悪役令嬢と卒業式9 ハーブティーの真実
「各婚約者候補の近くにハーブティー愛飲者……いえ、中毒者と言った方がいいでしょうか、その方たちが友人として近づいて……そういう計画だったのでしょうね。既に配下の者を近くに置けたスピカータ嬢はさておき、スターチス嬢は学院内でそもそも派閥を作らず近寄るのは困難でした。
モントブレチア嬢は、近寄り易かったでしょう?むしろ不自然だと警戒なさいましたね。……正解でした。この件に関して、モントブレチア嬢はいち早く気付いた功労者です。密かに調査が始まりました。詳しくは後ほど」
わたくしにあのハーブティーを勧めてきたのは半年ほど前でしたが、……そんなに前から密かに根付かせていたのね。うーむ、派閥を作らないと情報源が少なくなるのは難点だわ。
今までは断罪希望だったから切り捨てておけばいいかと思っていましたが、これからは違う。覚悟を決めたのだから、そういう事にも目を配らないといけないのよね……出来るかしら。
「ソリダゴ男爵とゴールデンロッド子爵の御令嬢と言い張る方々が流行らせたものと、私がサロンや相談時に出すハーブティーが同じ物とは限らないだろう?何の証拠があって私を拘束するんだい!?」
ワトソニア先生が反論をしていますが、『証拠はあるのか?』と聞いてくる人物は物語では大体クロなんですよ。
「モントブレチア嬢がいち早く気付いた、と言ったでしょう?彼女から件の令嬢経由のハーブティーを、そして……」
カンパニュラがチラリとノイエ様を見て、頷いたノイエ様がネメシアを見ました。頷き返すネメシアは、すっかりノイエ様の側近でした。
「ネメシア魔術協会からの知見を」
「オレの協力者たちから、複数証拠の品を回収している。勿論、魔術協会でも成分分析をしていてね。育成段階でかけただろう植物魔術の形跡が同じ型だった。苦労したんだよ、魔術の型の分類。
でも、この分類が可能になった事で魔術協会内では飛躍的に」
「その話は別件だ。話を戻すように」
ネメシアの発言は準公式の場に相応しい口調ではありませんでしたが、それについては特にお咎めはないようです。
それにしても、ノイエ様とネメシア、短い期間で随分と砕けた仲になりましたね。意外と楽しそうな様子のネメシアにも安心しました。
「失礼しました。このハーブティーで使用されているハーブのうち幾つかは、この国での一般ルート流通は行われていない。栽培がとても難しくてね。
けれど条件が揃う数少ない領地がある。ワトソニア先生のご実家、ワトソニア伯爵領だ」
「そ、それだけで私が?他にも栽培可能な領地はあるだろうし、たまたま同じハーブティーを振る舞ってしまった可能性も……」
「ありません。既に調査済みだし、条件の揃う他領地に植物魔術を使う者は居なかった。あと栽培が一番難しいとされるハーブ……、先生のタウンハウスで栽培してますよね?ああ、反論は要らないです。ハーブそのものを生で、先生主催のお茶会で頂戴したので。そのハーブからも植物魔術の形跡が有り、勿論同じ型でした!まぁ、あのハーブはこの国では植物魔術でも使わない限り難しいですからね、仕方ないですよ先生。
言い逃れしたいのならば、この場で魔術の型の分類をしてみますか?」
ぐっと黙り下唇を噛み締めるワトソニア先生が見えました。
「このハーブティーに入っているハーブ、それぞれ単品なら良かったんだけどね。ワトソニア先生お手製の3種を混ぜちゃうと……気分が妙に晴れやかになってスッキリするしまた飲みたくなる……つまり、中毒性がある。
学院内でもプレミアム付きで出回っていたけれど、購入していた人は既に中毒者だろうから、この式の後直ぐに魔術協会に相談してね♪どのくらい出回っていたのか……こんな成分も不確かなモノに手を出してしまうのは誰なのかも特定したいから、必ずだよ。
お抱えの魔術師やお医者さんにお願いするのもナシね。既にこの件に関して通達してあるから」
常飲していた方々から悲鳴が上がりました。ご家族席でも顔色の悪い方がいますね。結構な数になりそうです。
「さて、ハーブ3種は何故混ぜてはいけなかったのか……というと、中毒だけで無く、成分が蓄積されると子供が流れやすくなる事が分かっているからだ。男の場合、ナニが勃ち辛くなるそうって言えば直ぐに飲むのを止めるかな?蓄積された成分を排出しやすくなるハーブもワトソニア先生は入手ルートを持ってらっしゃったから、明らかに確信犯だね♬」
青くなる女子学生に対して、真っ赤になって怒りを表す男子学生とそのお父様であろう男陣。出所分からないモノにホイホイ乗るからこうなるのです。
「ハーブティーで学生の内に中毒にして、初めは安価で手を出し易く、その内値段を高騰させて……という手法だろうけど、あれれ?さっき聞いたような手法だね。
あ、ちなみに成分を排出しやすくなるハーブはこの国にほとんど無くてね。ワトソニア先生の入手ルートの物も、今、押収が完了したそうだよ。……という事だから、ハーブティー愛飲者はちゃんと名乗り出ないと、イロイロ保障しかねるよ?」
成分を排出しやすくなるハーブの入手ルートは隣国で、偽りの令嬢方の出身国でした。
「成分排出用のハーブが特産で?偽りの令嬢方の出身国で?繋がって来たね。まだまだ続くよ、ちゃんと調べたんだ」
にっこり笑うノイエ様の視線はルールカ様へ。これだけ切り取ると仲睦まじい風景だろうに、現在の状況が不穏過ぎました。
「まさか、そんな恐ろしい事態が起こっていたなんて……。お父様は何故ソリダゴ男爵とゴールデンロッド子爵に商談相手を紹介したのでしょう?お父様も何か事件に巻き込まれて?恐ろしい……」
ルールカ様はまだ逃げ回る様子でした。
「まぁ、聞いていてよ、最後までね」
ノイエ様はまだまだカードがあるそうです。開いてないカードは何枚あるのかしら。
ハーブの話を一括にするか迷ったんですが、一旦区切りました。細切れですみません…
毎日じゃなくても一括の方が読みやすい!というご意見ありましたら、感想にてご連絡いただけると助かります。
現在当日作成な為進みが悪くて、話数ばかり多くなって申し訳ないです…




