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ID パスが不明になり長い間更新が停止していました。
ラストまでの物語は考えているのですが、文才がないため、ゆっくりペースになると思いますが、これからアップしていけたらと思います。
1話~7話まで編集済み。
再度、あたたかく見守っていただける方に読んでいただけたら幸いです。
非現実的な出来事が起きた翌朝、私はいつもと同じように太陽光で自然と目を覚ました。
もしかしたら全部夢だったのかもという淡い期待を胸に、あたりを見渡すも、そこは住み慣れた狭いマンションの自室ではなく城にあてがわれた広々とした部屋だった。
自分の甘い考えに自嘲的な笑みが浮かぶ。
そうだよね~、そんな都合よくいかないよね。だからって、乙女ゲームに現実逃避はしてましたけど、実際にトリップすることなんて一切望んでなんていなかったのに。仕事だって無断欠勤続けたらいつ首になるか。。。
考えるだけで震えてくるわ。ゲーム主人公のさくらちゃんのように学生なら何とかなるだろうけど(それはない)、29歳の女なんて簡単に再就職先がみつかるとは限らないんだからね。私をこの世界に召喚したヤツ、見つけたら問答無用でぶん殴ってやる!!!
昨日、思いっきり泣いて悲壮感に十分ひたれたおかげか、はたまた、カイルによって楓の意識がそれたせいか、だんだんと悲しい気持ちが、楓を召喚した人物への怒りへと変わってきていた。
不安や寂しさ悲しみがなくなったってわけじゃない。今だってちょっとでも気を抜いたらまた泣きそうだ。でも、どっかで気持ちを切り替えなきゃダメなんだ。全然主人公だなんて柄じゃないけど、主人公になったつもりで本来の場所に帰るために出来ることから始めるしかない。泣いていても何も変わらない。元の世界に還れるって思い込んで前に進むしか道はないんだ。
一晩たって、やっと少し前向きになれた気がした。
コンコンっ。
「はい。」
「失礼致します。カエデ様、おはようございます。王の命により、今後カエデ様付きとなりました侍女のエリーと申します。何かございましたら何なりとお申し付けくださいませ。早速ですが、朝食のご用意ができました。お仕度が整い次第ダイニングへご案内致します。本日は今後のことについても話し合いたいと王がおっしゃっており、ユリウス王、アレン様、カイル様も朝食に同席される予定でございます。ささ、急いでお召し替えを致しましょう。」
そう言って、エリーはにこりとほほ笑むとクローゼットから淡い水色のシフォンワンピースを取り出した。
可愛いけど、アラサーにこのワンピースは果たして似合うものなのか、、、?
着替えた後は時間もないということで髪を櫛で梳いてから軽く顔にファンデーションをのせただけでダイニングへと向かう。似合うか自信がなかったワンピースもエリーのとてもお似合いです!という言葉を信じることにし考えないようにする。
案内するため少し前を歩くエリーは私より少し背が高い。栗色の髪の毛を後頭部でキッチリとポニーテールにし、きりっとした目元は彼女を大人びて見せているが、肌がもちもちぴちぴちしているのできっと私よりも断然若いのだろうということがうかがえる。
「ねぇ、エリーは侍女の仕事長いの?」
「そうですね。侍女長に次いで古株になります。皆、侍女は結婚と共に退職する者がほとんどですから。私は12の歳から務めておりますので今年で6年目になりますわ。」
「ってことは今年18歳ってこと?!」
「は、はい。」
勢い余っていつの間にか前を歩くエリーの真横へと移動していた。私のあまりの権幕にエリーの顔も引き攣りぎみだ。
「そっかー。私と11歳も違うんだね。ギリギリ一回り差を免れたわ。」
一人でぶつぶつ言っていると今度はエリーがすっとんきょんな声をあげた。
「へっ、!?えーーーー!!カエデ様は29歳でいらっしゃるのですか!?」
「悲しいことにね。」
「信じられません。カエデ様は私と同じか、上だとしても21、2歳ぐらいかと思っておりましたので。」
「またまたエリーったら、私はそんな童顔顔でもないしお世辞はいいのよ。ふふふっ」
やっぱり日本人はトリップすると若く見られるのもセオリーなのか。と思いつつも若く見られるというのはうれしいことだ。
「カエデ様、決して世辞などではございませんよ。肌もシミなどなくお綺麗ですし、さくら様もそうでしたが、異世界の女性は皆そのようにスレンダーな体系なのですね。あっでもサクラ様がいらっしゃったのはまだ16歳の時だったかしら。」
エリーさん、それって遠回しに胸がないといいたいのですか?
これでもささやかなる物を所持しているんですのよ。Aカップですけどね!
何気に昔からコンプレックスに感じていた部分へダメージを受ける。
でも、めちゃくちゃ他人行儀で世話だけします的は人にそばにいてもらうより、エリーみたいに少しくらい毒吐く人のほうがよっぽど一緒にいて楽しい。
「エリー、まぁ、歳は離れてるけど、私は一般家庭で育った平民だし、さくらちゃんみたいに特別な力も使命もきっとない。だから友達みたいに気軽に接してくれたら嬉しい。ここにいる間はこの世界のこととかも含めていろいろ教えてね。これからよろしく。」
いつの間にか廊下の真ん中で私とエリーは立ち止まっていた。私はそっと右手を差し出しエリーと握手をかわそうとしたが、エリーの洗練されたお辞儀によってさえぎられてしまう。
「カエデ様、私たちにとって異世界からの客人はそれだけで敬うべき存在でございます。ですからお世話を任せられた私めがカエデ様と堂々と握手を交わすわけには参りません。」
そう言ってエリーは頭を上げた。
「ですが、カエデ様がこの世界に滞在される間は充実した日々になるよう努めてまいります。聞きたいことがあれば何でも聞いてください。愚痴や悩みなど話すことで少しでも楽になることがあれば何でもおっしゃってください。これでも口は堅いのですよ。」
エリーは茶目っ気たっぷりにこっそりウィンクして見せた。
「ありがとう。エリー。。。」
「少しのんびりしてしまいましたね。きっと殿方たちがお待ちかねです。突き当りの角を曲がってすぐの部屋になりますので急ぎましょう。」
私とエリーは再び朝食の場へと向かった。
テーブルにはユリウス王、アレン、カイルの3人が既に席についていた。




