第6章:白雪
「ねぇ、君の名前を教えて」
『ない』
「ないの!そうか、名前ないのか。」
真っ白な着物姿で、光に輝く銀色の長い髪、透き通る銀色の眼。 真っ白な白い肌。辺りは雪に覆われ白一色。
「君は雪女なの?」
『分からない。』
可愛い表情を一切変えず、言葉少なに話す君はまるで氷そのものみたいだ。
「そっか。分からないか。」
表情は変わらないけど、ぼくに抱きつく君の姿はとっても可愛らしい。それに
「真っ白な雪みたいで綺麗だね。」
ボンッ!
と、君は顔を赤らめ頬がほんのり色づき湯気を上げる。
君の冷気がふわっと弱まるのを感じる。
「白雪」
『白雪?』
「うん白雪、白雪はどうかな?」
『・・・うん。貴方が決めてくれるなら。」
「決まりだ。君は今日から白雪。」
『・・白雪。』
「そう白雪。素敵な名前でしょう。」
『うん。素敵・・・嬉しい。」
顔を真っ赤にして喜ぶ白雪は本当に可愛い。
「初めまして白雪。ぼくは福大。千葉福大です。」
『福大?』
「うん、福大。千葉福大。」
『福大、福大、福大。』
白雪はぼくの体にギュッと抱きついたまま名前を連呼している。
可愛い過ぎる。
思わず顔が熱って胸がドキドキしてくる。
白雪を見てるだけで心臓のドクンドクンって大きな音を立ててるのが分かる。
そうだ、ずっと一緒って決めたんだ。 1人にさせないって決めたんだ。 白雪と約束したんだ。
「白雪!」
だから
『なに?』
だから
「白雪!!」
『?』
「ぼくと結婚して下さい。」
『・・・嫌。』
白雪の耳が赤くなり、服をギュッと掴んでいる事にぼくは気付く事はなかった。
こうしてぼくは1日で2度死んだ。
「はっはっは、振られたな。」
事実を受け止めきれず、真っ白に燃え尽きたぼくを見て大笑いしてるパパがうるさい。
パパの大笑いはいつもうるさいんだよ。
白雪もぼくの後ろに隠れちゃったじゃないか。
「まぁ心配すんな。恋愛経験豊富なパパの見立てだと脈アリだ。」
「本当!?」
「ああ、本当だ。」
「パパ、恋愛経験豊富なの?どれくらい?」
「もちろんママ一筋だ。」
「それって豊富って言わないんじゃない?」
ハックション
寒い。凄く寒い。
「福大、寒いのか?。」
「凄く寒いよ。パパ入れて。」
ぼくは白雪と一緒にパパのジャンバーの中に体を潜り込ませた。
「パパの中、暖かい」
「福大、体が冷たいぞ。冷え切ってるじゃないか。白雪もキンキンに冷えてるぞ。」
「福大寒いの?熱くないの?」
パパとママが驚いてぼくの体をペタペタ触ってくる。
「止めてよ。こんな雪の中で薄着でいたら寒くて当たり前だろう。」
「でも福大・・・お前いつも。」
「そう言えば、熱くない。ぼくの体熱くない。白雪、ぼく熱くないよ。ぼく・・・こんなに寒いの初めてだ。」
白雪は黙ったままだ。 ママが白雪に近づいて白雪の眼を見つめる。
「貴方が福大を助けてくれたの?」
白雪がぼくの胸に顔を埋めながら、チラリとママの眼を見つめ返して、ゆっくりと頷く。
ガバッ
ママが白雪をギュッと抱きしめて涙を流して泣いた。
「ありがとう。本当にありがとう。」
ビックリする白雪を抱きしめたまま、大きな声で泣きながら、ありがとうを繰り返している。
パパも白雪をギュッと抱きしめて泣いている。みっともないぐらい、わんわん泣くパパ。
そんなに泣かないでよ。ぼくまで・・・泣いちゃうよ。ぼくも2人に負けないくらい大声で泣いていた。
泣いてるぼくらを不思議そうに見ている白雪だけど、少しだけ微笑んでいたのをぼくは見逃さなかった。
本当に白雪は可愛い。
朝日に照らされた銀世界はとても寒いけど、抱き合ってるぼくたちはポカポカに暖かかった。
「ガッハッハ、帰るぞ。」
「帰ろうか。」
「パパ、ママ。」
ぼくは白雪を抱きしめながら2人を見つめる。
「ガッハッハ、もちろん白雪と一緒にだ。」
「当たり前でしょう。白雪ちゃん、一緒に帰りましょう。」
「パパママありがとう。白雪、一緒に帰ろう。ぼく達の家に。」
白雪はキョトンとした表情のままコクリと頷いた。




