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道中カイルといじめ?と格闘しながらも、30分程度で孤児院に到着した私たちは出迎えてくださった院長に続き、施設の中へと入った。

建物はそれなりに年季が入っていたが、汚い印象はなくしっかりと管理されているのが伺えた。きっと、国からの支援金も十分足りているのだろう。

国の予算を身寄りのない子供たちのためにしっかりと割り当てているユリウス王はやはり立派だなと思う。

世の中の支配者の中には自分のことしか考えない人や見て見ぬふりをする人をいるだろうに。


そして、玄関から一番離れた奥の広間へと案内された。この部屋は一番施設で広い部屋になっており、昼間は子供たちが皆で遊ぶ場所となっているそうだ。

そこには4歳から12歳までの子供が全部で20名各自遊びに夢中になっていた。

そして、院長と私たちに気づいた一人の子の呼び掛けとともに一斉に集まってきた。

「あ、せんせーい!」

「お姉ちゃんとお兄ちゃんもいる!!!」

「かっこいいーーー!!」

「お兄さん、私とおままごとしよ。もちろん旦那様をお願い!」

「おい!ブスなお前は俺と外にいこうぜ!怪獣ごっこでお前をやっつけてやる!!」


わぁーわぁー、一気に話しかけてきて引っ張ったり押されたり、

聞捨てならない言葉も聞こえたり。。。

子供たちの熱気に押されそうになるが、これじゃぁ、埒があかない。私は大きく息を吸いんで、


「静かにしなさーーーーい!!!!」


シーーーーン。


ありったけの声を響かせた。


子供たちは動きを止めて私を見上げた。なぜか、大人たちも静止しているが気にしない。


「みんな、はじめまして!

今日はみんなとたくさん遊ぼうと思ってやってきました。

私はかえで。かえでお姉ちゃんと呼んでください。

そして、この無駄にキラキラしてるお兄さんは、こっちがアレンお兄さん、こっちはカイルお兄さんです。みんな仲良く遊ぼうね!」

「、、、、。」

「お返事は!?」

「はーーーーい!!!!!」

ピシッと、軍隊のように手を伸ばす子供たちに気分が上がった私はみんなを外へと連れ出した。


こんな良い天気なんだもん。

外で遊ばないなんてもったいない。


キラキラメンズたちは呆気に取られるも、しっかりと後をついてきていた。




「かえでお姉ちゃんから提案があります。これからみんなで泥合戦をしたいと思います!」

「泥?」

「おままごとやりたかったのにー。」

口々に嫌そうな声が上がる。

「せっかくだから、みんなが一緒にできる遊びをしたいと思って!絶対面白いから騙されたと思って一回やってみようよ!もし、つまらなかったら止めていいから。」

「はーい!!!」


うんうん、みんな良い返事!!


泥合戦とは、その名のとおり、雪合戦の泥版だ!!

まず泥団子をたくさん作る。これを疎かにするとすぐに攻撃ができなくなるから要注意だ!

2つのグループに別れた私たちはチームごとに泥団子をつくりまくった。

私のグループには最初に私のことをブス呼ばわりした12歳の男の子、ヨリを含む10名と大好きなアレン!こちらのチームには女子が少ない。

それは、

「カイルお兄様ぁー!私が当たりそうになったら助けてくれる?」

「もちろんです。」

「カイルお兄様!!私の為に、あいつらを泥だらけにしてくださいね!」

「お任せください。」

カイルが微笑む度に一人また一人と女子が群がりハーレムを作ってしまったからである。

顔だけでいったらアレンもイケメンだし(タイプは違うけどね)

、私は絶対アレンの方が良い男だと思うんだけど、

物腰柔らかで、落ち着いた雰囲気のカイルの方が、この年代の女の子には圧倒的におモテになるらしい。

アレンはどっちかっていうと、やんちゃ男子系で男の子と既に仲良しになっており後方で楽しそうに作戦会議をかましている。


「いいか!お前たち!戦うからには何が何でも負けるわけにはいかない!!絶対勝つぞ!!」

「「おぉー!!」」

アレンはアレンで男子たちを虜にしてしまっているようだが。

いやいや、アレンさん、これ、ゲームですからね。。。

心の中で軽くツッコむ。


何はともあれ、中々盛上ってきたわ!っと一人密かにニヤけていると、いきなり頭にチョップをかまされた。

「痛っ!!」

「お前が一番のろまそうだ!俺らの足ひっぱるなよ!」

言いたいことだけ言ったヨリは、あっかんべをするとアレンの元に駆けて行った。


あいつー!!完璧舐められてるわ!!

アラサーの私が12のガキにぃぃー!!

見てなさい!!

これでも、体育の成績はA以外とったことないんだからねーー!!



「両チーム、礼!!」

「「お願いします!」」

審判は院長先生にお願いをし、ゲームスタート!

ドッチボールのようなコートを作り、各陣地に机を横に倒した砦をつくる。ここに泥団子を置いて、隠れながら相手を狙って攻撃するのだ。当たってしまったら退場となりコート外から応援隊へとまわる。



「行けー!あたれー!」

「やばっ!」

「ちょっと、どこ狙ってんのよ!」

「うわぁー!!」

走りながら逃げている者、砦に隠れて出ない者、上手く隠れながら敵をやっつける者。

みんな思い思いに行動しているようだが、試合はとても白熱していた。

男子が多いこちらのチームが有利かと思われたが、

女子たちは頭を使って仕掛けてくるため、単純なメンズはやられてしまい、いい勝負になっている。


でも、みんな凄く楽しそう!!

子供たちの生き生きとした表情を眺めて私も自然に笑顔になっていた。

よし!絶対勝ってやる!!

私は新たに泥団子を掴むと敵陣へと投げ入れた。


そして、試合も終盤。

相手チームは残りカイル一人。

こちらは私とヨリの二人だ。

アレンは中盤でカイルのハーレム女子たちの集中攻撃でやられてしまい既に退場してしまっている。

私とヨリは机の砦を二人で背にしながら、上がる呼吸を整えていた。

「ヨリ!残るは一人。あのイケすかないカイルのみよ。絶対に勝つよ!」

「おう!俺もお前と同意見だ!カエデ!」

力のこもった瞳で二人頷きあう。

この戦いを通して、私とヨリには友情が芽生えていた。

あれだけ最初はバカにされていたが、どうやら認めてもらえたようだ。


しかし、戦況はあまりよろしくない。

カイルは全く疲れている様子もなく私たちが投げる泥団子をことごとく交わしてしまうのだ。

私とヨリは一斉に机の両側から飛び出し、同時にカイル目掛けて投げるという戦法に出ることにした。これでどちらかがカイルの泥団子に当たってしまっても、カイルにどちらかの泥団子が当たればこちらのチームの勝ちだ。


「「せっーの!!」」

掛け声と共に私とヨリ飛び出した。カイルも机から身体を出し投げる態勢へと入る。その矛先は、、、ヨリっ!!!

私は思わず泥団子を投げずに、ヨリを庇う。

「カエデ!!!」

私は背中に軽い衝撃を感じ、その場で崩れる。

ヨリの顔が驚愕に歪む。

「カエデ、、、なんで。なんで、庇ったんだ!!」

「だって、ヨリは大切な仲間だもん。当たり前じゃん。」

「カエデ!!!」



「カエデさーん、早く退場してくださーい!」


茶番劇をしていると院長に急かされた。

アレンのいる応援隊へと向かうと、ヨリは、絶対にお前の仇を打ってやるからな!と叫ぶ。

私はそれに力強く頷き、両手を組んで祈る。

そんな私の頭にポンポンと大きな手が触れた。

「カエデ、お疲れさん!」

見上げるとアレンが少年のような笑顔で労ってくれた。

「うん!」

ハニカム私を見て更にアレンの目元が綻んだ。





「ヨリ、あなたの投げる速度、動きは大体把握しています。あなたに勝ち目はありません。諦めて降参しても良いのですよ?」

泥団子を片手にカイルが不適に笑う。

「そんなの、わかってる!お前の方が、大人で力もあるし、頭だって良いって!でも、俺は散っていた仲間のために絶対に勝たなきゃいけないんだ!カエデの為にも!」

ヨリは思わず手持ちの泥団子を握りしめた。

泥団子、崩れる。



ヨリ、、、、。思わずジーンときてしまったが、

これ、ただの遊びですから。。。


ヨリは新しい泥団子を掴み、勢い良く走り出すと相手陣地へと向かった。どうやら、センターラインギリギリから攻撃を仕掛けるようだ。確かに相手に近い分、命中率も上がる。しかし、それはカイルにも言えることだ。ヨリが腕を振り上げる。

カイルも団子を構え、投げようとした時だった。

「カイルー!くらえぇっ!ぇえーーーっ!」

ズルっ!!!

ヨリは足元に転がっていた泥団子の塊に足を滑らせてしまう。

万事休すかと思ったが、泥団子はヨリが前のめりに滑る勢いを上手く吸収し猛スピードでカイルの方へと向かった。

ヨリは倒れながら、団子を行く末を見つめ、

そして、軌道と速度を読みきれなかったカイルは泥団子の餌食となった。



「よっしゃぁーーーー!」

ヨリがガッツポーズをする。

「「ヨリーーー!!!」」

私たちは一斉にヨリへと駆け寄った。


こうして、私たちの戦いは幕を閉じたのである。


って、遊びですからね!!













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