表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪予定の悪役令嬢の行く末  作者: みずのとさやか
断罪予定の悪役令嬢
74/92

悪役令嬢と卒業式8 偽りの令嬢方

カンパニュラによる説明回です

「さて、件の実行役、ソリダゴ男爵とゴールデンロッド子爵の偽りの御令嬢方は、先程他国民という事が明らかになった訳だが、その経緯について話そうか。カンパニュラ」


 チラリとカンパニュラに目配せすると、彼は準備した資料を取り出す。


「ソリダゴ男爵及びゴールデンロッド子爵は、元々隣国との貿易を行っておりました。この隣国というのが……お察しかと思いますが、偽りの御令嬢方の出身国です。


 始めは安価で取引されていた隣国特産の食材で、男爵子爵共に益を上げていました。けれど、需要が十分に高まった頃から特産の食材は高騰し始めました。

 値段の上がった食材にも関わらず、需要は高いところに目をつけた彼等は、どうにか独占販売が出来ないものかと考えました。彼等は貿易上のライバルだったのです。

 食材を狙うライバルがいるとわかり、彼等はより優位な条件を付けるからと他国に商談を持ち掛けました。

 ですが相手は一枚上手で、商談の度に『あちらは◯◯を付けると言ってくれた』など、相手の手の内を態と見せつけ商品価値を高めていったのです。煽るのもお上手だったのでしょうね、子爵も男爵も、良い様に掌で転がされていました。

 

 それぞれが契約を結び、さあこれから……という時に、特産食材の良からぬ噂が流れ始めました。あんなに人気だったのは、中毒を引き起こすからだ、と。

 契約で前金を相当額支払っているソリダゴ男爵とゴールデンロッド子爵は、商品価値を高める事で収益を回収する予定だったのでしょう。あっという間に契約は負債となりました。


 それを不憫に思った商談相手は、いい儲け話があると遊戯場を紹介しました。『あそこのディーラーには金を握らせてあるから、楽に儲ける事が出来るぞ、負債なんて直ぐに取り返せるぞ』と。

 負債が大きかった男爵は直ぐにこの話に乗りました。初めは恐る恐る小金を掛けていましたが、みるみるうちに負債が回収出来るのではと期待してしまう額が稼げる事に気を良くして、どんどん注ぎ込んでいきました。

 その様を見た子爵もまた、同様にのめり込んだのは言うまでもありません。

 彼等があと少しで負債が回収出来る額になる時、ディーラーが間違えたそうです。勝たせて貰える筈だった勝負は負け、またもや負債を負いました。

 以降は、五度に一度負けるようになり、四度に一度になり……そして負債額が途方もない額になった頃には、一度も勝てなくなっていました。


 遊戯場から返済を求められた時に取りなしてくれたのは隣国の商談相手でした。『このままでは可哀想だ、こちらの条件を呑んでくれるなら、返済額を半分にするよう働きかけよう』と。


 その条件というのが、今回の御令嬢の成り代わりです」


 淀みないカンパニュラの言で、何故ソリダゴ男爵とゴールデンロッド子爵が偽りの令嬢方を入学させたのかは分かりました。

 ですが、それがどうルールカ様に繋がるのか……これについてわたくしは調べる事が出来ませんでした。


「ソリダゴ男爵とゴールデンロッド子爵に、さり気なく商談相手を紹介したのはカルセオラリア伯爵だそうですね」


 カンパニュラの発言に、ベロニカ様がルールカ様を見ました。やっと、彼女たちがルールカ様の仕込みだと気付いた様子でした。


「彼女たちの入学前からこの計画は始まっていました。替え玉だと気付かせない為ですから、仕方ないとは言え長い間ご苦労な事です。

 カルセオラリア伯が何故彼等に隣国の商談を持ち掛けたのかと言えば……殿下と同じ歳の子がいて、経営が余り上手くいっておらず、この手の話に乗りやすい、子供が女子で貴族との付き合いが薄く顔を知られていないなら尚良い、そんな条件に当てはまったからです。

 簡単に言えば、ソリダゴ男爵とゴールデンロッド子爵はカルセオラリア伯爵に嵌められたんですよ」


 先程捕らえられた男爵子爵たちは、カンパニュラの言葉にショックを受けている様でした。

 恐らく伯爵は、不憫に思っているなどと甘言を囁いて彼等に近づいたのでしょう。最初から、彼等を策に嵌める為に。


「学院内で、手足となって動く実行役が必要だったんでしょう。殿下の婚約者候補の方々、私たち側近候補の周りにも、彼女たちが接触した形跡がありました。

 それと同時に、彼女たちは学院内に密かにあるものを流行らせて行きました」


 取り出したのは乾燥させた葉のようなもの……あのハーブティーでしょう。


「表向きはスピカータ嬢のご友人として振る舞いながら、カルセオラリア伯の子飼いとして活動する彼女たちは、おすすめのお茶があると言って少しずつ流行らせていきました。

 けれど、その広がりに限界が来ました。スピカータ侯爵派閥に属する下位貴族には難なく受け入れられましたが、高位貴族は少しだけ手製のハーブティーを不安に思ったのです。

 だから、説得力のある方からおすすめしてもらう事にしました」


 ベロニカ様に視線が集まりました。派閥のトップがおすすめすれば、所属する方々も否とは言えないからです。


「いえ、おすすめしたのはスピカータ嬢ではありません。おすすめしたのは……」


 会場内に大きな音が響きました。

 教授、講師席にいるワトソニア先生が取り押さえられた音です。


「な!何をするんだ君たち!」


 ワトソニア先生が抵抗しているようでした。


「おすすめしたのは、ハーブの出元であるワトソニア先生でした」


 掛け合わせて作られる成分を打ち消す為のハーブの生産国と、成り代わった偽りの令嬢方の出身は、同じ国でした。


 ルールカ様とワトソニア先生は、裏で繋がっている証拠でした。








誤字脱字報告ありがとうございます!

本当に助かります〜

まだまだありそうなので、見つけましたらまたお知らせいただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ