悪役令嬢と準決勝の結果
今回は区切りの兼ね合いで短めです
「勝負あり!勝者……」
突然ですが準決勝が終わりました。決勝はランチ後です。
そんな訳で例の如くわたくしとリリーナの席の近くに、ノイエ様、デルフィニウム、カンパニュラ、ムスカリというランチメンバーでお食事中です。
「デルフィニウム様、決勝頑張ってくださいね」
ランチ後も試合のあるデルフィニウムは軽めの食事でした。
ノイエ様はと言うと……。
「矢張り力及ばなかったな。分かってはいたが悔しいものだな」
準決勝では剣を破壊されての敗北でした。
例年に比べると凄く頑張ってましたし、最終学年で最高成績なんだから良かったのでは?向上心凄いなあ。
「後先考えず全力で戦ったのだが、剣を往なすなんて夢のまた夢のような実力差だった」
完敗だったと分かっている様です。
準々決勝とは違い、相手の動きは油断も隙もありませんでしたし。
準々決勝のランタナ様は……何故開始早々にあんなに大きく振りかぶったのでしょう?初撃で倒す自信がお有りだったのかしら?
「でも、準決勝進出なんて立派な成績ですわ!ノイエ様のああ言う戦い方、わたくし初めて観ましたのでワクワクしてしまいましたし」
前世ではスポーツ観戦もゲーム観戦もする派だったので、楽しかったです。
普段のノイエ様の剣技は魅せる技。美しい所作が際立っていましたが、戦うための剣技は荒々しく激しく試合として興奮しました。
剣術はとても格好良く、憧れすら抱きます。それなのにわたくしの運動神経ときたら……。せっかく剣と魔術の世界観なのに、全く活かせていなくて残念ですわ。
ノイエ様は少しだけ気分が上向いたようですが、何かを思い出しもう一度力なく下を向きました。珍しい事もあるものです。
「負けてしまったものは仕方ありません。殿下は充分に大会を盛り上げてくださり、仕事をこなされましたよ。ですから決勝は、スターチス嬢の隣で自分の応援をお願いします」
デルフィニウム……何と言うか、普通に傷抉ってくるタイプなのね。慰めが一切無い。
「あ、殿下が負けたって事は、決勝会場に特別観覧席作るんですか?」
ムスカリ、もうちょっとオブラートに包んであげてね?
「魔術部門の決勝は、やっぱりカトル君とネメシア様でした」
リリーナは突然の報告どうしたの?
「私は……、決勝の席を取って来ましょうか?」
カンパニュラ、君は何故パシろうとしてるの?いい奴なの?
怒涛の流れで会話が進み、漸くノイエ様が顔を上げました。
「決勝は俺の為に勝てるよな、デルフィニウム。アナベルの隣で応援している。特別観覧席は作らない、他の婚約者候補も勢揃いではお前たちも面倒だろう?魔術部門は……新星に期待だな。席確保は全員でそろそろ行こうか?」
項垂れていたけれど、きちんと話は聞いていた様です。それぞれに返答するたび、声色が戻っていきました。
みんなどう対応するとノイエ様が立ち直るかご存知で、仲良しだなぁ、なんて笑ってしまいました。
「だからアナベル、俺を慰めるためにも隣の席に座ってね?」
ここで嫌とは言えません。相変わらず意地の悪い事で。
「仕方なくですよ?ノイエ様が負けてぴーぴー泣くから、仕方なく隣に座るだけなんですからね!」
ノイエ様が可笑しそうに笑いました。
婚約者候補とか、政略結婚とか、王族とか関係なければ、もっと素直に笑い合えたのに。
少し跳ねた鼓動を他所に、そんな事を考えたのでした。




