シーン7 エンドウォールの事情(2)
森林の葉の隙間から漏れ出る温かな日光。
静かに響く鳥の啼き声。
徐々に意識がはっきりしてくる感覚。
「そろそろか」
ため息をひとつ。
すぐに身を起こし、背伸びをする。
少し離れた所で、日課の素振りを始める。
その時。
一陣の風が吹き、見上げたら、小屋に1人の少女が居た。
昨日会話を交わしていたセイラだ。
呆然と眺めていたら、向こうのセイラも気付いたようで、顔を逸らされた。
涼しい風が吹き、自分の理性を取り戻す。既に幾らかの時間が流れたようで、気付けば目の前にさっきのセラが居た。
「起きるの、早かったですね」
「あ。うん。さっき美しく見えたから別人かと思った」
「そ、そうですか…」
何となく空気が気まずくなる。
「あ、出発するまでちょっと待って下さい。女神ラギュリア様に祈りを…」
セイラは地面に短剣を突き刺して、祈りを捧げる。
僕は急に変わったセイラの態度にひたすら困惑していた。
エンドウォールにもうすぐ辿り着くのに、全然嬉しくなかった。
●
ーーまだ世界中の地図の半分が空白だった頃。
神に造られし箱庭、幻想世界ゲルニア。
今、世界に魔物という脅威が力無き人々に迫っていた。
それでも勇敢に挑んでいく人達が居た。
曰く、国を護る、騎士団。
曰く、金額の分だけ、働く傭兵。
曰く、魔物に復讐し、狩る者。
曰く、そのような危険な世界に、一握りの希望と覚悟を持って、挑んでいく者。
その人達を周りはこう呼んだ。
敢えて危険を冒す者。縮めて、『冒険者』。
これは、バルド・ブールアが辿る旅物語ーー。