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男子高校生のとある学校生活  作者: 彩島 明樹
序章「モノガタリガハジマル」
4/25

「出会いと始まり」雪風さん編 ああ我が天使、雪風さんよ~


それでは、次行ってみよー。次は俺の天使様。あ、いや間違えた。雪風桜花さんとの出会いの物語を紹介する。



俺と彼女の出会いは、この、西野也高等学校入学式のことだった。おれは、例によって、大輝と、校門近くを歩いていた、校門近くは、桜が良く咲いていた。満開だったような。そんななかに、ふと、一際目立つ二人組がいた。まるで、物語からそのまま現れたお姫様のようなそんな印象をうけた。

隣の大輝がなんかいっていたような気もしたが、気にしない気にしない。

その二人組のうちの一つが、彼女、のちに、オレの天使となりうる、雪風桜花さん。そんときは、それだけだった。そんときはね。それも全然興味なかったし。

すると、雪風さんが急にこちらを振り返ったではないか。俺ってなんという幸せ者なんだろう。そもそも、それが、俺と雪風さんの物語が始まるきっかけだったと言えるであろう。

しかし、雪風さんはこちらを見たかと思うと、何に気がついたのか、隣の奴に話しかけられたのかしらんが、顔を赤らめてすっと、前を向いてしまった。それからは、二度として、こちらをふりかえることはなかった。

それからは、色んなことが起こった。

まずは、彼女たちも、今年の新入生、つまり俺たちと同じ学年である。とわかったこと。

クラス発表で、大輝とまた同じクラスであるとわかったこと。

そのクラスに、さっきの、彼女。つまり、雪風さんだ。がいたこと。

残念ながら彼女もさっきのツレと同じクラスだったらしく、そいつと何かを喋っている。

俺たちの担任の名が、今堂久美というらしいこと。

今堂は、すこしかわりもので、入学当時に席替えという、おれ(たち)の席替え時期の最速記録をあっさり塗り替えやがったこと。

そんないろんなことがあった。

なんだかんだ言って、その一日は簡単に終わるはずだった。しかし、終わらなかった。神はよほど、変化が好きなんだろう。


「あの、ゆ・・赤丸・・くん。ちょっと話があるんだけど・・いいかな?」


なぜなら、雪風さんがおれ(たち)の前にやってきたからだ。

それは、俺の最速記録を更新した、あの席替えをした直後のことであった。そのときは、「これから、ちょっとの間は、自由時間だ。皆自由に過ごしてくれ。」とか、俺たちの担任である、今堂が言い残し、我ら1年B組の教室をあとにした、ちょうどその時。

ちなみに、たちっていうのは、言うまでもなく大輝の分である。が、そんときはいなかったが。一応な。もちろん肯定。

俺は、雪風さんに連れられるがままに、西棟一階の東棟とつながる唯一の渡り廊下まで来ていた。

それから、彼女は手をもじもじさせている。可愛い。天使だ。

それから、少しのあいだの記憶がない。なぜなら、雪風さんがしゃべりだしたのと同時くらいから、俺の意識は、そこには無かったからだ。


おれは、よくわからなかった。はっきりいって。雪風さんは俺と同じぐらいの身長で、俺も結構小さいほうだと思う。何か言っていたが、俺の頭にはそんなもんは入らなかった。ただ、ぼーと、彼女の可愛わしい、振る舞いを見ていただけだった。完全に夢の世界に行っていた。と思う。


「ボン」


鈍い音。それがなんなのか。誰によって行われた音だったのか。俺がそれに気がつくには、すこしの、時間を要した。そんだけ、彼女に見入っていたということだ。

「人の話をきちんと聞いてください。あなたは見かけによらず、そんな、デタラメな人だったんですか?あの人が行っていたのはあなたでしょ?あの人から聞いていたのとは全然違いますね。正直、がっかりです。」

そう彼女がいったとき、おれは、初めて気がついた。

まずさっきの、なにか硬いものをけった空手選手のような、プロボクサーがサンドバックを殴ったときのような、鈍い音の正体は、彼女の白くて細々い腕が俺のお腹に直撃したときの音だった。

彼女の声が、まるで声優のような、外見と同じように、可愛らしい声だったこと。

彼女が、怒っているような顔をしていることに気がついたこと。

そして、

痛みもいきなり訪れた・・・


「いったぁぁ!!」


はっきりいって、言わなくても、遅かった。激しすぎる痛みに、おれは、その場に、膝までついてしまった。雪風さんを拝んでいるような。それそれでいいか。雪風さんを唯一神として、新教会のひとつやふたつ作ってやらんこともないぞ。いや、そんな寝言を言っている暇はないようだ。本気でいたくなってきた。

「何を今更言っているのですか。」

激しい痛みをこらえながら、おれは、自分の腹に手を置きながら、顔をあげた。

そこには、また、可愛らしい顔があった。あぁ、雪風さん、怒った顔もまた、可愛いな。と俺は正直に思った。雪風さんは、両手を腰に置きながら、肩をすくめていた。おっと、そうだそうだ。

「ごめんなさい。雪風桜花さん、でよかったですよね。雪風さん、で、おれになんかようだったんですか。」

そこまで言って、俺は気がついた。さっきから、雪風さんが何を言っていたのか。おれは、それを聞いてなかった。はっきりいって。しかし、俺はそれをうっかりも、正直に、彼女に告白してしまった。と。

「勇、勇樹君、あなたってほんとに・・・。」

彼女は案の定、少し顔を歪め肩をすくめた。やめて、綺麗な顔が台無しになる。しかし、それも諦めたかのように、すぐにいつもの雪風さんにもどって、「仕方ありませんね。」といいつつ、こう告げた。とびっきりの笑顔。眩しい。


「簡単に、もう一度、いいます。・・・私は、あなたに、少し興味があります。これからも、私と仲良くしてもらえませんか?」


だった。満足そうな雪風さんの笑顔。それに対する、俺の疑問の顔。

・・・え?・・・は?俺は、一瞬いや、それ以上間が空いてしまったかと思ってしまった。それだけものすごい告白だったからだ。

おれは、きっとものすごく困った恥ずかしい顔をしていたのだろう。彼女はこう付け足した。

「わたし、と、たんに言っても、もう一人、私の友達、零ちゃんって言う人がいます。ああ、零ちゃんっていうのは、あなたと私と、同じクラスの、中島零子さんというひとね。聞いたことあるでしょ?」

すいません。ありません。

「あら、そうなの。結構有名だと思ったんだけどな~。」

入学当日から、有名だとは、その零子とやら、さほどすごい特技やら、外見やらを持ち合わせているのであろうか。

「うん。零ちゃんは、ものすごい美人なんだよ。聞いた話じゃ、今日だけで、3人の人から告白されたらしいよ。」

はぁ?なんだそれは。入学当日に、三人からの告白?なんという、女だ。恐ろしい。そんなやつとはあまり近づきたくないな。話したくもないな。

しかし、こんな、天使のような、雪風さんが、美人と賞賛する人は一体。

「勇、赤丸・・・、勇樹君、ほんとに知らない?朝も私と一緒にいたよ。それに、朝の自己紹介の時も、結構目立ってたと思うけど。」

ごめんなさい。俺は、その時絶賛爆睡中でした。ですので、記憶にはありません。申し訳ない。

「そうなんだ・・・。」ちょっと困ったような顔をしている。

しまった、雪風さんを嫌な顔にさせてしまった。なにか言わなくては。うーん。しかし、いい話題がおもいつかない。

・・・しばしの沈黙。すこしたち、

「あの。」「あの。」かぶった。なんだろめっちゃ嬉しい。そうおもった。なんだろ?わからん。まぁいいや。

雪風さんは、すこし、困惑しているようだった。ので、

「どうぞ。」「どうぞ。」また、かぶった。ので俺はそのまま続けた。

「僕のことは気にしずに、あなたの話を聞かせてください。」

「私のことは気にしずに、あなたの話を聞かせてください。」

またもや、かぶった。もう、これは奇跡だ。そう直感した。そして、おれは、あまりの可笑しさに少し吹いた。それにつられるように、雪風さんも笑ってくれた。あぁーなんて可愛らしいんだろう。このまま箱に詰めて家に持って帰るか、フィギア化して部屋に飾っておきたい。なんて。

なので彼女は少し緊張が溶けたみたいで、俺にこう言った。


「あのー。勇樹君。私これからあなたのこと、勇君、って呼んでもいいかな?なんて。えへへ。」


普通の人にはなんてことのない、しかし、俺には、福音のように聞こえた。なんだって?勇くん?勇樹君、じゃなくて?ニックネームってやつ?俺には?何と言う幸せー。と、こころおどったほどだった。

おれは、「どうぞ。こちらこそお願いします。そんなの、願ったり叶ったりですよ。これからもよろしくおねがいします。雪風さん!」

そんな俺の言葉を聞いて、彼女はなにか思いついたように、

「そのかわり、私の名前は、雪風じゃなくて、雪りんと。」

「それはダメ。」俺は即答してしまった。何故か反射的にそう言ってしまった。なぜだろ?しかし、たしかに、雪りんは、ちょっと。

「そう、だよね。冗談冗談。じゃあ、」と、少しあいだをあけて

「ゆきちん。」

「だめ。」またもや即答。

「雪丸」

「ダメです。」あなたの価値が下がります。

「雪風」

「まんまです。」じゃあ、変える必要ないじゃん。

「んー、じゃあ、スノー・ストーム」

「却下です。」なぜ英語に?

「略して、 スノスト。」

「意味不明です。」

「ゆうくん、注文多い~、これ一応私が今まで言われてきたニックネームなんだけどー。」

そいつら、ネーミングセンスなさすぎだろ!!と、本気で突っ込みたくなる。そいつらはきっと、相当、雪風さんに恨みがあるのか。それとも、この人が天然なのか。

「ニックネームは、みんな私の大切な、たくさんの友達が付けてくれたものだよ?」

あぁ。なんという。それは完全に、雪風さんがそいつらに遊ばれてるだけじゃないですか。大丈夫です。もう安心です。俺がついてますから。そんなやつら、もうこれ以上、指一本触れさせやしません。俺が、雪風さんを、悪の手から守ってあげます。

「え~、でも~。よくその友達と遊んでいるんですけど~。それはそうなるのでしょうか~?でもでも、ゆうくんのその心遣いだけ、もらっておきます。ありがとう。」

正直グッとくる。やばい。嬉しすぎて、涙が・・・。

「もう、ゆうくんったらー。」

雪風さんは、空気を両頬にいれて、膨らませ、ただをこねた子供のようになっていた。はー、なにしても可愛いよ。雪風さん。

「なんか、もうこう、普通のないんですか。俺みたいな、外見普通、中身普通の、男子が呼んでも不思議じゃない、怪しまれないような名前。」

こういうしかなかった。結構無茶な条件だってことはわかってる。だけど、それ以外に何がある。それに、そもそも、呼び方を変える必要はあるのかと俺は思った。普通に「雪風さん」、で良くないのか。なぁ、

「ダメです。わたしだけ、ゆうくんって呼んで、ゆうくんは、私のことを雪風って呼ぶのは、不公平だよ。理不尽だよ。私は、ゆうくんともっと仲良くなりたいの。」

不公平はわからなくもないが、理不尽は違うような。それに、おれは、雪風さんに、ニックネームで呼ばれるだけで、幸せですから。それ以上のことを望んだら、後でどんな天罰が下るか。

おれの、呼ばれ方を考えながら、「うーん」とか、「あーん」とか、言っている雪風さんの考える声が聞こえていたが、俺が質問したら、なんでもないように答えてくれた。

いやなんでもないことはないだろ。俺にとっては大問題だ。大事件だ。

そんなに、俺のことを思ってくれていたのか。ならば、おれが・・・

「ユッキー!!」

おれが、頭の中で一人会議を始めようとした時だった。雪風さんが、そう大きな声で言った。いい感じのソプラノ声だった。

ところで、

「へ?」またもや、クエスチョンマークが俺の頭の上に浮かんだ。

「だから、ゆうくんは、私のことを、ユッキーって呼んで。これは、絶対だからね。」

ぜったいと強制されてしまった。これは、乗るべきものだろ。逆に乗らなかったら、きっとおれは、これから三年間を無駄に過ごしていくのだろうと、そう直感した。だから、あえてきいておく。

「ほんとにいいんですか。おれなんかが、学年トップを争うような、男子の「この子が気になるランキング」堂々のチャンピオンになりそうな、雪風さんを、俺なんかのthe・普通人のthe・ヘタレがあなた様をニックネームなんかで呼んでも。」

できるのであればそうしてもらいたい。しかし、そこは一度引いておかないと。俺的には、雪風さんを神とした宗教団体を作って、その、信者として一生を捧げてもいいのだから。そっちの方がよっぽど楽しそうなんだけど。ま、そうわいかないわけだが。

「そんなことはないよ。ゆうくんは、見た目は、普通でも、少なくともわたしには、そんな風には見えないよ。ゆうくんは、全然普通じゃないとおもうよ。だから、私はいいの。」なんて。

それはまるで、宝くじが当たるよりも、テストでいい点数をとった時よりも、その何百倍も嬉しかった。もう、死んでもいいと初めておもった。いい意味で。ほんと。

「だめ、かな?」

可愛く聞いてくる。でめだ、その視線は、チートに値する。

「全然いいですよ。こちらとしては、ものすごく、光栄なことなので、こちらこそ宜しくお願いします。俺、もう死んでもいいとか本気で思ったりしてしまいました。」

雪風さんは、微笑みながら「んふふ。ゆう君たら、大げさだよ。」とニコッり笑顔で、もう一度笑った。

もしかして、ツボにはまった?

「それじゃあ、これからもよろしくね。ゆうくん。」雪風さんはにこやかに笑った。まるでひまわりのように。ああ眩しい。そして、ぺこりと一礼。

「こちらこそ、よろしくお願いします。ゆっきー。、、、ちょっと恥ずかしいですね。でも、ユッキィ。」

まぁそんなことは気にしない。いずれなれるだろう。

「そのうちなれるよ。きっと。」なんて、雪風さんはいうけど。

まぁいいや。あんまり今から考えることでもないか。なんて、そんときのおれは、思ってしまった。全くしょうがねぇやつだな。自分にいうのともなんだがな。笑。

そういえばと言わんばかりに雪風さんが俺に質問してきた。

「さっき、ゆうくんも私に何か言うことがあつたんじゃないの?」残念ながら、雪風さんの笑いは終わってしまったようだ。

と。忘れていた。そうだ。・・・あれ?なんだって?忘れてしまった。あまり大したことではなかったんであろう。そのうち思い出すだろう。そう、そのうち。

取り敢えずその時は、ふと思ったことを聞いた。それがまた、問題を起こす重大な言葉だとは、そんとき俺は気づかなかった。というより、知る由もなかった。


「さっき言ってた、あの人っていうのは?君の友達の人?でも僕のことを聞いていたってことは、その人じゃないよね?」


って。その時、彼女は下を見ていた。なぜだ?

そのとき、彼女が自発的に下を見て、おれに、自分の顔を見られまいとしていたということに、おれは、のちのち知らされるのであった。

と、

「きーん、こーん、かーん、こーん、」予鈴が鳴った。

この学校は授業が始まる五分前ぐらいに予鈴が鳴るらしい。

それを聞いて気がついた。おれたちは、結構のあいだ、廊下で立ち話をしていたようだったことに。そろそろ戻らないと、今堂に怒られる~。

彼女は、ふと顔をあげて、「それじゃぁ、予鈴もなっことだし、教室戻ろっか。」

いいながら、雪風さんは、おれに、背中を見せててくてくと歩いいってしまった。角を曲がったと思ったら、すぐに、ひょいっと、首だけを出して、俺を呼んだ。

「おーい。ゆうくーーん。」

おれは、また、立ち止まっていたようだ。

「うん!今行く~!」

俺は、木の根っこのように地面に張り付いたような足を、一歩前へ進めたのだった。




これが、俺と雪風さんとの初めての出会い。なんて、偶然だろう。僕は少しほっとした。世界もまだまだ捨てたもんじゃないと。

それにしてもなんて、親しげに話していたんだろう。これでも、おれ、かなりのコミュ障なのに、しかも相手が女子なのに、おれに、その日が初対面だってのに、やけにしたしく。ほんとだよ。僕と彼女は今日初めてこの場所であった。それだけなの。

なんかいろいろと、無意識的に無視している点もあるが、それは、これまでどおり、無視しようじゃないか。うん、我ながらいいアイデアだ。

今度、大輝に、聞いてみるか。まぁどうせ、返事はわかっているんだけど・・・

あ!そうだ!忘れてたんだけど、俺が雪風さんのことを「ゆっきー」と呼んだのは、その日のその時の一回のみだった。

なぜなら、あの忌々しい女が、「あなたにそのような無粋な呼び方でゆきちゃんを呼んでいると、ゆきちゃんが悪くなてしまうわ。今すぐやめなさい。」と淡々と俺に空手の固め技を使いながら決めてくるという放課後がそののちにあったからだ。

雪風さんは「無粋な名前・・・。(ショボーン)べ、別に変じゃないもん。普通に可愛いもん」とか言いながらあからさまにさっきコイツが言った「無粋」という言葉に反応しているようで手をモジモジしながら、しゃがんでショボーンとしていた。それはそれでまた可愛い雪風さんであった。


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