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異世界ですよ、山田さん!  作者: S?kouji
プレミアムなフライデーな新世界
4/15

ファンタジーは問答無用

厚く偉大な二次元の壁

重苦しい静寂が部屋に広がる。勇者、世界、救う。ここまでファンタジーな会話を試みられたのは生まれてこのかた初めてだ。

そんな輝いた瞳で見つめられても。どうしよう。何を言えばいい。

初手で「勇者」を繰り出してきた君に、俺はどんなカードを切ればいいのさ。



「エーテル」

「はい!」


渋い声が朗々と薄暗い部屋に響く。振り返って返事したとこをみると、この赤髪娘はエーテルと呼ばれているのか。エーテル。エーテル……。え、人名?


渋い声が続ける。


「ご苦労様。君は、いったんお下がりなさい」

「……っはい!」


微妙な間をおいて、彼女は半歩、体を引いて右にずれる。でもまだ、何か言いたげな顔して俺を見てる。

君、それ、下がったって言わない気がするんだけど、大丈夫?


「魔女の血は、万病に効くと言うわね」


大丈夫ではないらしかった。今度は、凛とした女性の声が静寂を破って、途端に赤髪娘がビクっと小さく震える。

そして声の主が言い終わるや否や、エーテル(たぶん)は何も言わずに、慌てて右端から壇を降りた。


魔女、血。飛び出す奇抜なセンテンスを、平然と受け流す場内の面々。

宙に浮いたまま進行する会話。


いや違う。この空間で浮いてるのは、明らかに俺の方だ。明らかに俺だけが共通認識(ファンタジー)の外にいる。


おっ、落ち着け。冷静に成り行きを見守るんだ。必ず、この寒気がする教団(クラスタ)の輪に、飛び込むタイミングがあるハズだ。


……冷静に、それ、良いのか?



壇を去る赤髪娘を何とはなしに目で追って、再び正面に目を向ける。すると列から二人、キャラの濃いオッサンたちが歩み出てきた。

一人はガタイのいいスキンヘッド、そしてもう一人は、(服飾とかは高貴ながら、)海賊の頭領みたいな風格を醸し出してる厳めしいオッサン。


昔やってたRPGの教皇を思わせる、重厚な衣装に威容を携えて、彼らは一歩一歩、こちらに歩み寄る。

破竹の勢いで邁進する不条理(ファンタジー)を前に、俺はいよいよ、現実逃避を開始する。


これは現実(リアル)なんだろうか。

今流行りのVRとやらなんじゃなかろうか。



「マッカラン・トレバー国王陛下であらせられます」


高らかに、壇の手前に控えたスキンヘッドの方がのたまう。黒い眉、カイゼル髭、穏やかな青い目。極め付けはローブ着てても分かる筋骨隆々。超ムキムキ。

なんかに似てんな。うん、アレ。カプ○ン製のタイラント。あいつはクソ恐かったけど、こっちはずいぶんと、人当たりが良さそうなイカすオジサマだ。


タイラント(仮)の言葉にあわせて、(壇を登って俺の前まで来た、)(いか)ついオッサンが右手を胸にあてて一礼した。


「ようこそ、異国の方。我々の言葉はお分かりですか?」


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