悪役令嬢の日常が崩れる時
登場人物振り返り回な感が強くて短めです
ご機嫌よう皆様、いかがお過ごしかしら?わたくしは、武術大会というビッグイベントの後の日常パートとも言える学院生活を謳歌しております。
ゲームでは、この日常パートで各攻略対象の過去話イベントなどをこなすんですが……、現実のヒロインちゃんと攻略対象を整理してみましょう。
ヒロインちゃんことリリーナは、聖女認定が下りて来月聖女となるそうです、おめでとう!卒業後は何故かわたくしの侍女になるそうで、後ろ盾としてスターチス公爵家が控えることに。色んな派閥からの横槍や好き勝手にやろうとする輩はぶっ潰せる体制を整えた才女です。ムスカリとはナチュラルにいちゃつく仲ですが、まだ付き合っている訳ではないそうです。ファーストネームを敬称なしで呼び合う仲だから、秒読みでしょう。
大商家の息子ムスカリ。読めない性格……と思っていましたが、サラッとリリーナとの仲を深め秒読みまで詰めました。将棋とか強そうね。ノイエ様から信頼も厚い側近予定。腹黒なイメージがありましたが、いい奴でした。これからも宜しくお願いします。
ノイエ様。何故かこの頃接触が多くて、卒業式断罪が起こらない率が跳ね上がっている気配を感じます。嫌われていない……いえ、興味を持たれている感すらありますが、なんとか断罪を起こして貰わないと、王妃街道まっしぐらなので困ります。そんな覚悟まだ出来て居ません。思いの外子どもっぽいところがあって、意地悪でやな奴で、わたくしを振り回してくる癖にわたくし以外にはキラキラの笑顔を振り撒いてイライラさせる腹黒王子です。
宰相子息カンパニュラ。ノイエ様の側近予定の中でも一番信じられる気がします。わたくしに良い印象は無かった様子なのに、何やら方針を変えたようです。いい奴以外の言葉では言い表せない、ちょっぴり単純……素直な男子です。あと惚れっぽい気がします、君に幸あれ。
護衛騎士兼側近デルフィニウム。無口で無骨なイメージですが、よく笑いを噛み殺しているところを見ると、恐らくかなりのイイ性格でしょう。恋愛フラグについては皆無過ぎます。
魔術師団長子息ネメシア。何故かこの頃わたくしに絡んでくる、厄介極まり無いチャラ男。何やら薄暗い雰囲気があって、深く突っ込んではいけないと本能が言っています。
隣国の第二王子ユーフォルビア様。聖女要らなくね?と思いつつ、お国の事情でリリーナに近づくものの、リリーナと結託している様子。恋愛?美味しいの?な脳筋。
3つ下のショタ枠イフェイオン。学院生活でわたくしは見掛けない存在。まぁ学年が違えばこうなるわよね。ヤンデレっぽいから、リリーナには気を付けて欲しい。
大人枠、ワトソニア先生。一周回ってカッコいい?のか?とりあえずわたくしには理解し辛い大人()な魅力の先生。ウザ……いや、多分大人の魅力なのかしら。
整理してみて改めて思うけれど、リリーナはもうムスカリと成立しているわよね。つまり?ノイエ様ルートかハーレムルート以外では断罪されない悪役令嬢のわたくしは、婚約者候補が婚約者になって王太子妃になって王妃……?
何度も言いますが、そんな覚悟まだ出来て居ませんが?
しかしここは現実。ゲームとは違うのよ!例え8割方婚約者になりそうな気配だったとしても、諦めんな!まだやれる!
わたくし以外の婚約者候補はリリーナ含めて4人。リリーナは無理として、まだ4人もいるのよ!
中でもベロニカ・スピカータ様。彼女のアピールが物凄い。恐らく、ノイエ様に恋してらっしゃるんでしょうね。是非ノイエ様のお心を射止めて頂きたいところです。
ただその場合、ノイエ様が色恋で婚約者を決定する気は無さそうなのが困りどころですね。その考えを覆すくらいメロメロにして頂かないと。
決意も新たにランチメンバーを見回すと、それぞれ微妙な顔をなさっていました。
「アナベルのそれは、恐らく悪あがきというやつなんだろうね」
ノイエ様がしみじみ言います。
「そこがアナベル様の可愛らしいところでもあります」
リリーナ、どういう事?
「僕は無自覚説に明日のランチを賭ける」
真面目な顔で何言ってるのムスカリ。
「明日で判明するのか?賭けるなら来月のランチくらいじゃないか?」
カンパニュラ、それは否定していないわよね?
「では自分は、自覚ある自分を見なかった事にしている説を」
デルフィニウム、たまにしか発言しないのに、抉ってくるわよね。
軽く怒ったフリをして、あははと笑い合う。心底楽しいランチタイムです。
立場とか今後とか考えなくていいなら、大好きな時間。時には軽口を叩く気心知れた仲なわたくしたち。このぬるま湯みたいな関係がいつまでも続けばいいのに。
断罪されたいって、本気で思っています。だって王妃になる覚悟はまだ無いもの。けれど、様々な角度から見て、わたくしが選ばれるだろうと思っています。
だってノイエ様の隣に、わたくし以外が立つイメージが無いのです。ノイエ様がわたくし以外の婚約者候補と親しくなさる姿を、お見かけしていなかったから。
ですから、ノイエ様が婚約者候補の一人モントブレチア伯爵家ユイリィ様と親しげにお話なさっているのを見て、わたくしは少なからずショックを受けたのでした。