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はぁーーーーー。
与えられた部屋のベッドの上に寝そべり盛大なため息をつく。
墓穴を掘った私は、何とかその場を収めようとまた神経をすり減らす羽目になった。
前女神様、ゲーム“アナルド”の主人公こと一之瀬さくらちゃん。
一之瀬さくらはデフォルト名だ。
もちろん乙女ゲームなので名前変換はできるが、自分の名前に変えてプレイするなど恥ずかしすぎて、私はデフォルト名でしかプレイしたことがない。
そのため、女神=さくらという方程式が頭の中に出来上がってしまい、ついつい言葉で発してしまった。
とりあえず、“さくらちゃんの学校の先生”なーんて、適当に嘘ついちゃった・・・。
しかも、異世界で女神やりましたっ!って話もさくらちゃんから聞いていたことにしないと辻褄が合わなくて、結局嘘に嘘を重ねてしまった。
嘘なんてつき慣れてないし、眼力王の前だし若干ぎこちなかった気がしないでもないけど、
何とか信じてもらって、城の一室をお借りすることができるようになった。
きっと決定打はあれだ・・・
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『さくらちゃん、自分に女神が務まるか不安で夜の庭で泣いていたとき、王子が励ましてくれて。そのおかげで無事に最後まで女神を務めることができたって。すごく感謝していましたよ!』
『っそうか・・・。』
王は自分とさくらちゃんの二人だけの思い出話をされ驚きに目を見開く。
そのときの光景を思い出しているのか、懐かしむように城の庭を窓ガラス越しに眺め、そして、こちらに視線を戻した。
『カエデ。
そなたは前女神さくらの恩師。そなたが元の世界に帰る日まで、この宮でもてなそう。』
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こうして今に至る。
王がさくらちゃんを励ます話はストーリーを進める上で必ず経験するイベントの一つだったのだ。
攻略者それぞれの恋愛ルートに入らないと迎えられないイベントももちろんあるが、強制的に起こるイベントもいくつか用意されている。エンディングはアレンとしか迎えていないがプレイ回数はこなしている為、王子とカイルの強制イベントもしっかりと細部まで覚えていた。
こんなところでゲームの知識が役立つなんて。
でも、今はゲームストーリー後の世界。ゲームの知識はもうあまり役立ちそうもないな。
それに、最後に王子から聞いた話は私の気分を沈ませるには十分すぎる内容だった。
召喚された者は召喚した者にしか元の世界に還せない。
これが召喚における覆せないルールだそうだ。根本的に同じ魔術師の魔力ではないと元の世界に繋がる道が開かないらしい。
女神であるさくらちゃんはこの国の魔術師団によって召喚されたため、帰還させることができたが、私は彼らに召喚されたわけではないので現段階で元の世界に帰す方法はないと断言された。
もし、意図的にどこかの誰かさんに召喚されたとなると、その術者を探すほか方法はない。
そもそも、召喚されてきたのか、はたまた突発的な何かが原因でこの世界にやってきたのか一切わかっていないからにはどうしようもない。
王たちも色々と尽力をつくしてくださるそうだが、
私、元の世界に帰れるのかな・・・?
色んなことが一気に起こって、大好きはアレンに出会えて、嬉しさのあまり忘れてたけど、
ずっと元の世界に帰れないなんて、一生この世界で生きていくなんて、そんなの聞いてないし、信じたくもないし、もちろん覚悟だってない。
確かにアレンのことは大好きだけど、いきなり別れも言えずに家族や友達に会えなくなるかもしれないなんて、、、
冷静になった私は元の世界に帰れないという残酷な現実を突きつけられ、不安と寂しさで涙が頬を流れた。抱きしめた枕に顔を押し付て絶える。
せめて、声が漏れないようにと。




