寒夜、独り言
私は、唯一彼と繋がれるこの瞬間が、とても好き。しかし今日は、熱くなった目から涙が溢れ、頬を伝っていた。
(あぁ、空しい。)
心の中でそう呟きながら、手のひらで涙を拭い、電源が切れたスマホを見下ろす。先程まで、愛しい彼と通話をしていたのだけど
「じゃあ、今日の通話はここまでにしよう。おやすみなさい。」
涙を流してしまった私に気がついた彼はそう言って、電話を切ってしまった。
声と顔の表情だけなら、電話やビデオ通話で感じることが出来るのだけど、最近じゃ物足りなくなってきた。
私は気付いてしまったのだ。いくら愛しくても、触れる事すら出来ない事に。毎日の電話じゃ、彼の温もりも香りも感じる事は出来ない。無機質な繋がりしか出来ないって。これ以上は私達の距離は縮まらないって事を。
彼がほかの人と楽しそうにしているのを見ると嫉妬してしまうのを許してほしい。楽しそうな声、笑顔を見て、此方も嬉しくなってしまうのと同時に、彼を喜ばしているのが私じゃない事に思わず焦燥感を感じずにはいられないの。
数分前までしていた通話中、彼の笑顔を見た瞬間、体中ほのかに熱を帯び、思わず触れたいと願ってしまう。彼の笑顔に手を伸ばしてみたけど、唯一触れられたのは冷たい画面。ひんやりと指先の熱と一緒に、頭も冷やされた。
触れたいと願わなければ苦しまなくて済んだのに、涙がこぼれて彼を戸惑わさせなくて済んだのに。少しでも長く、彼の声を聴いていられたかもしれないのに。画面に触れてしまった瞬間、ずっと閉じ込めていた感情が涙として漏れてしまったのだ。
(……あぁ、私ってバカだなぁ。)
心の中で呟きながら、私は毛布に包まる。
(どうか、気づかないでおくれ。この世には私より良い女というものが沢山いる事に。)
そんな不安を心に閉じ込めながら、今日も冷えた部屋の中、独り目を閉じた。
(あぁ、早く遠くに住んでいる彼と会いたい。せめて今は、夢の中ででも良いから……。)




