9
基本的に1話1話短めです。すみません。
「カエデ様をお連れしました。」
エリーは優雅に頭を下げると奥へと下がっていく。
「おはよう。掛けなさい。」
王に目配せをされた執事に椅子を引いていただき
軽く会釈をし腰かける。
目の前には乙女ゲームの攻略キャラクターイケメン3人。朝っぱらからキラキラしすぎて目が痛くなりそうだ、、、
私が険しい顔をしていたからだろう、アレンが怪訝そうな顔で問いかけてきた。
「よく眠れなかったか?」
「いえ、しっかり休ませていただきました。多少動揺してしまい寝付くのには時間がかかってしまいましたが。」
私は無理矢理笑顔を作った。あんまり心配かけてしまっても申し訳ない。多少安心したのかアレンはそうか、と頷く。
「では、これからのことを食事をしながら話し合おう。」
エリウス王がそう言うと美味しそうな食事が運ばれてきた。
フルーツの盛合せにオムレツ、ベーコン、サラダにスープ。
特別豪華ともいえない内容かもしれないが、王宮のシェフが手掛けているだけあって見た目がオシャレで味も驚くほど素晴らしかった。
そして、話し合って決まったことは、昨日も王がおっしゃっていたが、元の世界に戻るまではここの城でお世話になって良いこと。これは、私の安全面も考慮してのことのようだ。
黒目黒髪の人間はこの世界には珍しい。いや、存在しないと言っても過言ではない。こちらの世界の人は、皆さんそろってハイカラな髪や目をしている。これまで召喚された女神がこの世界に残って子孫を残しているが、女神の特徴を色濃く受け継いだとしても、黒目黒髪は産まれないそうだ。
女神を召喚した際は、城下へも御触れを出し、民にも周知させているそう。今回は何故私がここへやって来たかは不明であるため、特に民へ知らせることはないが、黒目黒髪が崇拝されている世界である。私が一人で城下へ出ていけばたちまち人攫いにあい、水面下で売り飛ばされてしまう可能性が考えられなくもないそうだ。
その為、外出する際はアレンかカイルを必ず伴い、髪を染めるように指示された。染料はあると。ただ、カラーコンタクトなんてものはやはり存在しておらず、年のためフードも被るようにと。
この話を聞いたときは、この後の不自由な生活を考えて気が重くなった。
元の世界に戻る方法に関しては、まずは国際魔術連盟に召喚術を行った人物がいないか問い合わせてくれるそうだ。
国際魔術連盟 略して≪国魔連≫。
これは、魔術が飛び交うこの世界で魔術による犯罪行為があった際に取り締まり、魔術に関する取り決めを行う機関だ。
基本的に毎回有事の際に女神を召喚するのは、今私がいるジュネビア国になる。この国には上位の魔術師が揃っているからだ。宮廷魔術師団長であるカイルもその一人。隣国にも魔術師はいるが力の差は大きい。
異世界人をただ召喚するよりも女神の力も有する異世界人を特定して召喚する方が何十倍も難易度があがってしまうそう。
隣国からしたら女神を召喚することは難しいが異世界人を召喚することは出来うる可能性は充分あるそうだ。
ただし、召喚するには正統な理由を書き留めた書状を国魔連に提出し承認をしてもらわない限り行うことは違法になるようで、今まで一度も女神以外が召喚されたことはないという。
表向きは異世界人を召喚する正統な理由があればと取り決めされているが、実際、正統な理由なんてあるはずがないのだ。
異世界人を召喚すること、それは則ち悪意あっての行為でしかない。女神に関してはこの世界の生死がかかっているため、やむを得ず行われているが、その分丁重にもてなし、必ず元の世界に戻すという。歴代の女神の中にはこちらで恋仲になった人物と結婚し元の世界に戻らないパターンも多いそうだが(笑)
「でも、犯罪行為って分かっていたら自ら出てくることはなさそうですよね?そしたら、結局私を召喚したのは誰なのか分からないのでは?」
私の問に詳しく答えてくれたのは、今までずっと黙っていたカイルだった。
「そうですね。恐らく国魔連に問い合わせても召喚の許可は行っていないという返事がくるでしょう。基本的に魔術犯罪が起きた際は顔や名前、出身国等、被告の分かりうる情報を各国に発信し、指名手配にします。今回も違法で召喚術が行われたこと。そして、召喚された人物がこのジュネビア国で保護されていることを各国に発信してもらいます。」
???それだと、結局私が召喚されたことだけが知れ渡り、実行者が名乗りでることにはならないのではないか?
私が頭の上に?を出していることを見受け口角をあげ微笑すると説明を続ける。
「ふっ、ちゃんと最後まで聞いてくださいね。この世界では周知のことですが、召喚術というのは膨大な魔力が必要になります。女神を召喚するのはさることながら、異世界人をただ召喚するだけでもその必要魔力量は馬鹿にならない。
場合によっては施術側が死に至ることもあります。この私でも、四年前にサクラさんを召喚した際は数日寝こみましたし。。。
ですから、命の危険を犯してまであなたをこの世界に呼び寄せた。そこには何かしらの理由があるはずです。召喚した側からしたら重大な理由が。」
「重大な理由って、、、何なんでしょう、、、?」
「それは、私には分かりません。ですが、そこまでの犠牲を払って召喚したあなたを早々に諦めるとは思えない。もし、あなたを召喚した人物がいるとするならば、必ずあなたに接触してくるはずです。」
そう言ってカイルは真剣な瞳で私を真っ直ぐ見つめてきた。
思わず喉がなる。一気に緊張が身体中にまわり知らないうちに背筋が伸びる。
「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。何があっても必ずあなたを守りますから。」
非の打ち所のない笑みを浮かべたがらそんな恥ずかしいセリフを繰り出すカイルに不覚にも私の鼓動は高鳴ってしまった。




