シーン4 過去 ※ヒロイン視点
あたしが走り出してからどのくらい経っただろうか?
記憶が曖昧だ。
既に走り回る体力を使い果たし、力無く座り込んだ。
真っ暗な空間に、ただ呆然とぽーっとしていると。
先ほどの真っ白な竜が現れた。
(無音声:字幕):「このまま紅の魔女を喰らうのも一興・・・・。だが、それではあっけないな。ふむ、バルド・ブールアの過去を語ってやろう。ちと調べたが、なかなか愉快で興味深いぞ」
純白の翼が広がると、周囲に数十枚の絵と色々な映像が浮かんだ。
(無音声:字幕):「ほほう・・・・これは・・・・。バルドとやらは、かつて最小規模の騎士団長に就いていたらしい」
映像に出てくる鎧を着た男の背中はどこかバルドに似ている。
(無音声:字幕):「12歳、マサリに出会い、エンドウォールに初めて踏み入れる。14歳エンドウォール最小規模の騎士団、”霧風”騎士団に入団。16歳に至るまで、様々な任務に従事する。しかし、商人通りにて、マサリに愛の詩を大いに謳い、辞任される。すぐに、冒険者に転職。そのあとはエンドウォールを拠点に、旅していた。しかし、マサリに関する問題を引き起こし、エンドウォールから追い出された」
様々な絵と映像でバルドの過去を丁寧に説明してくれる。
ただ、力を使い、疲れたのか、息切れする音が聞こえる。
バルドの過去はちょっとぴっくりした。
元、”霧風”騎士団長であり、エンドウォールを拠点に旅した冒険者。
あの、マサリ大好きのバルド・ブールアにそんな秘密を持っていたとは。
(無音声:字幕):「しかも、詩作りと楽器による演奏が無駄に上手く、知識豊か。バルドを狙った縁談も劣悪な噂を気にしない勢いで、沢山やってくる。但しすぐに縁談が立ち消える。・・・・う、羨ましい。な、なななな何故、あのような性格に・・・・・」
ショックを受けたらしく、真っ白な竜が揺らめく。
何だろう。
胸の底から湧いてくる、ドロドロした感じ。
この、説明できない思い。
嫌だな。
そんな凄かったなんて。
1週間も一緒に居たのに。
バルドの雰囲気とか、凄くなかったのに。
今すぐ、バルドの所に行きたい。
行って、もっと教えてと言いたい。
そんな実力を持っていたなら、あたしを守ってよ、と言いたい。
ああ。ーーーそうか。
あたし、人の暖まりを求めていたんだ。
あの1週間を気持ちよく過ごしていたんだ。
あたし、あたしは。
バルドを知りたい。
バルドに守られたい。。
自然と彼を思想う。。
喉が詰まる。
なんかやんで1週間も一緒に活動した人。
何の理由も無く。
自然と彼の隣に、立ってーーー・・・・・。
あたしは、あたしはーーー




