第2話ドワーフ村の事情
7000文字って大変ですね。
「結構松明って明るいんだな」
そう当然この世界の文明が日本程発達している筈は無く、明かりは電灯ではなく、松明や牧ストーブ等で補わないとのだいけない。
「えぇ、我等ドワーフは技術だけが取り柄ですから」
「へ~、ドワーフって技術力が高いんだな」
「だから、何とか村が認められているのです」
「ん、認められている?それってどういう事だ?」
「い、いえ何でもありません」
う~ん何で、俺に隠しているのだろう。さっき、村長も何か、聞かれたくないというか、思い出したくもないっていう感じの表情と様子だったな。多分この村には何か負の歴史があるんだろう。村長も後で話すって言ってたし、今は放っといて、やるべき事をやるか。
「暗くなってきたな」
「はい、更に冷え込みが強くなってきました」
「つまり、魔物が出る可能性がある。という事だな」
「えぇ気を引き締めていきましょう」
「おっと言った傍からお出ましか」
「あれはファートゴブリンですね?」
「ファートゴブリン?」
「はい、ファートゴブリンはゴブリン科の魔物が洞窟等に一定期間住み、変化した魔物です。
通常のゴブリンより、攻撃力・防御力は下がっていますが、その分機動力・統制・スタミナが上がっています」
「確かに、ゴブリンとは思えない統制だし、なにより色が紺色に変色してるな」
「えぇゴブリンが変化した場合それに伴い肌も変色します。しかし、武器がツルハシしかないと思われるので、大丈夫でしょう」
「よし、指示を出す。採掘係、照明係は1歩引け。後、照明係の1人は松明をいつでも投げれる様準備しとけ。前衛の戦闘係はこっちからは攻め込まず、相手が来るまで、待機。後衛の戦闘係は気を抜かずに背後・側面からの、奇襲に備えろ!」
俺達とファートゴブリン5体の距離は約30メートル。仮に相手が攻め込んで来ても、対処出来るだろう。
こちらの勝利条件は
死者を出さずに、相手を撤退させる。
あちらの勝利条件は
死者を出してでも、相手(俺達)を撃退させる。
といった所だろう。相手が攻め込んで来たら、前衛の戦闘係が粘っている間に火を放てばいいのだが、もしこのまま相手が攻め込まずに膠着状態だったらどうしようか。あれ、っていうか、戦わずに済む方法あんじゃん。
「なぁ、俺の言葉ってあいつ等に通じる?」
「はい、ステータス表示中に言語設定と言ったら設定できます」
何か、そこだけ随分ハイテクっぽいな。
『ステータス』
『言語設定』
お、これが言語設定の画面か。
使用中言語 人間語・ドワーフ語
使用できる言語
人間語 ☑
ドワーフ語 ☑
ゴブリン語 ☐
一括使用 ☐
一括使用にチェックしたらいいのかな。よし、これで話が通じるだろう。
「ゴブリンさん、ちょっといいかな」
「何だ」
かなり、警戒してるっぽいな。
「そんな、警戒しなくていいですよ。私達は戦いに来たのではなくて、交渉しにきたのです」
「えっ!」
「静かにしろ、考えがあっての言動だろう」
おぉ流石隊長、落ち着いている。
「信じられる訳がないだろう。それにそちらの者も驚いている。という事は出鱈目だろう」
「でしょうね。なので、明日村長と一緒に交渉しに行きます。その対応をどうするかはそちらの自由ですが。結果がどうなってもしりませよ」
「ふん、いいだろう」
「今回は撤退するぞ」
「いいのですか」
「今。やり合って増援が来たら困るだろう。それに地の利はあちらにある。下手に手を出さない方がいいだろう」
「そうですね。しかし、村長にどうお伝えするするんですか?」
「普通に伝えて大丈夫だろう。そういや、隊長結構落ち着いてるよな」
「そうですかね?」
「あぁ、だって今回ドワーフ村以外の事には顔色一つ変えなかっただろ」
「まぁ、幾つもの戦いを経験してきた身ですから」
「へぇ、ドワーフって戦うんだな。意外だな」
「え、えぇ」
「また、その反応か。まぁそれについては後で聞かせてもらうからいいや」
「村長ただ今、帰還致しました」
「おぉ無事でなにより。で、成果はあったか?」
「実は行く途中、ファートゴブリンに出くわしまして、同伴していた、そこの御方の提案で交渉しようとしたのですが、拒否され、明日村長を連れて来ると言ったのですが」
「そうか、なら明日は付いて行こう」
「大丈夫でしょうか?不意打たれるという事は?」
「そこは多分大丈夫だろうからあんま、気にしなくていいぞ。というより、不意打ちじゃなくて、試練って感じだな」
「試練?」
「多分、石とか、ツルハシとか色々投げてそれに動じる事無く進めるか。的な感じだと思う」
「成程、では、ひとまず、料理に致しましょう」
「おぉもうそんな時間か」
「さて、楽しい料理時間の最中申訳無いですが、このドワーフ村には昔、何があったんですか?」
「この、ドワーフ村は平和な暮らしを送っていて、とてもいい村でした。しかし、5年前のちょうど今日!不幸の始まりが訪れたのです」
そう、村長が話を始めた途端、村長を含めた村民全員が悔しそうな顔をして、涙をこぼし始めた。
「それまで、我が村と友好な関係を築いていた、アルオード王国の国王が何者かに暗殺され、国王の座が変わりました。変わったのはその国王の弟でした。そして、政権がその弟に移り変わった途端、我が村に地獄の選択を突き付けてきました。その内容が、今すぐこの村を捨て、アルオード王国専属の鍛冶師になるか、
この条約にサインする事。
という2択でした。そして、私達は知っていました。王国専属の鍛冶師というのは、一切の自由などなく、ただ、働くだけというのを。そして、はむかえば、死、以上の苦痛を味わうと。なので、後1つの選択肢、条約にサインする道を選びました」
「しかし、その条約の内容が・・・」
「はい、あれは条約などではありませんでした。ただ支配下に入っただけでした。その内容は
毎月村の全財産の4割を納める。
毎年、18歳から25歳の内6割を、兵役させる。
どんな命令であろうと、国の命令に従う。
我が、アルオード王国の者が倒れていたら助ける。
との事でした」
「ひ、ひどい」
「そして、悲劇はそれで終わらず、私達がいつも採掘に行っている、洞窟にゴブリンが住みつきました。今日、あなたに行った、洞窟です。
それ以来、鉄鋼石の採掘量は大幅に減り、村の若者は兵役でいなくなっていきました」
「成程、そのアルオード王国の国王の名前は?」
「アルバンス・エイリオです」
「そうか、許せないな」
「ところで、あなた様はなんという御名前ですか?」
「そういや、言ってなかったな。カワ いや、タカオ・カワタだ」
「タカオ・コウタ様ですか。では、無礼を承知で申し上げます!
何卒、我が村をお助け下さい。何卒!」
「あぁいいぞ」
「な、なんと宜しいのですか?」
「あぁいい」
ノリで言っちゃった感があるけど、大丈夫だろうか。
「その為には明日の交渉は絶対に成功させないといけない」
「はい、承知しております」
「取り敢えず皆今日は、ご飯食ってすぐ寝ろ。健康が一番大事だ」
「心遣いありがとうございます」
ふ~朝だな。今日の交渉成功するだろうか。いや、成功させるんだ。今日の交渉にこの村の今後がかかっていると言っても可笑しくないだろう。
「皆しっかり飯は食えよ」
「タカオ・コウタ様?」
「あの、様はいらないから。で、何?」
「あの、貴方様を何と呼べば良いのでしょうか?」
「だから、様はいらないって」
いやそう言っても意味ないな。
「そうだなタカオで頼む」
「分かりました。タカオ様ですね」
やっぱ意味なかったな。
「ところで、村長。あなたの名前は?」
「私の名前はホロウスです」
「そうか、ホロウスか」
「うん、やっぱご飯は美味しいな。改めて食の良さが分かったな」
「あの、今日の交渉は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろ、いざとなったら奥の手出すし。あんま、緊張すんなよ。弱く見られんぞ」
「はい、そうですね。今日の交渉はお任せします」
「あぁ任せろ」
「全員準備出来たか~?」
「はい、準備出来ました。いつでも、出発出来ます!」
「あんま、気構えるなよ。そうそう、1つだけ、お前等に言っておく事がある。
何があっても、絶対に動揺するな!」
「はっ!」
「じゃあ行くぞ」
さて、此処だな。俺等、交渉隊は交渉役の村長、俺の2人。後、照明役が3人と、護衛兼道案内役の5人の計10名だ。
隊の隊員を決める時、最初は多い方が良いという意見が多かったのだが、俺の考えという事により、少人数で行く事になった。何故かはいつか(結構すぐ)に分かるだろう。
「と、来たな」
俺がそう言った瞬間、周囲から投石が始まった。石なので、当たっても少し痛いぐらいだろう。スキルや魔法を使わない限りは。まぁ俺のスキルで無効化できるから、実質何も無いただの石が飛んできているだけだ。何人か顔に驚きの表情がでかけたが、俺の言葉を思い出し、平然と歩いて行く。洞窟に入ったら投石はないだろう。
「ほぉ今のに顔色1つ変えずに入っていくか」
「そうですね、隊長。やはり言ってた通り見所がありますね」
「あぁ、悪くない」
「此処っぽいな」
俺等が辿り着いたのは高さ3m程両開きの門だった。
「着いたのは良いのですが、体調がすぐれないです」
「恐らく空気が入れ替わらずに質の悪い空気が溜まっているのだろう。大丈夫か?」
「大丈夫です」
「ならいいや。でも、無理すんなよ」
「はい」
「さて、じゃあ行くか」
俺が扉を開いた先にいたのは、高さ2mいってるかいってないか程の大きな紺色のゴブリン、このファートゴブリンの族長だった。
「おぉドワーフ村の交渉団か。歓迎致す」
「な、今のが「静かに俺が話す」は、はい」
どうせ、今のが歓迎か!?とでも言うつもりだったのだろうが、交渉中にそういうのは御法度だ。
「かなり大掛かりな歓迎でしたな」
「そうだったか。あれでも足りんと思っていたのじゃが」
この様に遠回しに言い、相手に内心を見せないのが重要だ。あれだな、狐の化かし合いというやつだ。
にしても、敬語って妙な威圧力があるよな。
「では、本題に入りますか」
「おぉそうしてくれ。というより、人間が交渉するのか」
「友好な関係を築けたので、この様に手伝っているんですよ。
で、単刀直入に言います。ドワーフ村と平和的な関係を築く気は無いですか?」
「ふむ、もう少し、講和の内容を提示してくれないとな」
これは、ある程度は聞いといて断るパターンだな。それなら、何を言われても、内容に納得が行かないで済む。悪くないな。さて多分、こいつは拒否してくるだろうな。最悪武力行使でいくけど。
「内容はまず、そちらにして欲しい事から言いますね。そちらにして欲しいのは、
1つ目がドワーフ村の採掘隊に洞窟の採掘権を与える。
2つ目がドワーフ村の採掘隊の洞窟内での安全確保。
です。そして、こちらがするのは、
1つ目が高品質の剣・防具の支給
2つ目が松明の支給
双方の条件
1つ目がお互いがお互いに戦闘行為及び準戦闘行為をしない。
2つ目がどちらかが援軍を要求したら、もう一方は必ず、応える。
という様な感じでどうでしょうか?」
「断ったら?」
「後で後悔する事になるでしょうね」
「後悔か。ふん、お前が儂に後悔させる事が出来ると思っているのか?」
「普通の人だったら難しいだろうね。でも、俺が転生者だったら?」
「「転生者!?」」
これには、族長も少し驚いている様だ。
「ふん、転生者か。お前が転生者だとしても、何も後悔する事は無いわい」
そう、能力魔法無効化は直接攻撃に対しては何の意味も為さない。攻撃方法が直接攻撃のファートゴブリンからしたら、あまり関係が無い。だが、それをこいつらは知らない筈。何も転生者が絶対強いというのは無いので、後悔しない、と言ったのだろう。
「では、講和を拒否するという事で宜しいですか?」
「さぁ拒否させてもらう」
「どうなっても、知りませんよ」
「望む所よ」
「よし、じゃあ帰るぞ」
「え、帰って宜しいのですか?」
流石に驚くかな。俺が交渉大事って言ったのに簡単に諦めてるのに。ただ、ちゃんと動揺を隠して、小声で話しかけてくる辺り、まだ落ち着いているな。
「あのまま言い合っても埒が明かんだろうから。武力行使に出る」
「ぶ、武力行使ですか」
「大丈夫だぞ、俺がやるから」
「え?」
「いや、え?じゃなくて、俺がやるから大丈夫だって言ってんの。安心しろおれは(一応)転生者だからな」
「分かりました」
「宜しいのですか?逃がして」
「あぁ大丈夫だ。そして、全員に洞窟から退避する様、伝えろ」
「退避?何故で御座いますか?」
「それは勘だ。どうせすぐ分かるだろう」
「はぁそうで御座いますか」
「さて、何事も無く洞窟から出れたな」
「殺されるろ思っていたのですが。何故でしょう?」
「さぁ」
まぁ予想は付くけど。
「さて、やるか。逃げときな、巻き込まれたら死ぬから」
「やるって此処でですか?何を?」
「まぁ見てたら分かるから、逃げな。其処のゴブリン達も逃げとく事をお勧めするぜ」
「な、気付かれていただと!?」
「狼狽えるな。うむ、ここは忠告通り、逃げた方が良かろう」
「理解が早くて助かるな」
「長い事、戦を経験して来た身ですから」
「あれ、その台詞何か聞いた事あるぞ」
「そうですか?まぁ今はおいときましょう」
「そうだな。ん、何か音がするな、洞窟の方から」
洞窟から出てきたのは、大量のゴブリンだった。
「ふん、勘の良い野郎だ」
俺の今、唯一残っている魔法。
「エネルギーボール」
俺はエネルギーボールを山(洞窟込みの山)に放った。
俺が放ったエネルギーボールは山に当たり、山の極一部を削った。これだけじゃあ何も意味がない。
しかし、ここで大事なのはその威力じゃない。魔法を放ったという事だ。素質を極限まで高めた為、この魔法〔正確には俺のこの魔法への適性〕の成長速度は半端では無い。しかも、この魔法のMP使用量は元々少ない。なので、かなりの量を放てる。更にそれが成長し、使用量が少なくなる。というループ?の結果、
俺のMPが残り僅かになってる頃には山は原型を留めずに崩れていた。
「いや~中々良い魔法だったな」
やはり、初期武器最強っていうのはあるかも知れんな。
「今のは何という魔法ですか?それに中々の魔法所じゃありませんよ。今の魔法は!」
「何という魔法ですかって、エネルギーボールっていう魔法だけど。っていうかお前魔法の知識持ってんの?」
「はい、少しですが、持ってますよ。っていうより今のがエネルギーボール!?そんなのが有り得る訳ないじゃないですか。エネルギーボールに山を壊す様な威力はありませんよ」
「そうなのか、でも放っとけ」
「放っとけって・・・」
「さて、どうなっても知らないって言ったんですから、文句はありませんよね?」
「あぁ文句はない。しかし、一つ頼みがある」
「頼み?」
「はい。我が傘下のファートゴブリン達を貴公の傘下に加えてくれぬか?」
「別に良いけど、傘下じゃなくて、仲間って事で宜しく。で、お前自身はどうするんだ?」
「アルオード王国で暴れ果てる所存です」
「お、どうせアルオード王国で暴れるなら、俺達の仲間入れよ。お前の仲間もそう思っているだろうし」
「そ、そうなのか?」
「はい、是非とも我等と一緒にこの方について行って欲しいです」
「「「「お願いします」」」」
「お、お前達」
「で、どうすんだ?」
「是非とも、ついて行きます」
「そうか、じゃあ一先ず、族長以外、急いで村に戻ってくれ」
「「了解」」
「いや~族長あんた、潔いな」
「はい、一目見た時からあなたから、何か感じたので」
「成程。で、山壊してたからそれに確信が持てたと」
「はい」
「族長あんた、何ていう名前だ?」
「ハラークです。あなたの名前は?」
「俺は、タカオ・カワタだ。呼ぶときはタカオって呼んでくれ」
「了解致しました。タカオ様ですね」
「ハラーク、お前のところのゴブリンってどれ位居る?」
「女子供含めて、100人前後ですね」
「すか。で、そうそうハラーク、お前アルオード王国に何か恨みがあるのか?」
「えぇ私達はご存知の通り、元は普通のゴブリンでした。しかし、アルオード王国の王が変わった時、苦しい2択を突き付けられました。私の村はそれにはむかいました。結果、村が潰され多くの村人が殺されました。そして、今に至るのです」
「成程、だから恨んでいるのか」
「はい」
「安心しろ、ドワーフ村のの人々もアルオード王国に恨みがある。だから協力する」
「有り難いです」
「さて、ちょっと急ぎ目に帰るか」
「何故ですか?」
「勘っていうやつだよ」
「悪い勘は当たってしまう物ですが・・・」
「当たって欲しくないけどな。多分当たってるだろう」
「うわっ酷いことになってる」
俺とハラークが村に戻ってきた頃には村が壊滅していた。
「タカオ様!」
「ホロウスか何故こうなっている?」
「分かりませんが何らかの敵による攻撃では無いでしょうか?」
「その敵は近くに居るか?」
「今は退いたと思われます」
「そうか、死傷者は?」
「死者はいません。負傷した者が多いですが、全員命に別状はありません」
「そうか、良かった。しかし、攻め込んできた奴め。絶対に許さない」
「ん、ここに何か落ちてるな。何だろう?手紙か」
タカオ様へ
私はあなたの村を壊滅させた者だ。
もし、復讐したいなら、エルイース川の上流の原っぱまで来い。
闇と謎の魔団
「こいつが、元凶か。挑戦状を送り付けてくるとはいい度胸だ」
「な、なんと書かれていましたか?」
「俺に対する挑戦状だ。エルイース川ってどれだ。あちらの川です」
「俺が倒れた川か」
「はい」