への指示のメモも控えてある。……そろそろ言い逃れ出来ないよ?」


 ルールカ様がついに青褪めましたが、


「でもまぁカルセオラリア嬢も、結局は件の隣国の掌の上で転がされているだけだけどね」


 というノイエ様の言葉に、瞬時に真っ赤になりました。






少しの時間、前の話と同じ箇所が表示されていました、申し訳ありません。

現在は修正しました!

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