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降り積もらない雪
はらはらと落ちる雪をずっと見ていた。
いつから目に見え始めるのかは分からない。気が付いたら見えている。
いつから目に映らなくなるのかは分からない。気が付いたら視界の端から消えてゆく。
いつまでも変わらないその光景を見ていると、時の流れが切り取られたようにも感じた。
手を伸ばして雪を受け止める。すると、手の体温で雪はすぐに溶けてしまった。
手をすり抜けていった雪達も、アスファルトに着いた途端に溶けてしまう。
最期を迎える場所は違えど、どのような最期になったのかは変わらない。
私も今から違う道を目指したところで、どうせ同じ消え方をしてしまうのだろう。
降り積もることのない雪に自身を投影し、努力を諦める言い訳を探した。