エンディング
【星雲の狭間】を背にして、ぼくらを乗せたボロボロのキャンピングカーが走り出した。
窓ガラスはヒビ割れ、車体はボコボコになり、屋根には氷柱が刺さってる。
ガタガタと不吉な音を上げながら進む姿は満身創痍のボクサーみたいだ。
車の中は風が吹き遊び凍える様に寒いのに、パパのテンションは天井知らずに上がってる。
「ガッハッハ!まだまだ走るぞこの子は!」
「頑張って走って!ママ、歩いて帰るの嫌よ。」
「パパ、車から変な音聞こえるよ。」
「ガッハッハ!大丈夫だ。それはただの魂の雄叫びだぁーー!この車はなぁ、魂で走るんだ!!」
白雪は全てが初めてなのか、ぼくに掴まりながらあっちを向いてはキョロキョロ、こっちを向いてはキョロキョロしてる。いちいち反応が可愛らしい。
「白雪ちゃん、はいこれアイスノン。冷たくて気持ち良いわよ。」
ママは白雪に次々とアイスノンを渡して、体中アイスノンまみれにしていく。
「冷たくて気持ち良い。」
「きゃー嬉しい。白雪ちゃんは冷たいの好き?」
「うん。」
「ママ、ぼくにもちょうだいよ。白雪と一緒が良いよ。」
「福大はダメ。冷やしすぎは体に毒なんだから。お腹壊しちゃうわよ。」
「そんな事、今まで言われた事ないのに。」
「福大、熱くなれ。熱くなって白雪のハートを溶かすんだ。」
「ハートって射抜くんじゃないの?溶かしていいの?」
「ガッハッハ、そんな細かい事気にするな。白雪ちゃんに嫌われるぞ。」
「え!白雪は細かい男嫌いなの?」
「嫌いよねぇー、白雪ちゃん。」
「・・・嫌い。」
「ぼく、細かくないよ。大雑把で適当なんだよ。」
「・・・それも嫌。」
ガーーン
「ガッハッハ、青春だなぁ。」
パパ適当過ぎるよ。ぼくが白雪に嫌われたらどうすんだよ。それでも、白雪はぼくの袖をそっと摘んで離さない。
「お!そろそろ時間だ。」
そう言ってパパがラジオをつける。
『オルゥーー!アンドゥーー!』
『トーロースゥーーーのーーー』
『ワン!』
『ツーー!』
『モーニング!!スタートだぁーーー!!』
『ワン!』
『ツーー!』
毎度お馴染み、ワンワンと響きのある低く野太い声とツーツーとキャン高いチャラ声が聞こえて来た時
オル『おはようございます集灯町の皆ワン。オル&トロス、兄のオルだワン』
トロス『おっはよーーーん!起きろ集灯町のみんな!!オル&トロス、弟のトロスだツー」
オル『さぁ、オル&トロスのワンツーモーニング!今日も元気にワンワンいくワン』
白雪が体をビクンっと震わせ、服を掴む指に力が入る。
「大丈夫だよ白雪。これは【オル&トロスのワンツーモーニング】ってラジオなんだよ。みんな聞いてる大人気ラジオなんだ。」
トロス『昨日の流れ星最高だったツー!みんな見たツー? オイラは酒飲んで寝たから全然見なかったツー。最低だツー!』
オル『私は見たワン。本当に綺麗な流れ星で感動したワン。集灯山では雪も降った様で、流れ星と雪が降る幻想的な景色を見た人もいたんじゃないかワン?昨日の流れ星を見た人は感想を送って欲しいワン。』
トロス『オイラも感想送るツー。酒飲んで見れなっか悔しさを聞いて欲しいツー。』
オル『それはいらんワン。』
ガブリ!
ギャーア!
オル『それでは今日の1曲目は、sekai no hazinari 【スタースター・ライト・パレード】聞いて下さいワン。」
「白雪、これ星の歌だよ。」
今のぼく達にピッタリの曲だ。
パパが雄叫びを上げながら音痴に歌い始める。
ママは歌詞をまったく覚えていないから、ゴニョゴニョ言いながら雰囲気で歌う。
ぼくは音程を外しながら好き勝手歌う。
白雪はそんなぼく達を見て、不器用に手拍子をしてくれた。もちろん手拍子もちゃんとズレてたけど、そのズレもぼく達にはたまらなく嬉しかった。
「パパ、幸せ?」
「ああ、最高に幸せだ。」
「ママも?」
「うん、最高に幸せ。」
「良かった。ぼくの願い叶ったんだ。白雪、ありがとう。白雪に願い事したら叶ったっんだよ。」
白雪は不思議そうにぼくを見つめている。
「ありがとう白雪。『パパとママがずっとずっと幸せでいられます様にって』願いを叶えてくれて。」
「福大の声、ちゃんと届いたから。」
白雪はぼくの胸に顔を押し当て、耳を真っ赤に熱くしてボソボソと呟いた。
そんな白雪の姿が可愛くて仕方がない。
パパが突然【星に願いを】を歌い出した。大声で下手くそで音痴に歌ってる。
ママも歌い出す。英語の歌詞をゴニョゴニョと適当に歌ってる。
ありがとう白雪。白雪のおかげでパパもママもぼくも幸せになれたんだ。
だから次は白雪の番だ。白雪にも幸せになって欲しいんだ。
「白雪!」
ぼくの顔を覗き込み目をパチクリさせる白雪。
「ぼくが一生幸せにしてあげるね。」
ジーッとぼくを見つめて。
「ぼくと結婚して下さい」
「嫌。」
と、真っ赤な顔した白雪に食い気味に断られたことをぼくは忘れないだろう。
「ガッハッハ!福大、脈アリだぞ。」
ぼく達のキャンピングカーは、1人増えた家族を乗せて、いつもの道を、いつもより少し賑やかに降っていく。
窓の外から見えるのは、ぼく達が住む集灯町。
巨大樹【木の葉】を中心に、東に集灯湾 、西に集灯大森林 、南に集灯町 、北に集灯山 がある集灯地方。
人と妖が共存する、なんの変哲もない、どこにでもある普通の町。
でも今日からは白雪と暮らす特別な町になるんだ。




