シーン4 邂逅(2)
「待って! 僕、何の準備をしてない!」
「大丈夫。召喚獣が引っ張っていく馬車に数日分の食料は乗せてあります。薬もご心配なく」
「いや、僕の装備が全然大丈夫じゃないよ!」
歩き続け、二輪馬車の前で立ち止まる。その馬車の先頭に、岩のような皮膚が覆われたデカい獣が居た。セイラが呼び出した召喚獣だろうか。
「食事場兼待ち合わせ広場で待ちます。その間に準備して頂けますか」
「分かったよ…」
何とか納得してもらい、装備を整える為に、この場から離れていく。
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準備を一通りやる事を終えた後、食事場兼待ち合わせ広場へ行く。
その道中、色んな人を見かける。
例えば、体の肌が魂が無いゴーレムっぽい少女達。
「まさか、船がぶっ壊れたなんて…。普通、慌てるよね、これ…」
「あら、この時代をゆっくり観光できるのはいいじゃない」
ジト目で眺める妹分ゴーレムと本を読みながらどこか楽しそうなクールゴーレム。
そんな会話に聞き耳を立てながら、僕は素通りしていく。
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「あら。バルド・ブールア。戻ってきましたか」
待ち合わせ広場の隅にて、捻りもない会話でセイラと話し込むと、ケリーが歩き寄ってきた。
「オメー、こんな子の護衛、引き受けたのかよ! いいな、俺は行けねーけどな!」
「いつ知ったんだい、君は…」
「ザロン様に聞いてきた!」
ザロン様とケリーの気軽い会話が目に浮かんで見える。
苦笑いで受け流す。
「さっ、バルド・ブールアさん。出発です。ケリーさん。貴方に神の加護を」
「あぁ。サンキューな」
「では、行きましょう」
セイラはそう言って、先に歩き始めた。デカい召喚獣が馬車を引っ張って後を追う。
動き始めた馬車に合わせて、僕の護衛ミッションが始まった。