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断罪予定の悪役令嬢の行く末  作者: みずのとさやか
断罪予定の悪役令嬢
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悪役令嬢の長期休暇は何故か王子が一緒

悪役令嬢に平穏な長期休暇は訪れるのか

 長期休暇イベントは悪役令嬢Aの出番無しなので、公爵領に戻ってゆっくり!伸び伸び過ごす予定です。

 ヒロインちゃんの攻略状況が分からないのは痛いけど、顔突っ込んでゲームと違う流れになんかなったりしたら……!

 ただでさえヒロインが第一王子殿下ルートかハーレムルートじゃなければ王子妃からの王妃コースに乗ってしまうヤバい状況なのだ、ここは大人しくざまあされる可能性を信じたい。


 テスト期間を見る限り、半分の攻略対象者とは好感度を高い値で保てている様子です。

 残り半分の好感度がどのくらいなのか不安があるけれど、ここはリリーナ・クレマチス男爵令嬢ちゃんのヒロイン力を信じるしかありません。

 長期休暇イベント、ちゃんと起こしててね……!


 ……なんて、暢気に考えていた時期もありました。公爵領に戻ってのんびりしていた1週間を、今切実に堪能しておけば良かったと思っております。


 領に戻って5日、その手紙は届いた。差出人はまさかのヒロインちゃん。「聞きたい事があるからお邪魔したい(要約)」という事らしい。


 マジか、悪役令嬢休みなし?ここはヒロインちゃんのターンでしょ?


 ちなみに、断る事も出来る。彼女は聖女覚醒したとは言え、まだ正式な聖女認定を受けていない(時間の問題だけど)ので、男爵令嬢のお願いを公爵令嬢のわたくしが聞き入れる必要は無い。

 ヒロインちゃんと仲良くする理由がマジでないからね!


 わたくしが今考えているのは、ヒロインちゃんのお願いを冷たく無視するのと、受け入れた上で嫌がらせでは、どちらが断罪に繋がるか……という事です。


 ゲーム的な事を思えば無視するのが一番です。だって長期休暇イベントに悪役令嬢Aの出番はありません。……が、微妙に異なるゲーム展開も気になってはいます。

 悪役令嬢逆転テンプレ展開ならば後者を選ぶのでしょうが、……わたくしは本気で第一王子殿下の婚約者候補から外れたい。

 そんな訳で……!申し訳ないけれど、ヒロインちゃんからのお手紙、スルーする事にしました⭐︎ゴメンね!

 休暇明け、嫌味ったらしく「親しい間柄でもないのに不躾なお手紙を頂戴しましたわ」って晒して、王子殿下の好感度上げるアシストするから許してくださいませ。


 などと思ったのが悪かったのか……ヒロインちゃんの手紙から2日後、第一王子殿下からお手紙が届いてしまいました。「良い機会なので婚約者候補と親交を深めようと思ってるから遊びに行くね(要約)」だそうです。

 なお、他の婚約者候補の領地へも視察がてら回るそうで。婚約者候補筆頭なのでお前から行くぜ〜的な。


 ……わたくしの事は飛ばしてくれて良いよ殿下!無駄に律儀だな!


 このままだとヒロインちゃんに(主に王子殿下との)乙女ゲーム的イベントが発生しない長期休暇になりそうなので、仕方なく両者の来訪をぶつける事にしました。

 手助け出来るのはここまでですわよヒロインちゃん!あとはご自分で攻略対象(具体的に言うと王子殿下!)を落とすのです!


 ……ところで何を確かめにいらっしゃるのかしら?

 握り拳を作りつつ首を傾げるのでありました。


 公爵領に戻って10日。報せが届いてから3日後には、ノイエ王子殿下がやって来た。

 ……早過ぎないか?手紙出した頃にはもう出立してた?

 公爵領では手紙が届いてから、てんやわんやで準備を進めていたのですが……ギリギリ間に合った?という状況でした。


 前世の社会経験から言うとね、個人宅にお邪魔する場合は約束の時間から5分から10分後が理想とされているのです!最後の仕上げをする時間ってやつですね。


 同様に現世では、やんごとない身分の方はゆっくりいらっしゃるのが定石だと思うのですがいかがお考えか、と首根っこガクガクさせて問い詰めたい。


 王子殿下の馬車が通る街道は領内全て花で飾らせた。勿論領民にも協力してもらったのです。花が足らないエリアでは、出来るだけ鮮やかな野花を子供たちも含めて摘んで頑張ってくれたそう。我が領民が素敵過ぎる。

 とりあえず言える事は、領内の皆様お疲れ様でございます、ありがとう、殿下が帰り次第領民へも労りを贈りたい……。


 これはほんの一端で、大小様々なところで領地内皆様頑張りましたので……、殿下がいらっしゃった時は、わたくしもヘトヘトでした。


「こんな素のアナベルが見られるなら、無理した甲斐もあったな」


 そう笑ったノイエ殿下の顔を見た時、殺意が湧いたのを誰が責められると言うのかしら。

 つまりアレですか、「せっかく来てやったのにこれっぽっちの歓迎でバタつくのが公爵令嬢(笑)の実力ですよね(暗喩)」って事ですか。


 正直イラついたのですが、よくよく考えると実力足りないんで婚約者候補辞退します⭐︎がやり易そうなので、大海の気持ちでスルーすることにした。

 これで終わりに出来るならその程度の誹り甘んじて受け入れよう。領民分はわたくしが労うので許してくださいませ皆様。


「至らぬ点はご容赦くださいませ。お早いご到着に、わたくしの采配が行き届かず……」


「アナベルが用意してくれたのか。道理で素敵だ」


 素直に不手際を詫びれば、苦笑しながら手にした花をわたくしの右耳の上辺りに差し込まれた。


 野花。街道色々な花を飾ったのだけれど、チョイスは野花。

 手にしていた野花は複数種あれど、その中からチョイスしたのは薊。

 ……これは、深読みせよって事かしら?


 薊の花言葉は権威、厳格、独立、変わったところだと批評家……だったかと思います。

 トゲトゲした外見からも、あまり良いイメージは無さそう。つまり、ノイエ殿下からのわたくしの評価は中々に低い……狙い通りなんだけど、なんだか釈然としませんね。


「君みたいだと思って」


 意地悪く笑う殿下にもやもやしたけれど、その後は恙無く出迎える事が出来た。




 晩餐の際、ノイエ殿下に今後の予定や婚約者候補行脚について伺ったところ、


「ああ、君の時と同様、事前連絡はギリギリにする。悪いけど、それまでお邪魔する予定だけど……良いよね?」


 NOと言えない臣下な事を分かっていて問うの、どうかと思います。


「先方に伺うのが連絡ギリギリと言うのは理解しました。……で?殿下はいつまでの滞在予定ですの?予定は決まっておりますよね?」


 結構な物言いだけれど、こちらは処分されない程度には好感度を下げたいので気にしない。


「うん?なんだ、私が他に行くのが寂しいのかい?」


 薊の時と同じ様な意地の悪い笑顔にイラつきますが、ここは耐えたい。……ん?むしろここで縋る感じの方が良いのか?鬱陶しい感じに。

 そろそろ何が正解なのか、わからなくなってきました。


「そう言う、事ではなく……」


 そんな迷いが言葉にも滲んでしまい、婚約者(候補)の言葉に恥じらう乙女みたいな受け応えになってしまい、わたくしの侍女や殿下の侍従がピクりと反応していました。

 ……ごめんね、思ってるのとわたくしの脳内はかけ離れていると思いますわ。


「……んん!うん、滞在予定を確認したい気持ちも分かるんだけど、ごめんね、こちらの動きなんかで、他の候補者に悟られたくないんだ。……だから、表向きは……私が満足するまで、という事で」


 ごほん!と小さく殿下の侍従が咳払いする。そうよね、言葉を額面通りに受け取るなよ!って事よね。大丈夫です侍従さん、勘違いなんてしないよ!と、心の中で親指を立てた。


「わかりました。心ゆくまで我が領を堪能くださいませ。……出来る限りの事をいたしましょう」


 わたくしには限界がありますよ、と言葉に匂わせこの会話を終える。

 殿下大丈夫です、殿下が飽きる前にスペシャルゲストを呼んでますから!


 領地の繁華街を案内したり、緑溢れる名所で避暑を楽しんで2日、ノイエ殿下が事ある毎に近寄っていらっしゃる。

 いいんですよ?わたくし婚約者になりたいと思ってませんので、そんな社交辞令みたいに頑張らずとも、と微笑ましくみつつサラリと避ける。

 前世のセクハラ接待を掻い潜ったわたくしにとって、高貴な方のなさり様は、権力を振りかざされない限り楽勝で避けられるのですわ!


 その度にわたくしの侍女が頭を抱えたそうな顔をして、殿下の侍従は笑を堪えていらっしゃる。どちらも素晴らしいスキルをお持ちなので、表面的には表情動いていませんけど、わたくしには分かります!

 わたくしの侍女は右手の薬指がぴくりと動き、殿下の侍従さんは左の踵を2度踏み締めるのです。面白い発見ですね。

 因みにこのわたくしの態度、夜のお世話の際などに侍女から叱られてしまいますので、今夜もお小言だなと覚悟しました。


 さておき!そんな殿下との日々も3日目(到着してからは4日目ですね)、ヒロインことリリーナ・クレマチス男爵令嬢がいらっしゃった。

 お待ちしておりました!張り切ってイベント起こしていこー!


 朝食は一緒に、との事で殿下と摂る中、


「本日クレマチス男爵令嬢がいらっしゃいますわ」


 と告げた時のノイエ殿下は大層面白い顔をなされていた。

 ごめんな、仕事的に婚約者候補との触れ合いをしなければならない立場を好きな子に見せなきゃいけないなんて、苦痛だよね。


「君と彼女は、……そんなに仲が良かっただろうか?」


 ええ、わたくしもその疑問がございますわ。


「いいえ。クレマチス男爵令嬢から、お手紙を頂いて」


 詳細はよくわからないので濁す事にしました。こういう時貴族って便利です。察しろよ!みたいな。

 ……まあ、その察しろが悪手になる事も多々ありますが。


 ところで、「彼女」ですか。

 額面通りに受け取るなら正しく代名詞。でもね、前世の記憶があるわたくしには違う意味合いもあるんですよね……。


 謎のモヤっと感を押しやって笑顔で答えた。


「……せっかく距離を詰めようと思っていたのに、残念だね」


 先程の面白い顔から一転、いつものキラキラ感ある笑顔を見せるノイエ殿下。

 ハイハイ、社交辞令ありがとうございますー。


「聖女の結界を作り出すクレマチス男爵令嬢とのお話し、楽しみですわね」


 攻略対象はちゃんと仕事してヒロインちゃんと仲良くなってくれたまえ!





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