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断罪予定の悪役令嬢の行く末  作者: みずのとさやか
断罪予定の悪役令嬢
20/92

悪役令嬢と眼鏡を応援しよう

 本日も晴天なり、武術大会2日目です。今日は3回戦から5回戦まで行いますので、試合間隔が昨日よりもタイトです。


「いや〜、昨日はやっぱり負けちゃったよ。なんで今日の応援はお二人と一緒に僕も混ぜて欲しいんですけど、いいかな?」


 そんな訳で本日の応援はムスカリ、リリーナと一緒です。わーい、楽しそう!


「何か指示がありました?」


「んー、昨日ちょっとあったみたいだし?でも、一緒に回りたいな〜って言うのは僕の本音」


 リリーナとムスカリは何やら相談しています。おやおや、なんとも親密な!何にも考えなくて良いなら、ムスカリ×リリーナはホント推せる!いい子たちだもの。可愛いし。誰かさんたちとは違ってね!


「リリーナ、今日はどの部門を応援する?」


 例によって例の如くな質問を投げ掛けます。


「え?私ですか?いえ、今日はアナベル様のご意向に沿いたいと思います!」


 まさかの選択拒否でした。


「やっぱり剣術部門ですか?」


 ムスカリが聞いてきます。この質問、ノイエ様だったら絶対意地悪な顔で聞いてきそうですが、ムスカリは他意なく聞いてくれるので答えやすい。

 ノイエ様もこんな風に、普通に聞いてくれれば良いのに。


「アナベル様、何やら可愛い顔をしておいでですね。では剣術部門会場に」

「魔術部門!魔術部門でカンパニュラ様の応援がしたいと思います!」


 被せ気味に提案しました。剣術部門会場に行ったら、その後移動出来ない予感がするので。


「え、宜しいんですか?魔術部門で」


「ええ、魔術部門にしましょう」


 笑顔で答えると、リリーナもムスカリも変な顔をしました。

 ……何でかしら?


「うーん、スターチス嬢は本当にご自分の事は抜けてるようだね」


「そこが可愛らしさでもありますけれど、ちょっと無防備ですよね。同情します」


 残念な子を見る顔でわたくしを見つめる二人。しかも明らかにディスりましたよね、今。


 なんてやり取りがあっての魔術部門会場です。


 試合場に到着すると、選手の下見をしているのかカンパニュラが観覧席にいました。


「カンパニュラ様!」


 思わずカンパニュラに駆け寄ってしまいました。


「カンパニュラ様、本日は……いえ、明日も含めて、頑張ってくださいませ!出来ましたら優勝なさってくださいね!わたくし力の限り応援致します!」


 ホント、ネメシアぶっ倒して欲しいです。カンパニュラにはちょっと荷が重いかもしれませんが、成せばなる!宜しくお願いします、本当に。


 必死に懇願するも、カンパニュラはそっとわたくしから目を逸らします。

 そうよね、悪役令嬢に応援されても困るわよね、リリーナに代役お願いすれば良かったわ。


「え、と、が、頑張ります、ので、少し離れていただけると」


 カンパニュラが申し訳無さそうに距離を取りつつ言いました。


「ジェリド、他意は無いのよ」

「免疫無いとドキッとするよね、でも殿下の事思い出してね」


 リリーナとムスカリが何やらフォローしてくれました。なんだか分からないけど、ありがとう二人とも!


「ところで、お二人はムスカリとずっと一緒に?」


 カンパニュラが聞いてきました。


「うん、今日の僕は応援兼護衛役。お目付役とも言うけどね!」


 惜しいムスカリ、一言多いわ。でも、なんだか憎めないのよね、ムスカリは。


「なんだか、役得じゃないか?負けたのに」


 カンパニュラがいじけております。そうだよね、リリーナとずっと一緒なんてズルいよね。


「カンパニュラ様、ムスカリ様はわたくしのお守り兼ですので、あまり役得でも無いと思いますわ」


 自分で言うとちょっと切ないものがあるけど、カンパニュラはわたくしのことよく思っていないから、同じことになったら嫌だと思います。


「い、いえ、そんなことは」


 リリーナのプラスがわたくしのマイナスを上回る、と言うことね。流石、既に落ちているカンパニュラは違うわね!


「うーん、面倒そうだから、女子二人連れが羨ましいって解釈でいいよね、ジェリド君」


「!あ、ああ、そう言う訳ですスターチス嬢」


 よく分からないけれど話がまとまったようです。


「今日もポンコツで可愛いです、アナベル様。他では素晴らしいのになぁ」


 リリーナがボソリと呟いていましたが、内容は聞き取れませんでした。



 カンパニュラは風属性魔術が得意なのだそうです。リリーナの見立てではこの3回戦あたりで……との事でしたが、いかがでしょうか。


「ジェリド落ち着いて!いつも通りね!」


 試合開始早々に声援を送るリリーナ。確かにちょっと浮き足立ってましたしね。よく見てるなあ。


「ジェリド君、親しく無い女子に何言われても平気だけど、親しい女子に応援されたりすると照れるからなあ」


 カンパニュラの真面目で鉄面皮な印象はそのせいでしたか。確かにね、知らない人からきゃーきゃー言われても、ちょっと他人事なところあるわよね。親しい、しかもこんなに可憐な美少女リリーナから応援されたら照れちゃうよね。カンパニュラはシャイボーイ、覚えておきましょう。


「あ、なんかアナベル様がジェリドに対して微妙な評価をしていそう。本人ショックを受けると思うんで、ジェリドには言わないでくださいね」


 そうよね、あんなにクール眼鏡男子がシャイボーイなんて、誰も思わないものね。わたくしの心に書き留めるだけにしましょう。


 なんてやり取りをしていたら、カンパニュラが風魔術で相手を浮かせていました。見せ場無さそうとか思っていて本当にごめんなさい。


 対戦相手は水魔術使いなようで、浮かされた中空から水の生成をしています。昨日ネメシアがやったように大量の水で押し流す戦法でしょう。


「あ、あれだと魔術の展開が間に合わないだろうな」


 ムスカリが解説してくれました。大量の水生成には魔術の展開式が複雑になるのと同時に魔力のコントロールも難しくなり、時間もかかるそうです。更に今は中空という状況で焦りも有り、落ち着いて魔術展開が出来ていないそう。

 浮かされた状態から、ジリジリと押し出されていました。


「ネメシア様が昨日、試合場から水を集めて霧散させたり、風魔術で一足飛びみたいに飛んで来ましたけど……」


「ネメシア様か。彼は魔術の展開も速ければ魔力量も凄まじいからね。僕も見てみたかったなあ」


 カンパニュラが頑張っているけれど、ネメシアが段違いなのは今の説明で分かりました。


「あともう少しだよ、ジェリド!」


 あと少しで場外に押し出せるところまできましたが、リリーナの声援に少し動揺したようで動きが止まりました。シャイボーイ、照れ過ぎ!


「カンパニュラ様、落ち着いて!」

「魔力コントロール、ジェリド君」


 持ち直して対戦相手を場外に押し出し、カンパニュラの勝利となりました。

 うーむ、美少女の声援が力にならない事もあるのね。でも応援して貰えないのも切ないだろうし、男心とは複雑ですね。


「スターチス嬢、そう思うなら次は剣術部門の応援に行こうね」


 ムスカリが提案して来ました。

 まあね、親しくしてるのに応援無しは寂しいもんね。


「そうですね、そうします」


 素直に頷きました。


「ムスカリ様、誘導上手ですね」


「伊達に商人やってないよ!」


 君たちはナイスコンビだね。



 試合が終わりカンパニュラと合流しましたが、カンパニュラは少し浮かない顔をしていました。


「不甲斐ない試合をお見せしまして」


 それでしょんぼりしてたのですか、可愛いトコあるなあ。


「そんな事無いよ!一生懸命で、応援し甲斐があったわ!」


 リリーナ、そのフォローはどうなの?まあ、アッサリ勝つより手に汗握ったのは確かだけれど。


「ええ、最後魔力コントロールを持ち直したところなんて、素晴らしかったです」


 わたくしに褒められても微妙でしょうが、知り合いに言われる方が響く様なのでわたくしも感想を言いました。


「お二人とも、ありがとうございます」


 少し照れながら、嬉しそうにするカンパニュラ。可愛げがあっていい奴だわ、ホント。誰かさんとは大違い。


「次の試合まで時間あるよね。みんなで剣術部門の応援に行こう。ところで、ジェリド君の次の試合相手はどんな?」


 そんな話をしていたら、試合会場から歓声が聞こえました。おお!という声も聞こえるから、勝負もついたという事でしょうか?

 まだ先程のカンパニュラの試合が終わって時間も経っていないのに?


「次の相手は、彼のようだ」


 眼鏡の奥の目を細めて、勝者コールを受ける選手を見るカンパニュラ。

 その選手は随分小柄でした。


「スターチス嬢、優勝をお願いされましたが、やはり私には荷が重い様です。次の試合は彼、カトル・イフェイオン。イフェイオン辺境伯子息です」


 お名前付き。

 ……つまり、新キャラ登場ですね!





やっと7人目の攻略対象が出せました

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