表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪予定の悪役令嬢の行く末  作者: みずのとさやか
断罪予定の悪役令嬢
34/92

悪役令嬢と武術大会決勝2

 さて、武術大会も魔術部門を残すのみとなりました。


「リリーナはイフェイオン様を応援するのかしら?」


 頼まれてミサンガを贈る程度には仲が良いと思っていましたが、初日の一件から避けているようですしね。


「ネメシア様は私が応援するまでもなく凄いので、カトル君応援ですね。アナベル様もお困りのようですし」


 正直、イフェイオンが勝ってくれるとわたくしとしては楽です。けど、ムスカリはいいのかしら?


「僕ですか?本音を言えばネメシア侯爵子息を応援したいけど、建前でイフェイオンを応援しますよ?ってところですね!」


「私はイフェイオンを応援かな。自分に勝ったというのもあるが」


 ムスカリ、カンパニュラ……!ゲームのメインキャラ応援ブーストでイフェイオンが勝ってくれるのを切に願いながら魔術部門決勝は始まりました。


「魔術部門決勝戦、選手前へ」


 試合のコールが始まりました。


「カトル・イフェイオン!」


 まだあどけない少女のような細身で小柄なイフェイオンが両手を挙げて声援に応えています。

 ニコニコと花のような笑顔の下がヤンデレ風とは知りたく無い情報でしたね!こう見る限りとても可愛い後輩です。

 キョロキョロと見回し、リリーナを見つけたからか、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねていました。

 ……ヤンデレじゃ無ければ、素直に可愛い〜!って思えるんだけどな!知ってしまった後では、オタサーの姫どころでは無いあざとさを感じますわ。


 チラリとリリーナを見れば、穏やかな笑顔で手を振っていました。気分はお姉ちゃん……お母さん?恋愛フラグの欠片も見出せない表情でした。イフェイオンの今後が少し怖いですね!


「セブンスターク・ネメシア!」


 こちらのコールは相変わらず女子声援が物凄い。黄色い声援どころでは無い。皆様淑女でございますよね?ってくらいの掛け声がバンバン飛んでいますが……良いのでしょうか?お祭りだから、ノーカウントなの?

 毎度のことなのか、男子は無の表情で聞き流している様でした。


「真理と理に誠実なる戦いを!始め!」


 ネメシアは水属性が得意でしたが、イフェイオンは……何かしら?

 ゲームでのこの武術大会は、デルフィニウム、ユーフォルビア様、ネメシアが活躍するイベントだったのでイフェイオンについてはデータがありません。

 ゲームと現実は違うなぁと、しみじみ思いました。ゲームではヤンデレじゃ無かったしね!


 ネメシアが水を生成しイフェイオンへ向けて放ちました。水鉄砲を大砲にした感じ?恐らく様子見でしょう。


 対するイフェイオンは、土壁を作って応戦しています。反応速度も早く、魔術の展開が上手です。イフェイオン、やるな!


 ネメシアが楽しそうに笑いながら風魔術で空中に浮き上がりました。上から水を流し込むのかな?なんて思っていたら、試合場のラインが先程とは大きくズレていました。


「え?これは、どういう?」


 まるで地面が動いた様です。


「カトル君は土属性みたいで、見に行った試合でも使っていた魔術です。試合場の場外ラインを、表面の土ごと動かしています」


 気付かない内に場外アウトを狙っているのか!土壁で防御しているだけと思いきや、面白い戦法を考えますね。


「しかし、ネメシアは風魔術も併用出来るから場外失格は難しいか」


 ネメシアは何属性使えるのか定かではありませんが水と風は使える上、同時並行で魔術を使用出来るそうです。何それどういうチート。


 ネメシアが大量の水をイフェイオンの周りに生成しました。……え、それって、イフェイオン溺れちゃうんじゃ?

 水の柱はイフェイオンを閉じ込めており、イフェイオンも苦しそうにもがいています。


「中々エグいな、ネメシア。溺れさせて試合を終わらせるつもりか」


 魔術部門怖っ!一歩間違うと溺死では!?


 けれどイフェイオンも凄かったのです。

 すっと水柱からイフェイオンの姿が消えたかと思うと、柱の立っていない場所に地面から現れました。

 ???どういう事?


「土魔術で場所を移動した?のか?どういう展開のさせ方で行使出来る魔術なのか検討もつかないな」


 ノイエ様が思わず呟いてしまうほどでした。イフェイオンは天才なのかな?とりあえずスゲェ!頑張ってショタ!


 水を大分飲んだのか、それとも先程の魔術は余程魔力を使うのか、イフェイオンはかなり消耗していました。


 ネメシアはそれはそれは楽しそうな笑顔で、地面に戻って来ました。何をする気?


 イフェイオンがネメシアを睨みつけ、土魔術を展開させる前にイフェイオンの体が浮き上がりました。

 初めはイフェイオンも複数属性で自らの魔術かと思いましたが、ネメシアの魔術の様です。


 空中に浮いた状態から場外で魔術を解くという戦法をカンパニュラが取っていましたが、それでしょうか?


 イフェイオンの体は場外の宙空に追いやられていますが、イフェイオンも地面を動かす魔術も展開している様です。けれど先程の様な速さはありません。


 魔術を解いて試合終了かな?と思っていたら、ネメシアはイフェイオンに向かって水の大玉を放ち、その中に閉じ込めました。


 ……え?も、もう魔術解けば勝ち確定じゃないの?そこまでする?


 イフェイオンが苦しそうにしています。さっきの土魔術で移動出来る魔力はまだ残っているかしら?早く出られると良いのだけど……


 イフェイオンはもがくばかりで移動しません。魔力が足らない?本気で溺れそうなんですけど!


 ネメシアは楽しそうに、下からイフェイオンを暫く眺め、突然飽きた様に魔術を解きました。

 地面を動かす魔術は勿論使えておらず、イフェイオンは場外失格負けとなりました。


「勝者、セブンスターク・ネメシア!」


 高らかに宣言された勝者コールに会場は湧きましたが、ネメシアの魔術の恐ろしさに特に男子は声が出ませんでした。


 ネメシアは7人目のネメシア侯爵の子供です。3人のお兄様と3人お姉様がいらっしゃる筈ですが、現在ネメシア家の男子はセブンスターク・ネメシアしかいません。

 ネメシアの名は、7人目という意味と、完全にという意味の組み合わせだそうです。

 現ネメシア侯爵は魔術師団長ですが、黒い噂もある方です。禁呪を使用したのではないか、という内容だった筈。


 完全に、とはどういう意味なのか。禁呪の使用は本当なのか。

 声の出せない男子には、それらが頭に過ったのかもしれません。


 ちなみに乙女ゲームの中では、姉たちにチヤホヤされて出来上がったチャラ男という設定でした。細部までガッツリやり込んだ覚えが無いので、そんな重い設定だっけ?という気持ちでいっぱいです。

 あれ、もしかしてネメシアルートクリアしてないかも?ハーレムルートクリアで見かけただけで、あとは攻略サイトでチラ見だけだったかも。

 今更ながらきちんとクリアしていなかった前世の自分を悔やみます。


 イフェイオンは両手で体を支えていないと地面に伏してしまいそうな程消耗していました。可憐な姿ゆえ、物凄い悲壮感があります。


 ネメシアが左手を差し出しイフェイオンを引き上げましたが、その時に何事か囁いたのでしょう。

 ネメシアの手を払い、睨んでいました。


「イフェイオンの土移動は、土に接していないと使用出来ないのかもしれないな」


 ノイエ様が呟きました。それで宙空時は移動出来なかったのね。


「そしてネメシアはそれを試した」


「既にご存知だった訳ではなく?」


 ネメシアの対処が冷静だったので、既に知られた魔術なのかと思ってしまいましたが、そう言えばノイエ様が驚いていましたね。


「随分と楽しそうだっただろう、ネメシアは。それが突然飽きた様子だった。イフェイオンが考案した展開魔術について解析し終わったという事だろう」


 では、先程イフェイオンが睨んでいたのはその事関連ですか。ネメシア恐るべし……!


 ネメシアをノイエ様と見ていると、奴はこちらを見て楽しそうにしました。


 ぞわり。


 ネメシアからも、ノイエ様からも種類の違う冷気が届き、背中が冷たくなりました。


 なんで巻き込まれてしまったのか……、一昨日の自分の行動を恥じるつもりはありませんが、褒章授与だけは頑なに断るべきだったと、今更ながらに悔やむのでした。






ネメシアのフルネームはセブンスターク・ネメシアです。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ