第三話:王を継ぐ者
注)規約に沿うように改稿中
アースガルド王の怒号が今日も響く。
「一体どうするのだ! セシリアの式は挙げてしまったのだぞ! これでは分家筋から婿を取ることも出来ん!」
「陛下……どうか、どうか落ち着いて……」
「落ち着いていられるか! 王子の現状はまったく掴めておらぬ。捕虜になったとも、既に……斬首されたとも……」
「あぁ……」
王の怒りをカタリナ王妃が必死に宥めている。
王子が敵国に捕らえられてからはずっとこうだ。
「後継者ならセシリアが居ます、私たちにはセシリアが!」
「習わしから、女子は王位継承者には成れぬ。男子のみが王国の中央を、女子は北方などの辺境を継ぐのが古からの決まり。そなたも分かっておろう!」
「っ……」
「それもこれも……カタリナ! そなたが男子を産まぬからだ。セシリア以来、身ごもる兆しもないではないか」
こっそりと物陰から盗み聞くに、王の怒りは八つ当たりに見える。
長男の出産時に前妻を亡くしたのは同情の余地がある。だがカタリナ王妃が狙って男女を産み分けられるわけもない。むしろセシリアを立派に育てている。
(三人目が出来ないのはあんたが衰えたからじゃないのか)
と柱の陰から老いた王を睨む。いい女の扱いがなっていない老人め。
カタリナ王妃の健康状態に問題はない。
なら、問題があるのは老いた種の方だ。
そんな風に自分を顧みられないのか、アースガルド王はカタリナを突き放した。
「もうよい! 王家存続の非常事態だ。使えぬ畑ならば……新しいのを持ってくるしかない。早めに実家に戻る荷支度をしておくことだ、現王妃」
「陛下! どうか……! どうかそれだけは! 私はいつまでもあなたをお慕い――」
カタリナの縋った言葉を、王が最後まで聞くことは無かった。
ばたん、と眼前で閉ざされた扉。
カタリナが泣き崩れる。
「ふ、ふふふふ、マジかよ。マジかよあの爺さん」
いやいやいや~ラッキー。参ったなあ~。愛娘を頂いたのに追加で妻まで、すみませんね陛下。でわでわ遠慮なく。極上人妻チャンス頂きま~す☆
話術強化全開。
『王妃殿下』
「っ! あ、あ、コート殿、す、すみません……いまは、見ないで。放っておいて……」
『一体何が……いえ、今はとにかく落ち着かれる場所へ。ここは冷えますので、さぁ……』
「あ、あ、ありがとう……コート……。わたし、わたしこのままだと……」
ハイ楽勝~。
何か違和感を覚えることも無く、肩を震わせて涙を流し続ける王妃。
その腰を抱え、こっそりへそのあたりをくにくにと刺激する。無意識のうちに起こしておこう。
待ってろよ。男子が居ない悩み、今すぐここ使って俺が解決してやるからな~。
何事かと駆け寄ってくる娘セシリアに、夜伽の中止、それと湯あみと軽食の準備を命じて王妃カタリナの個室へ。