【公爵に拾われました】
「君!君 大丈夫か⁉︎」
「んんッ」
煩いな。
「起きたまえ!」
グラグラと体を何度も揺すられる。私が重病人だったら私を殺す犯人はあんただからね!
「あぁ〜〜!五月蝿い!寝てるの!」
「おお!起きたか」
ガシガシと頭をかいて見上げると、私を起こしたのは身なりの良いデカイ男性だった。
「こんな所で寝てたら喰べられてしまうよ」
「えっと、誰?」
「家は何処だね?」
「いや、だから・・・」
「家まで送って行こう」
「・・・・解らない」
人の話を聞く気はないわけね。
「気付いたら此処にいたの」
「記憶がないのかね?」
「・・・・・そうだね」
「なるほど。だからなのだね」
男はうんうんと頷きながら俺に手を差し出した。
「あっ、ありがと」
立ち上がって服に付いた草を払う。身長差に男性を見上げればやっぱり大きい人。私の身長が152㎝だけど、その私より30㎝は高い。
「一先ず馬車に乗りたまえ。此処は危ないからね」
「えっ?いや・・」
「ふっ、何もしないよ」
当たり前でしょ!未成年に手出したら犯罪だから!
見知らぬ土地で見知らぬ紳士について行くか、見知らぬ土地を1人で彷徨い続けるか決めかねていると、
「此処はモンスターも多く出るし、行く所もないのだろ?」
確かに行く所はない!
と言うか、此処が何処だか解らない。ってか、やっぱりモンスター出るんだ。
レッツ ファンタジー!
「確かにそうね。言葉に甘えさせてもらいます。そうだ。名前は?」
「これは失礼した。私の名は リオーネ アメジスト。一応公爵だよ」
「アメジスト公爵?」
公爵って、どの辺の地位になるの?
「リオーネで構わないよ。こんな所で出逢ったのも何かの縁だからね」
「私は 高遠 雪凪。此処が何処で、何処から来たかも、何をしてたかも思い出せないの」
キョロキョロと辺りを見渡して見ても何も変わる訳ではないが、つい見てしまう。
「落ち着くまで我が屋敷に居ると良い。部屋は腐るほど余っているからね」
「ありがとうございます」
「そろそろモンスター達が匂いを嗅ぎつけたようなので、乗りたまえ」
「えっ!カッコいい」
見た目ハイエナっぽいのに、背中には黒のたてがみ、体はシマシマ模様、ライオンの餌横取りしてシマウマ食べるから呪われたのか?と聞きたくなるような姿の生き物達に取り囲まれていた。
「感心している場合ではないよ」
「あっ、ごめん!」
急いで馬車に乗ると、凄い速さで走り出した。馬車ってもっとゆっくり走るものだと思ってた。それに中は全然揺れてない。
ジロジロと馬車の中を見渡せば、
「珍しいのかい?」
「ん?そうだね。初めで乗ったから」」
「初めて?」
「そう。もっと揺れるもんだと思ってた」
「昔はそうだったけどね。魔法で少し弄ってあるからうちの馬車は早いし、揺れたりしないよ」
「へぇ、凄いんだ」
やっぱこの世界は魔法でなりたってるんど。なら使い方を教わった方が賢明かな。この世界の人間じゃない私に魔法が使えるかは謎だけど。
「え〜と」
「何だね?」
「魔法とかの使い方も全く解らないんだよね。だから暇な時で構わないから教えてもらえないかな?」
「全く覚えていないのかい?」
《心配だ》と顔に書いてありそうな程リオーネは顔を曇らせる。
「暇な時だけで構わないから」
私まで暗くなってしまったからなのか、リオーネは明るく笑ってくれた。
「いつでも構わないよ。私も此方には休暇を取るために帰って来ただけだからね」
「ありがとう」
「そう言えば、君のスキルは何だね?」
「スキル?」
「ステータス画面と言えば見えると思うよ。悪いが他人の画面は見えなくてね」
「ああ。それなら固定がシールドで、残りがサーチとレンタルだったかな」
「レンタル?」
「何かを借りたりするんだろうけど、使い方が解らないかな」
「私も多くの能力者を知っているが、初めて聞くスキルだね。取り敢えずそれは後回しにして、サーチは何を何処まで詳しく調べられる?」
「さっき現在地は?って聞いたけど無理だった」
「ん〜、探索系ではないようだね」
リオーネは何かを考えながらキーボードを叩いている。改めて見ると他人に見えないパソコンって異様な光景に見えて笑ってしまった。
「やはりどの冒険者とも該当しないね」
「何してるの?」
「私は冒険者のデータを管理してるからね、すぐに調べられるんだよ。一応これでも管理者だからね」
「へぇ〜」
その時の私には、目の前にいるこの男性がどれだけ凄い男か解らなかった。
「一先ず、食事にしよう」
外を見れば立派な屋敷の前についていた。
「いかにも貴族の屋敷だね」
「アメジスト公爵だからね」
リオーネに案内されて屋敷に入ると、何人ものメイドさんに出迎えられた。