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男子高校生のとある学校生活  作者: 彩島 明樹
序章「モノガタリガハジマル」
6/25

「出会いと始まり」あの忌々しき零子編

          ※


俺とやつ、やつってもわかるかな?・・・わかるわけねーな。ごめん。あいつや、こいつなどの、代名詞で人を指されても他人にはわかりっこないよな。それは、わかる、おれもな。しかし、それでもおれは、あんまりあいつの名前をいいたくはない。絶対に。

しかし、今は、ちょっと前の俺とは違ってきている。それだけはわかる。何故か。

まぁ、紹介する。俺があいつやらコイツやらと呼ぶのは、ほとんど決まっている。中島零子だ。

一応言っておくが、おれと、こいつとの付き合いは、決して小学校からでも、中学校からでもない。

それまたびっくりだろ。うん。こいつとの関係は、俺たちの通う私立西野也高等学校しりつにしのやこうこうで初めてだったのだ。しかも、なんと、あの雪風さんの友達だ。さらには、ただの友達ではない。俺と大輝と同じように、雪風さんと中島は親友らしい。小中高と同じ、それまた俺たちとびっくりするほど似ている関係であったそうだ。これも何かの縁かな。

なんて。雪風ゆきかぜさんとなら、俺は正直、嬉しいかもしれないな。でも、零子れいこだけは、絶対にダメだ。そう俺は思っている。心から。

まぁ、なぜそんなにも俺が中島を嫌うかというとだな、まずは、性格が最悪。それ以外の容姿や成績はトップクラス。運動もそこそこできるらしい。雪風さんに匹敵する様な。もうこの二人がツーショットになった瞬間皆の目が一瞬で集まるに違いない。なんか悔しい。

初めての、中島との対面は、俺が雪風さんと廊下で長話をして、のちには、あだ名の付けあいをした、その日の放課後であった。結局ボツになったけど。



「おい、・・・、このプリントの山、ちょっと重いが職員室まで持ってきてくれ。」という、おれたち1ーBの担任今堂が誰かを呼んで、誰かに命令している。

教師ならそれぐらい自分で持てよ。なんて俺は言わないよ。

俺が帰りの支度をしている時に、雪風さんがやってきた。

「ゆうくん、このあとって何か用事とかってあるかな?もしなかったら、ちょっと付き合ってもらいたいんだけど・・・」

もちろん行くとも。暇です。超暇です。なにもすることはありません。もしあったとしても、そんなもんはキャンセルします。

「そう。嬉しい。」

俺こそ嬉しいです。あなたの喜ぶ顔が見れましたので。

「じゃあ、このあと、東棟の3階の文芸部室に来てもらえるかな?」

なんと、これはもしや。・・・あいやいやいやいや。それはない、いくらなてんでも。いくら、雪風さんでもそんな、大胆なことはしないだろう。して欲しいと思っている俺の半身は、置いといて。

しかし、そんな俺の希望も、その数秒後には、塵と同化して、寂しく何処かに散っていった。

「あ、ゆうくんの友達も、一緒にね。二人に紹介したい人がいるから。」

なに?大輝も?そんな。雪風さんの俺への告白じゃなかったの?・・・それは俺の頭の中の設定か。すまんすまん。

それで、なに?紹介したい人?誰だそれは?

俺が首をかしげている中、雪風さんはまだ何か喋っていた。

「その人、さっき先生のお使いに行っちゃったから、それが戻ってからわたし達も行くから、ちょっと待てて。それじゃあお願いね。私もちょっと用事があるから、先に行くね。また後で。」

そう、早口言葉のようにいって、雪風さんは俺から離れていって、そのまま教室を出ていってしまった。それに入れ替わるように、

「おい、勇樹、あいつといつの間に知り合ってんだよ。」

大輝はぶっきらぼうにいった。久しぶりに怒ってる?でもなんで?今回は俺何もしてないよ?それに、雪風さんをやつ呼ばわりだけはするな。いくら、親友でも、そこだけは譲らん。

「別に怒ってなんかいない。お前がそう見えるているように思っているだけで、お前の目がどうにかしているだけだ。しかし、あいつが、おまえと。ふーん。」

大輝はなにか納得したような、何か考え込んでいる顔になっている。

おれにはさっぱりわからん。取り敢えず、

「今から、東棟三階の文芸部室にいくぞ。雪風さんの、申し出だ。心して受けよ。」おれは、大輝に、そう、直接伝えた。

「なぜだ?」やっぱそうなるわな 。知ってた。でもここは負けない。

「どうしても。雪風さんが来て欲しいと言っている。だから行く。そんだけだ。」ほかに理由がいるか?それに、雪風さんの紹介したい人というのにもちょっと興味がある。どんな人だろう?ぐらいには。

だから、おれは、嫌がる大輝を引きずるようにして、そこに向かうことに決めた。




・・・そして、今その最中である。結構手ごわいな。早く歩いてくれ。重い。大輝本人は、俺に引きずられながら、何か言っているが俺に届くはずがなかった。

んー。聞こえなーい、聞こえなーい。

階段に差し掛かったところで、ようやく大輝も、観念したようで、自分から歩いてくれた。たすかったー。ここで、重かったとか言ったら殴り飛ばされるんだろーなーとか、思ってみたり。

階段を下りている途中、何人かのジャージ姿の人とすれ違った。


一応説明しておくと、私立西野也高校には、中央棟、西棟と、東棟がある。そこに一年から三年までの教室やら特別教室やらがたくさん存在する。おれたち一年の教室は西棟に、二年と三年は中央棟、文芸部の部室や特別教室、大教室が東棟にある。

東棟は、比較的新しい作りになっている。壁などは、すべてコンクリートでてきている。かわって、西棟、中央棟は、西野也高校が、設立されたのと同じくらいからあるらしい。だから、壁も床も何もかもが木、とどこを見ても木で作られている。

昔は東棟がなくて、西棟と中央等しかなかったから、昔は中央棟は東棟と呼ばれていたりしなかったり。少し前に今の東棟ができたわけだから、東棟がほかの棟より新しいのは当たり前だよな?

唯一木でないのは、黒板と、黒板消しぐらいなもんだ。

それゆえに、西棟では、たまに木が軋む音も聞こえたりする。いつ、倒壊してもおかしくないような風情である。大丈夫かよ・・・

しかし、未だに立ち続けている。なんと丈夫な。なんて。

そして、俺たちの向かう文芸部室は、実を言うと、今は使われていないらしい。なので表現としては、元文芸部室なわけである。

なんでも、部員不足とかで、数年前に廃部になったみたいです。

ついでなんで、説明しておこう。ここ西野也高校は意外と、部活も発展していて、いろんな部活が存在する。

その数は実に、このへんの高校では、トップを誇っているらしい。だから、文化系の部活の教室も結構多く存在する。

そういえば、生徒手帳に部活設立について、いろいろ書いてあったな。後で見ておくか。

そんなことより、その元文芸部室は東棟の最上階の3階に位置する。今は使われていない部屋である。

西棟から東棟に行くには、まず、1階まで降りてから中央渡り廊下を渡らなくてはならない。中央棟はそのままつっきれるようになっている。そこから、東棟に入り3階に向かうのだが、ここからがまた大変。

一旦中央階段を2階に上がってから校舎の北側まで行き、そこの階段を登らなければならない。そしてやっとついた東棟3階。そこの突き当たりが元文芸部室である。

取り敢えず、その教室の前までやってきた。気がつくと、さっきまで俺と一緒についてきていたはずの、大輝が居なくなっていた。どこいった?

なぜその時に、不思議に思わなかったんだろう。まぁ今更言っても後の祭りかな。俺は、あまりそのことについては、深く考えなかった。

どうせ、大輝のやつ。女子としゃべるのが急に恥ずかしくなって、一人で逃げやがったんだろう。

とか、俺はひとり妄想に入り浸っていた。

その教室の入口に立つ。

一旦、深呼吸。すーはー。よし。

「こんこん」

一応ノックをする。返事はない。当たり前だな。

そして俺はなんの身構えもなく、その教室のドアをあけた。あけてしまった。その瞬間から、俺たちの物語が始まってしまった。




俺はびっくりした。何がびっくりしたかって。そりゃあもう、誰もいないと思っていた教室に、一人いたからだ。

しかも普通のやつじゃない。ましてや、男子でもなかった。

女子だ。それに、あの雪風さんに対抗できるほどの、美人だった。

唖然、吃驚、二の句も告げられない。俺は、何も言えずに、入口でつっ立っていた。

女は、本を読んでいたらしく、自分の手元に顔も視線も送っている。

俺が入ってきたことに気がついたらしく、ふと顔をあげた。

と、顔をあげたと思うなり、

「あなたが、赤丸勇樹と言う人かしら。あなた、雪風さんになんて言われたか知らないけれど、少しでも彼女に変なことしたら、私が許さないわよ。」

などと、訳のわからないことを言っている。

なんだよ急に、自己紹介もなしかよ。そう思った。

彼女は、座っていた椅子を少し後ろに引きずって、すっと立ち上がった。いすの足が床をこする音がすると思ったが意外としなかった。

が、そんなことはちっとも、気にならなかった。

そいつが立ち上がった時、俺はびっくりした。なんと、俺よりも身長が高いではないか。む。なんか、見下されてるかんがあるんだが俺の気のせいか。

いや違う。これは本当に、見下しているんだ。コイツは。初対面にもかかわらず。

余程、俺がアホ顔をしていない限り、出ることがなかったであろう言葉をこいつは言った。

「あなた、なんてアホずらなの。あなたのような、なんの脳もないような、普通の人間が、雪風さんのお近づきになれるとでも?少しは、自分の頭の心配をしてはいかがかしら。」

「は?」これは俺の声。もちろんのこと疑問形だ。

しばらく、こいつが一人語りを適当に聞き流している頃、コイツは何に気がついたのか、ハッとしたような顔をした。そして俺の顔を見た。なんだよ。

「まぁいいでしょう。とにかく、あなた、そのアホズラをどうにかしなさい。わたしは、あなたのようなあほずらをみたくなんかないのよ。」

これまたビックリ。そして、おれは悟った。

コイツはほおっておけば、地球が滅亡しようが、宇宙人が強襲してこようが、天変地異が起きようが、とにかく何がおきようと、自分の思ったことは最後まで言わなければ気がすまないやつだ、と。

「ねぇ、あなた、本当に馬鹿なのね。思ったとおり、見たとおりの男のようね。大輝さんも大変でしょうに。こんなバカと一緒にいるなんて。私には考えられないわ。」呆れたように言う。

勝手に人のことを、バカ呼ばわりするんじゃねぇ。それになぜ大輝のことを知っている。

確かに俺は馬鹿だが、そんな、アホって言われるような顔はしてないと思うぞ。なあ?

そんなに、アホズラ、アホズラというな。おれの、ガラスのハートが割れちまうじゃァねえか。なんてな。

そこまで考えて俺はようやく、一番言っておかなくてはならないことに気がついた。

「ところでだ。お前は一体誰だ?少なくとも、今までの俺の知り合いの中に、お前みたいな、世間知らずな自由人はいなかったと思うぞ。」

当たり前の疑問。絶対、誰だろうとこの場面でこれ以外の疑問が出る奴はいないと思うね。もしいるのであれば、そいつは大層な発想力の持ち主だと、俺は思うね。

「?」

疑問のマーク。いや、言ってはいない。ただ、それがまさにそいつの頭上にあるように見えたもんだから。

は~。ため息。当然だろう。

「もしかして、いや、もしかしなくても、あなた、私が誰なのか気がつかないと言うんじゃないでしょうね。」

もちろん。さっぱりわからん。

「は~。わたし、あなたの頭がこれほどまでに、劣化、老化、退化しているとは思わなかったわ。そう、ごめんなさい。そうね、ではまずは簡単に言いましょうか。」

てっきり、俺は、コイツが自分から自己紹介してくれるのだとばかり思った。しかし、コイツが言ったのは、俺の考えていた事の何百kmも斜め上を、しかも、新幹線並みのスピードで爆走していた。


「私からあなたに言えるのは、ただ一つ。・・・あなた、雪風さんとは仲良くしなさい。絶対にね。」


「これは言わば、命令よ。私からあなたへの、ね。」

は?またしても疑問の声。そろそろ反応するの疲れてきた。

わかった。わかった。

コイツは相変わらず、冷血そのものとも言える目で俺を見ている。なんだその目は。まるで、生きていない死人のような、ゾンビのような目または、それらを見る一般人みたいな目をしている。

そろそろコイツも飽きてきたようだ。のんきにアクビなんかしていやがる。俺も早く帰りたい。なので、手っ取り早く、答えよう。

「1つ、俺はこれからも雪風さんとは仲良くなっていきたいと思っている。」

「2つ、お前に言われる筋合いはない。」

「3つ、何がいいたい。おまえの、その行動自体が意味不明である。」

どうだ、丁寧に三つも答えてやったぞ。

なのに、

「あら。きちんと返事をくれるの。素晴らしいわね。あなたは何と言う暇人なんでしょう。とても面白い大喜利だわ。もう、お腹が痛くなってしまいそうよ。そういうの。そういうキャラなのかしら。そうね、ボケとしては、残念だけど、これからでしょうね。」

おまえは、ほんとに何がいいたいんだ?てか何喋ってんの?それホントに日本語?

お前は俺を、芸人か何かと勘違いをしているのではないか?

おれには、お前の喋っている事がさっぱり理解できんぞ。

いや、そんなもんはどうだっていい。さっきから気になっていたんだが、

「雪風さんは?まだなの?おれは、あの人に呼ばれてここにかんだけ。いつまでたっても来ないんですけど。友達の用ってのが長引いているのかな?」

それに友達紹介って、どんな人を紹介してくれるんだろう。俺はもう一度、入口付近を見るために後ろに振り返っていた。


「私よ。」


雪風さんの友達とはどんな人なのだろう?とか、いろいろ、俺の頭の中で、想像力を総動員して、考えているところで、なにかおかしなノイズが入り込んだ気がする。

いやいや。今のはどう聞いたって、いや、どう聞かなくても気のせいだ。そう思いたい。しかし、現実は、そんなに甘くないらしい。

「聞こえなかったのかしら。仕方ないので、もう一度言っておくわ。」

少し間を置いて。

「今日あなたが、ここに呼ばれたのは、雪風さんのはからいよ。」

それは知っている。

「そう。そして、ここであなたは、雪風さんの友達を紹介してもらう予定だった。」

おう。そうだな。

「その友達というのが、私ということよ。どう?理解してもらえたかしら?」

いや。それは無理だ。どう考えても無理だろ。は?お前が、あの雪風さんの?いや、絶対に信じられん。

「おかしいわね。雪風さんは、きちんと説明しておくと言っていたはずなんだけど。」

俺は、そんな時、意識は全く別のところにあった。当たり前だろ。こんな、爆弾発言をきちんと受け止めるなんて、無理ゲーだろ。

などと、おれが現実逃避をしていると、コイツは、

「というわけなんだけど、どうなっているのかしら。きちんとここに来て説明してくれるかしら。雪ちゃん。それに大輝くん。そこのドアに隠れているのは分かっているのよ。」

それと同時に、入口のドアががらっと音を立てて開くのがわかった。俺は、その音のおかげで、我に返ることができた。

恐る恐る、そちらに目線を送る。またまた、ビックリ。思わず目を見開く。

そこには、頭をポリポリかきながら、てへへと笑う可愛げな女の子と、俺が、長い間見続けてきた、仏頂面の男がいた。

「いや~。やっぱり零ちゃんにはかなわないや~。ゴメンネ。騙すようなことしちゃって。こういう偶然の出会いの方が、仲良くなりやすいかなと思って。」



とりあえず、一旦整理しておこう。

まず、さっきここに入ってきたのは、どこからどう見ても、雪風さんと大輝だった。

この俺にこいつを紹介するというのは、二人のサプライズだったらしい。主催は主に雪風さんと思うが。

二人はじつは、最初から、俺たちの会話を聞いていたそうだ。なら早く出てきてくださいよ。

そして、大輝は、もともと、雪風さんやこいつとは知り合いだったらしい。いつ知り合ったんだよ。それまでは教えてくれなかった。



「それじゃあ。遅くなったけど、ゆうくん。紹介するね。この子が、私の親友で今日ゆうくんに紹介する予定だった、同じクラスの中島零子さん。」

どうも。

「零ちゃんは、知っているよね。私の、新しい友達の白井大輝君と赤丸勇樹くんね。」

よろしく。

「それじゃあ。これからもよろしくねみんな。」

なんだかんだ言って、最後は、雪風さんが締めてしまった。可愛いからいいや。



俺のこれからの、高校生活はいろいろと、忙しくなりそうだなとか思いながら、その日の雪風さんと大輝のサプライズ、「ゆうくんと零ちゃんの初対決!」(命名雪風さん)は、

静かに幕を下ろしたのだった。

                ※


「キーーーんこーーーんカーーんこーーん」


ちょっと昔の話をしているうちに、忌々しい物理の授業は終わっていた。


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