表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/33

シーン8 始まりは街から


終末都市エンドウォールの中央広場から遠くない所に建てられた、酒場兼仕事螺旋所。

それが、月夜の朧亭。

ここはいつも人が賑わっている。

元々は『ハンターギルド』として建立されたが、今やその面影は薄くなっている。

時々、様々な事情で障がい者となった存在をよく見掛ける。

それは歌姫に付き添う笛吹きだったり、月夜の朧亭の店員だったりする。たまにそのような冒険者も居るが、全体的に見ても少ない。

月夜の朧亭の構造は至って単純で、色々な機能が有る。

店内はただっ広い。

様々な紙が張った掲示版を冒険者が睨んで、自分に似合った依頼を探している。

また、酒場に癒やし薬など、冒険者専用の消費品もある程度は揃っている。

酒場の隅に旅芸人が唄う小さな専用ステージも有る。

今そこに旅芸人たちが『月夜の朧亭』から借りたリュートを弾いて、唄っていた。神秘な雰囲気を維持しつつ、英雄驒を謳う。お客さん全員、黙って静かに耳を傾ける。

月夜の朧亭の店員は仕事螺旋と酒場仕事にはっきり分かれている。たまに手が空いた時、どちらかの仕事に手伝う事も有る。

時に臨時募集し、腕の良い人に働いて貰う事も有る。店員がテキバキ手順良くこなす姿は格好いい。



「それじゃ、ここで一旦解散だね。確か、教会へ行くんだったけ?」

「はい。一人で静かに聖女神ラギュリア様に祈りたいので」

「分かった。夕方にここで待ち合おうか」

セイラがうつなぎ、支部の教会に向かおうとした時。

「あのー。」

背後から声を掛けられた。

振り返ってみると、そこは心優しそうなお爺さんが立っていた。

「儂はベルカ。何かと噂になっている、君に話があるんだ。すまないが、二人とも時間は大丈夫かな?」

「ええ。大丈夫です。セイラさんは?」

「構いませんよ」

セイラと僕は出来る限り笑顔で対応し、酒場の隅っこの席へ移動する。



「話というのは、至って単純。儂が管理する館に出回る魔物を倒して欲しい」

曰く、一つ玉の魔物らしく、先日館に現れたそうだ。

もし、外に出たら困るので、討伐を依頼しに来たという。

「報酬はそれなりに払おう。どうかね?」

「他の条件は?」

「あぁ、忘れていたよ。他人の冒険者達と一緒に組んで、泊まって、魔物を倒して貰いたい。既にある程度の実力を持った人達を手配してある」

「なぜそれを先に言わないんですか?」

パーディを組めば、より安全に魔物を倒せるだろうが、金銭トラブルなどの内輪揉めもあり得る。

過去に何度もそのような修羅場に遭遇してしまい、困り果てた記憶がある。

「すまない、本当に言い忘れていたんだ。もし、依頼を引き受けてくれるならば、陽が暮れた頃にここ、月夜の朧亭にて待って欲しい。依頼を辞めたいなら、その時に言ってくれ」

セイラと目を合わせ、うなづき合う。

「分かりました。引き受けましょう」

「ありがたい。それじゃ、儂はこれで失礼するよ」

ベルカが立ち去り、荒くれ者たちの罵声が響く。

セイラが立ち上がり、改めてエンドウォールに有る支部の教会へ行く。

一人になった僕はため息を吐き、腕を伸ばし、背伸びする。

「夕方まではまだ時間有るし、エンドウォールを歩き回るか」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ