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シーン6 過去の映像


中央都市デアンから出たバルド達は夜闇の森へ走って行った。

連れ去った跡がそこに続いていたからだ。

道中で魔物を蹴散らしながら、進んでいく。

その道の果てに、小さな祠が建てあった。

それが気になり、近づいて詳しく調べる。

ふと、火の精霊の集団に照らされた、僕らの足元に、魔法陣が現し、輝き出す。

次の瞬間、視界が暗転した。





(無響声:字幕):「ーー魔王軍の侵攻を鬼神の如きの活躍で撤退させた。しかし、そのあまりにも酷い過ぎる狂暴っぷりから、周囲は恐れ、”霧風”騎士団長バルド・ブールアを避けるようになった。故に、それまでの功績は台無しになった。1度目の冒険者時代でも同様のやり方で信頼を喪っている」


真っ暗な空間に、真っ白な竜が陽炎のように揺らめいていた。

響かない声。ーー無響声。

まさか、ここで”歪んだ物語”と同じ声に出会うとは。

足元を見る。道路が有る。明かりが無い所だというのに、はっきり見えていた。

それは祭壇に続いており、そこに視線を移していく。

ふと、1人の影に気づく。

銀色の髪。先端が鋭い耳。見覚えが有った。

ティア・ラッセルだ。

赤色の神官服に連れ去らされ、ここに運ばれただろうか?

気のせいか、腕が短いし、包帯を巻いている。

まだこちらの存在に気づかれていないようだ。

隣にはついさっきまで一緒に走ってきた、スカンオルが居た。

ゆらゆらと揺らめく真っ白な竜の 説明はまだ続いていた。


(無響声:字幕):「見よ。これが戦場にて、バルド・ブールアの暴れ狂う姿だ!」



次の瞬間、虚空に映像が映し出された。

「あれは・・・・! やっぱり、そうだ。見覚えが有る!」

その映像に思わず叫んだ。




陽が暮れ、空が薄ら紅くなっていた。

沈んでいく陽の下に、黒い点々の集まりが有った。

遠くから見えたらさほど気になるような光景ではない。

しかし、その黒い点々が段々大きくなっていく。

やがて、黒い点々がはっきりとした姿を現した時、人々は悲鳴を上げる。

この世の者で無い存在。

人類の天敵。

平穏な世界<リルーナ>に災厄をもたらす者。

ーー魔物。

今、エンドウォールとヴァーエア王国の国境に、魔物の大軍が迫っていた。

人々はこれを『魔王軍』とそう呼んでいた。

普通ならば、絶望するだろう、数え切れぬ魔物の大軍。

しかし、その進攻先に、1人の鎧が着た男が居た。

右手に片手長剣ロングソードが握られており、緊張とした表情で魔王軍を睨んでいた。

バルド・ブールアである。

当時の彼はエンドウォール最小規模の”霧風”騎士団長に昇格しており、僅かな数ヶ月の間、様々な功績を残した。

そして、今、彼は騎士団長として魔王軍の前に立っていた。


「この剣は、マサリ様の為に有り。我こそ、エンドウォールの揺るがぬ盾である」


ぶつぶつと呟くバルド・ブールア。

だがーーその表情が、酷く歪んだ微笑みに豹変する。



「さあ、我の愛するマサリ様に勝利を捧げよう!!」



一時の笑い声の後に、駆け出した。

すぐさま、蒼いオーラが身体を包んだ。

魔王軍もバルド・ブールアに気づき、彼を襲う。

バルドは最初に来た魔物、ゴブリンの頭を掴む。次に常人離れした筋力で振り回した。まるで棒のように。

魔物同士ぶつかり合い、肉と血が派手に飛び散る。

されど、バルドは気にすることなく魔王軍に突っ込んでいく。

時に、愛用の長剣をを流れるような動きで魔物を斬り。

時に、力任せの一撃で殴り。

時に、長剣に付加魔法で炎を纏わせ、魔物ーー狼人間ワーウルフの頭から尻まで突き通す。

瞬く間に、戦場は悲鳴と叫び声と血肉が飛び合う、地獄絵図のような有り様に変わり果てた。


しばらくして、周囲が静かになった頃。

バルドは身体全体を紅い血で染め、魔物の面影が無い、ただの肉塊を無表情で見下ろす。

恐ろしく冷たい視線だ。

直後、両腕を広げ、酷く歪んだ微笑みで呟く。

「ああ、今、僕はマサリ様の愛をひじひじと感じているよ・・・・・」






「おうっぷ・・・・・」

吐き気を耐えきれなかった、ティア・ラッセルが大量の唾を吐き出す。

やっぱり、あの戦場には見せていいものじゃない。

(無響声:字幕):「理解できたか。何故周囲がバルド・ブールアを恐れているのか。さて、我の言い分は終わった。目的も果たせた。小娘を還そう。”正義の皮を着た悪魔”よ。ーーー我はしばらく姿を隠す。探すな。また、汝の前に姿を現す」

ティアが紫の光に包まれ、僕の所に宙に飛んできた。

彼女を受け止めた頃には真っ白な竜は消えていた。言いたい放題を終わった後は速攻でどこかに行ったらしい。

ティアは顔色が悪く、今にも吐きそうだ。

「バルド・・・・」

狩れそうな声で僕の名を呼ぶ。

「言いた事はいっぱいあるけど、とりあえず帰ろうか」

僕の言葉に、ティアは力無く頷いた。



僕らはいつの間にか、小さな祠の前に戻っていた。

火の精霊の集団のおかげで中央都市デアンに帰還できた。

中央都市デアンの道中の宿屋に寄り、ベットにティアを寝かせる。

何か有った時の為に、スカンオルを宿屋に居残ってもらった。

次に、<月夜の朧亭>に向かった。

そこに、数人の姿が有り、忙しく動いている。

冒険者だったり、衛兵だったりする。

彼らをまとめて指示を出している人が、自分を気づいた。

その人は、マサリ様だ。腕を組んで、激怒の表情でこちらを睨む。

どうやら、今夜は説教漬けになりそうだ。

僕は腹を括ってから、マサリ様の所へ向かったーー。


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