シーン1 伝令
ーバルド・ブールア視点ー
身体が重い。
おまけに思考が回らない。
瞼が開いたと思ったら、直ぐに気絶した。
3回目に起きた時は、太陽の光に、これでもかと浴びていた。
「ぐあっっ」
眩しい。光が。
思わず、腕で光を遮る。
「うぅぅ~~~ん」
唸り、気づいた。
舌が乾いていた。喉もカラカラ。あぁ、水を飲みたい。
腕をぶん回したり、ゴロゴロ転がったり。
しばらく暴れていると、やっと思考がまもとになってくる。
「くっそっ」
舌打ちし、身体に鞭を叩き、よっせっと起こす。
頭を抑える。
まだ思考がぐわーんぐわーんとしていた。
「なんで・・・・。あっ、思い出した。【孤軍一閃】・・・・」
脳裏に鮮明な映像が蘇る。
スライムマッスルに対して、切り札である、【孤軍一閃】を使ったのだ。
その代償として、頭に風邪を引いたような痛みを感じるのだ。身体も鈍重になる。
こうなっては冒険者として復活するまではしばらく時間が掛かるだろう。
「ああ、しまったな・・・・・。あれ? ここって宿屋の部屋なのか・・・・。 あぁ、マサリ様に運んで貰ったのか」
周囲を確認する。
小さなダンス。花を添えた小瓶。自分が使っているペット。
冒険者セットを詰め込んだリュックも有る。
ちんまりとした宝箱は部屋の隅に置かれている。
どう見ても宿屋の部屋だ。
しかし、誰に運んで貰ったのか覚えていない。
記憶を辿り、悩んだ、その時。
誰かが部屋に入ってくる。
「身体が痛い・・・・。久しぶりに走り回ったせいだわ・・・・・」
くったりと青白い顔で弱々しく呟く少女。
腰が痛いのか、手を当てていた。壁に片腕で支えている。
その顔に、見覚えが有った。
昨日、ボス戦で共闘した人だ。
「君は・・・・・」
「あっ、起きたんだ。改めて・・・・っぅ・・・・自己紹介 するわね。あたしはティア・ラッセル。よろ・・・・っっ、あただ・・・・」
腰がかなり痛いようだ。
身体の調子は相当悪いだろう。
「む、無理しない方がいいよ。あ、僕、バルド・ブルーア」
「ええ。知っているわ・・・・・」
少女ーーディア・ラッセルは疲れた顔で言う。
「そんなことよりも、誰かが来て・・・・いて・・・・・。あってぇっ・・・・・」
「もう良いよ! 休んで! 座って良いから!!」
苦しそうな彼女の様子に見るに耐えず、遂に叫んだ。
*
宿の玄関にて、1人の男が立っていた。
異人だ。ーーいや、ここは獣人と呼んだ方が良いな。
頭に兎耳が付いており、尻に有る尻尾もそれっぽい。
「バルド・ブールア様。ティア・ラッセル。月夜の朧亭から伝言を預かってきました。お2人にお願いしたい事があるそうです。今日中には是非来て欲しいという事です」
何かを怯えるように慎重に丁寧な口調で語ってくれた。
<月夜の朧亭>。
酒場兼仕事螺旋所として営業している所だ。
ふと、自分に対して、熱い視線を浴びていることを気づく。
月夜の朧亭から伝言を覚えてやってきた男だ。
「あっ、あー。そんなに怯えてなくてもいいよ。それに、僕、今は調子が悪いんだ。うふっ、冒険者としての活動は・・・・くぶっ・・・・また今度にしたいなぁ」
軽く吐き気が湧いてくる口を押さえながら、弱々しく断りを入れる。
「それが・・・・・今の状態のままでも簡単にできる依頼・・・・だそうです」
彼の言葉に、僕とディアは困惑の表情で首を傾げた。




