タイトルなし
英雄の物語とは、死をもって完結する。では、死ぬことを許されなかった英雄であった者たちの物語の末路はどういったものだろうか。
深い眠りから目が覚めるように、自分の意識が鮮明になっていく。まるで今までの記憶を消し去るように。
そして意識が戻ると俺は知らない古びた洋室のベットの上で横になっていた。
「ここはどこだ?...俺は戻らねば..」 何処にだ?
そういえば俺は俺であるという記憶以外が全くない。しかしこれが洋室であるということや、ベッドであるという一般的な常識としての知識は記憶として保持されている。ただ、肝心な俺を構成する部分だけがすっぽりと抜け落ちていた。ここにいてもどうしようもないと思い俺はベッドから降り部屋の扉をあけ、続く螺旋階段を明かりがするほうへ降りていくと、老婆が一人、煤けた火のないストーブの前で椅子に腰深く掛けていた。
「おや、目が覚めたのかい?」老婆はしわがれた声でそう言った。
「ここは何処だ?」俺は第一に疑問に思っていたことを口にする。
「そうさねぇ...この館ははっきりとした名はないのさ、ただ役割はきちんとあるさね」
「役割?俺はここは何処だと聞いてる」
「ずいぶん事を急いてるようだね、あんた記憶がないだろ?」
「なぜ俺が記憶がないことを知っている」
「ここに来る人間は皆そうなのさ..ところであんた12番目だろ?私は12番目が一番好きでね、来る奴らの中で最も業が深く、罪深い…でもそれが一番人らしいのさ、さぁさぁ見してごらんよお前の業をさ、12番目の証を」
12番目?業?そもそも何故この老婆は俺が記憶がない事をしっている?
俺が混乱していると一目で判断した老婆は下卑た笑い声で、「ヒヒッ…まぁまぁあんたが混乱するのは分けないさね…でもこれだけは言えるよ、あんたは12番目の英雄であるはずだったものだ。ここはね見果てぬ夢を叶える事すらかなわなかった英雄の成れの果てが辿り着く場所さね…」
「英雄?俺は英雄だったのか?」
「どうだかねぇ…英雄かもしれないし、そうじゃないのかもしれない…それを決めるのはあんた次第だよ」
老婆は部屋の右の扉を指差し
「ここの館を出るとある異世界に到達する。その世界はあんたと同じ境遇の者が11人いるさね…でだあんたの目的は他の11人全員を殺し、その証を集める事…」