無題
正義であれ。
子供の頃から呪詛の様に繰り返し言われ続けたその言葉に従い、私は『正義』を実行し続けた。
人を殺めた悪党に相応しい苦痛と死を与え、偽りの言葉で人を欺いた者から舌と言葉を奪った。
多勢で1人を嬲った卑怯者達の名と顔を衆目に晒し、二度と日の下を歩けない様にした。私腹を肥やす為に袖の下を求め続けた者には、その財産の全てを灰に還す裁きを与えた。
そうして裁く事を、私は当然と考えていた。世間が悪と評する存在を裁く事こそ、正義に他ならないのだから。
だが世間は、そんな私の行いを悪と断じた。史上稀に見る悪とまで語る者さえいた。
何故なんだ……。
その呟きが、私が最後に発した言葉だった。