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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

追放された俺、服を脱ぐと最強でした~無衣の獣は今日も勘違いされる~

作者: 鶏ニンジャ
掲載日:2026/04/07

「レオナルド・ライカン! 貴様をこのギルドから追放する!」


目の前のギルドマスター殿が、私にそう宣言する。


周りのメンバーもなにも言わないどころか、静かに頷いていた。


「いや、待って欲しい。いきなり追放とはどういうことだ。私はなにも悪いことなどしていないと思うが?」

「いきなりもなにも、自分の姿を見てみろ!」

「そんなことを言われても……」


自分の姿を見下ろす。

厚手のコートをしっかりと着込んだ、冒険者スタイルだ。

なにもおかしなところはない。


「なにも問題はないだろう?」

「馬鹿野郎! その下だ下!」


言われるがまま、コートの前を開ける。

どんな場所でも歩けるようにと買った、上等な革のブーツ。

そして、街でも一番の上等なアンダーウェア。


「なにか問題でも? 腰から下の最低限はしっかりと隠している」

「隠れてねぇんだよ!」


ギルドマスター殿の顔が真っ赤に染まる。

そこまで怒るようなことだろうか?


「いや、しかし、戦士が最高のコンディションを保つのは当然ではないだろうか? この服装でも、世間に合わせて配慮はしているのだが……」

「なにが配慮だ! その姿のせいでうちがなんて呼ばれてるのか知ってんのか?」

「いや……」

「露出狂のいる変態ギルドって呼ばれてるんだぞ!」


マスター殿は、まるで茹でダコのように怒り狂っている。


「いや、しかし、私はこのギルドで英雄として羽ばたこうと……」

「うるせぇ! てめぇが羽ばたく前にうちの信用がガタ落ちだ! 出ていかねぇならここでたた斬ってやる!!」


マスター殿は今にも武器を抜き、私に切りかかろうとする。

このままでは分が悪い。


こうなったら――。


「仕方ない……獣の神、ヴォルレオンよ。私に加護を」


私はコートを脱ぎ捨てる。

完全ではないが、今はこれでも十分だろう。

なにより、なけなしの金で買ったコートがぼろぼろになるのは困る。


「くらえぇ!」


ギルドマスター殿の鋭い斬撃が迫る。

さすがは元・街一番の冒険者だ。引退していても実力は衰えていない。


だが――。


「ふんっ!」


私は、鍛え抜かれた大胸筋で剣を受け止める。


ガキンっ!


鈍い金属音が響き、ギルドマスター殿の剣が弾かれる。


「クソッ!!」


怒りに任せた連続斬撃。

だが、この姿の私には意味がない。


ガンッ! ガンッ! ガンッ!


永遠とも思える連撃の後、マスター殿の剣は盛大に折れてしまった。


「はぁはぁ……てめぇ。いい加減にしろよ」


息を切らせながら、マスター殿は私を睨みつける。

周りを見渡しても、私をかばおうとする者はいない。

完全な四面楚歌。味方など一人もいないらしい。


「……仕方ない」


こうなってはもう、選択肢は一つしかない。


「わかった……今まで世話になった……」


私は一言だけ残し、コートを羽織る。

そして、そのままギルドを後にした。


「ふぅ……どうしたものか……」


透き通るような青空を見上げる。

困った。非常に困った。

ギルドから追放されたということは、寝泊まりする宿もなくなるということだ。


手持ちの金はある。

だが、宿屋に泊まればすぐになくなってしまうだろう。


「仕方ない。こうなれば依頼を受けて稼ぐしかない。これも英雄になるための試練だ」


私は一人頷き、決意とともに歩きはじめる。


だが――。


「見つけましたよ。『無衣の獣』レオナルド・ライカン」


鋭く、凛とした女の声。

振り向くと、そこには白銀の鎧を着た女が立っていた。


金髪の長いポニーテールに、キリッとした目鼻立ち。

メガネを掛けた、かなりの美人だ。


「わたくしの名は王国聖騎士団所属、ベルナデット・フォン・アーデルハイド。あなたを逮捕いたします」


   ***


ベルナデットは冷ややかな目で、向かいの席に座る男を見た。


「……これは一体どういうことだ?」

「なんど同じことを言わせる気ですか? あなたが各地で卑猥な格好でうろついていると、報告が上がっているのです」

「いや、しかし、それは私の戦いでの正装なんだ。誰にも迷惑を掛けてはいないだろう?」

「黙りなさい。獣の神などという邪教の信奉者と語り合う舌は、持ち合わせていません」


彼女はメガネをくいっと上げながら、レオナルドをじっと見つめる。


レオナルドは着慣れない服を着せられ、手足を縛られているせいか、もぞもぞと居心地が悪そうに動いていた。


(報告書のとおりですね)


彼は布などで体を覆われると、力が出なくなるという話であったが、それは本当のことだったらしい。


(しかし、なぜ、私がこのような任務を……)


ベルナデットは心のなかで、大きなため息を吐く。


王国の聖騎士として必死に戦ってきた自分に与えられた任務。

それが「露出狂の変態の護送」だった。


確かに、邪教の信徒を追うのも聖騎士の役目だ。

だが、こんな辺境の地まで派遣されたという事実は、真面目な彼女にとって苦痛以外の何物でもなかった。


ただ、素直に彼が捕まったのだけは幸いであったが。


「ん? なんですか……」


しばらく馬車に揺られていると、突然、停止した。

次の瞬間、焦げ臭い匂いと煙が車内に立ち込める。


「くっ……!」


彼女はすぐさま馬車から飛び出す。

飛び出すと同時に、乗っていた馬車が炎に包まれた。


「一体どういうことですか!」


普段の冷静な彼女らしくない叫び声が響く。


彼女の周囲を、同じ護送任務を受けた同僚の聖騎士たちが取り囲んでいた。


「あんたはやりすぎたんだよ」

「……騎士団長の差し金ですね」

「ここで死ぬあんたには、どうでもいいことだろ?」


裏切りの聖騎士たちは剣を構える。


ベルナデットも剣と盾を構えた。

一触即発の雰囲気。


彼女は一流の騎士だ。

だが、多勢に無勢。万が一にも勝てる見込みはない。


(せめて……聖騎士として誇り高く戦い抜きましょう)


彼女がそう覚悟した瞬間――馬車が盛大に弾け飛んだ。


全身を火に包まれた男が、そこから姿を現す。


「君たち……多勢に無勢での戦いは、さすがに卑怯ではないかね?」


威風堂々とした声。

その場にいた全員の視線が、男に釘付けになる。


「レオナルド・ライカン! 義によって助太刀する!」


炎が消えると、そこには一糸まとわぬ男。

無衣の獣が、堂々と仁王立ちをしていた。


   ***


燃え盛る馬車を背に、私は彼女たちを見る。


どのような事情があるかはわからない。

だが、四人がかりで一人を襲うこの状況……やるべきことは一つ!


英雄として、ただ戦うのみ!


私は腕を大きく振り上げる。


「獣の神、ヴォルレオンよ! どうかご照覧あれ!」


次の瞬間、私は矢のような速さで敵に接近した。


「どりゃぁぁぁぁぁ!!! 獣王流三十七の必殺技の一つ! 獣王式ワイルドボア・ラリアットぉ!」

「ぐわー!!」


丸太のような腕から、猪の突撃を思わせる会心の一撃を叩き込む。

敵の鎧はひしゃげ、別の聖騎士を巻き込みながら吹っ飛んでいく。


「く、くそぉー!!」

「とぅっ!」

「なっ!」


回避! 跳躍!

月光を背に、私は空高く舞い上がる。


「獣王流三十七の必殺技が一つ! 獣王式イーグル・フライング・ボディアタックぅ!」


上空からの、全体重を乗せた一撃。

体勢を崩した相手になすすべなし!


「ぐへぇ!!」


鷹のような一撃を受けた相手は、地面にめり込んだ。


残りは一人。

私はすぐさま構えを取る。


「くっ、くそ!」


残る一人は逃げようと背を向けた。


「逃さん!」

「な、なにをする!」


相手に向かって突撃し、その体をガッチリと掴む。

そして、強引に逆さまへと抱え上げた。


「獣王流必殺技が一つ!」

「や、やめろぉぉぉぉ!!」

「獣王式、ドラゴン・ブレンバスタァァァァァァ!!!」


脳天から地面に叩きつける。

その体はドラゴンの牙のように、大地へと深々と突き刺さった。


腕を離すと、相手は力なく倒れ込む。

辺りを静寂が包んだ。


私は両腕を大きく振り上げる。


「獣の神、ヴォルレオンよ! この勝利を捧げます!」


全力を尽くした、いい戦いだった。

きっと後世の歴史書にも、英雄レオナルド・ライカンの名前が輝くだろう。


「っと、しまった……お嬢さん。大丈夫かな?」


私はベルナデットと名乗った女性へとゆっくり近づいていく。


彼女は小刻みに震えていた。

無理もない。いくら聖騎士とはいえ、彼女も女性だ。

怖かったのだろう。


こういう時こそ、英雄としての包容力を見せるべきだな。


「さあ、もうなにも心配はいらない。私の胸に飛び込んできたまえ」


彼女の前で大きく手を広げ、受け止めようとする。


「こ……」

「こ?」

「この変質者ぁぁぁぁぁ!!!」


彼女の盾が、私の下半身に叩きつけられた。


予想外の一撃。回避などできるはずもない。


「ごふっ!!」


強烈な痛みに襲われ、私は崩れ落ちる。


英雄を目指すというのは、かくも過酷な道だとは……。

私はそのまま、意識を失ってしまった。


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