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久しぶりの投稿です。

今後も気が向いた時の更新になるのではないかと(TT)

それからは楓の側には常にカイルがいる生活が続いた。

城下町へ出ては美味しいご飯を食べたり、催物をみたり、ウィンドーショッピングをしたりと毎日楽しい時間を過ごすことができている。

カイルは魔術師団 団長の肩書をもつだけあって、多忙だと聞いていた為、いつも一緒にいてくれるのはありがたいのだが仕事は大丈夫なのだろうかと心配になったが、カイル本人に"しっかり片付けてきましたから安心してください"と言われてしまっては、申し訳ないと思いつつも外出できることは素直に嬉しく思うし、彼の優しさに感謝した。


そして今日は隣町まで足を伸ばしてお店巡りをしている。この町、“ルイシャ”は海も近いだけあって、色とりどりの貝や珊瑚を使用した品が多く、見ているだけでテンションが上がった。中でもふんだんにパールをあしらった髪止めに目が止まり思わず手を伸ばす。

うわぁー、凄く可愛い!!欲しい!!けど。。。

この先もし自分でお金を稼ぐことができたらきっと君をもらいにくるね!そう心の中で真珠たちに話しかけ、そっと棚に戻した。

私はこちらのお金をもっていないし、もっぱら見るだけで買ったりはしていない。カイルが何度も買ってくれると申し出てくれたが、いつも丁重に断っていた。ただでさえ、衣食住を無料で提供してもらっているのに、これ以上迷惑をかけたくない。これでも大学を卒業してからはしっかりと仕事をして自分の力で生きてきたのだ。社会人としてのプライドがそれを許さなかった。

今日も変わらず「買ってあげますよ?」と誘惑してくるカイルに首を振り、そろそろ帰ろうと促した。


カイルとは最初の頃に比べると格段に仲良くなったと思う。

いつの間にかカイルと呼び捨てに呼ぶようになっていたし(カイルは未だに私のことはさん付けだが。何でもさん付け呼びは癖だとか)、私にとってはこちらの世界で気兼ねく話せる数少ない友人の一人になっていた。まぁ、意地悪なところは相変わらずだけどね!

でも、冗談が言い合える相手ができたことに私は心から幸せだなと感じていた。この世界に来るまでは家族や友達、自分の周りには助けてくれる人がいるということが当たり前だって思ってた。それがどんなに贅沢なことだったか、今では分かる。

何気ない日常がどんなに幸せなことだったのか。

元の世界に帰ったらみんなに感謝の気持ちを伝えよう。そう心に決めた。それこそ、親友の美紀には"あんた頭大丈夫?"と顔を顰められそうだが。想像すると自然と口元が綻んでいた。


「いきなりニヤニヤしてどうかしたのですか?怪しいですよ。」

馬車の車内、楓の向かいに座っていたカイルが怪訝そうにこちらの様子をうかがっていた。

「ちょっ、怪しいはないでしょ。元の世界の家族や友達のことを考えてたの。大切な人が当たり前にいるってとっても幸せなことだったんだなって。当たり前すぎて気づかなかった。だから、元の世界に帰ったらみんなに感謝しなきゃって。そう思っただけ。」


今では現状をすっかり受け入れることができた私は家族や友人のことを思い出しても前のように悲観することはなくなっていた。気持ちの整理がついたこともあるし、ここでの生活にも慣れ、親しい人たちが出来たことも大きな理由だと思う。何なら元の世界に戻るまでは海外留学をしているとでも思うようにしよう。そう、この日までは思っていた。カイルの次の言葉を聞くまでは。


「確かに、当たり前に大切な人が側にいてくれるというのはとても幸せなことだと私も思いますよ。、、、

きっと、今、カエデさんと一緒にいることも当たり前のことではないのでしょうね。サクラさんのようにあなたもいずれは還ってしまう。会えなくなる日がいつかやってきてしまうのですね。」


ーーー会えなくなるーーー

そうだ。今までは元の世界に還りたいとばかり考えていたけれど、還るということはもうここには居られなくなるということなんだ。せっかく仲良くなったエリーやカイル、そして、ずっと大好きだったアレンにも一生会えなくなるんだ。

珍しくも愁いを含んだカイルの表情に、ズキリと心が痛んだ。


「でも、まだ還る方法も全く分からないし、当分はお世話になる気満々だから!カイルも嫌というほどつれ回してあげる。覚悟してね!」

努めて明るく言いはなった私に彼は笑みで返してくれたのだった。





翌朝、いつもならカイルが部屋に訪ねてくるのだが、

しばらくは急遽魔術師団の仕事が入ってしまい会えなくなると使いの者によって知らされた。特にすることもなくベッドに寝そべりながら、手の中におさまっていた髪飾りを上に掲げて眺めてみる。先程使いの者から手渡されたのだ。

それはまさしく昨日カイルと出掛けた際に立ち寄ったアクセサリーショップで私が見つけたパールの髪止めだった。

「全く、気障なんだから。」

私と一緒にいるときに買う時間なんてなかったはず。

きっと、別れた後に買いに行ってくれたのだろう。

カイルは優しい。何でここまで優しくしてくれるのかと疑問に思うぐらい楓に優しくしてくれる。最初は何故そんなにも優しいのかと疑問に思ったが、すぐに答えにたどり着いた。

彼は私のことを女神様だと思っているから。きっとこれが答え。他に深い意味などないのだろう。

カイルは私が女神様なら良いと、私が女神様だと思うと言っていたのだから。

そう思うと何故かモヤモヤとスッキリしない気持ちになったが、疲れが溜まっているだけだと深く考えるのを放棄し、

ランチに出掛けようとアレンが部屋の戸を叩くまで眠りについたのだった。




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