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「お嬢さん、彼が手荒なまねをしてすみません。」
カイルが女子ウケするさわやかな笑みを浮かべながら近付いてきた。
「アレン、こんな外で立ち話していたら疲れてしまいますよ。見たところ、魔力も皆無ですし、この貧弱そうな身体つきでは武術も長けているとは思えません。いきなり侵入不可区域に現れて十分怪しくはありますか、何か仕掛けてきたところで私たちを害せる存在だとも到底思えません。王宮に戻ってからじっくり詳しくお話を伺ったほうがよろしいかと。あなたの容姿を含め気になることもありますし、ね。」
声色はいたって穏やかなのに結構酷いこと言われてるのって私の勘違いじゃないよね、、、
さすが、ゲーム内唯一の腹黒担当なだけあるわ。
じっくりお話ってじっくり尋問の間違えでしょ。
でもお陰様でさっきまでの緊迫した空気が少し和らいだようだ。
こうして私は王宮へと強制的に連れていかれることとなった。
とばされたといったほうがあってるのかも。
そう、文字通りとばされました。
転移魔法で。
ーーーーーーー
ーーー
うぅー。
気持ち悪い。
何この最上級の二日酔いのような辛さ…。
身体を屈めて手で口をおさえる。
吐きそう…でも、いくら腐女子でもイケメンの前では吐きたくない。しかも、ここには大好きなアレンがいるんだよ!?
乙女の意地にかけても吐くのだけは死守しなければ。
元はと言えば全部こいつのせいだ!!
地面にしゃがみこんだ状態のまま思いっきり元凶であるヤツを下から睨み付けると、
それに気づいたカイルはふっと口角をあげた。
「すみません。魔力が少ない方は魔力酔いを起こして気持ち悪くなることも稀にあるんです。魔力皆無なあなたには少々辛かったでしょうか?」
こんのやろーーーー!!!
絶体!確信犯だ!!
「せめて先に説明してくれれば、っうぇっぅ…」
ヤバイ、吐きそうで言い返すこともろくにできない。
慌てて再度口元をおさえる。
「お伝えしても良かったのですが、先に説明したとしても魔力酔いを起こさないようにする対策なんてありませんし。」
「言ってくだされば心の準備はできました!!!」
渾身の大声で抗議すると、いきなり背中にぬくもりを感じ振り向く。
「あんまり大声出すな!余計気持ち悪くなるぞ!」
「アレン……さん」
アレンが私の横にしゃがみこんで背中をさすってくれてる。
彼の表情からは心配と哀れみが伺えた。ほとんどが後者だろう。
カイルからの仕打ちを不憫に思ってくれたようだ。
彼の手が触れる背中に嫌でも意識が集中する。
アレンの手、あったかい。
私、今ちゃんとアレンのぬくもりを感じてる。
ゲームの世界にトリップしたなんて、まだ混乱してリアルな夢をみてるだけなんじゃないかと思う気持ちもまだ完璧になくなったわけじゃないけど、この瞬間は現実で間違いないんだと信じたくなった。
大好きなアレンに優しくされ、思わず泣きそうになる。
そして、感極まった私はおさえることができなかった。
何をって?それはもちろん、、、
「アレンさん、ごめんなさい、、もう、、」
「ま、まて、今何か」
危険を察知したアレンが慌てて立ち上がろうとしたが既に遅かった。優しくしてくれた彼に私は残念なお返しを盛大にぶちまけてしまったのだった。
主人公の名前、まだ出てないことに気づきました((笑))
次回には!!