第5章:光の繭
光の中にぼくはいる。
『死んだの?』
君の声が胸に直接響く。
うん。
ぼくの声はずっと遠くから微かに聞こえるぐらい小さい。
君の声は聞こえるけど姿は見えない。 光が眩しすぎてぼく自身も見えない。
『一緒にいてくれないの?』
ごめん
光の中。
君を抱きしめてるみたいで、 君に抱きしめられてるみたいで、 君とぼくが混ざってるみたいで。
『また一人になっちゃうの?』
うん。
光の中。
君とぼくは一緒に流れる。 冷たい光が温かい光に溶け、白い光と赤い光が混ざり合いぼくたちの意識は一つになって流れる。
流れ、広がり、沈み、舞い散り、降り積り、溶け合い、固まり、砕け、混ざり、また一つになり、バラバラになり、再び合わさり、流される。
『一人は嫌』
うん。
光の全てがぼくで 光の全てが君だ。 ぼくと君は一つだ。
『ずっと一緒にいて』
うん。
君とぼくの光が世界を飲み込み、ゆっくりと小さくなる。
小さく小さく、誰よりも何よりも小さく小さく。 これ以上小さくなれないくらい、小さく小さく、小さくなったぼくたちは。
2人に分かれた。
光の中、ぼく達の鼓動だけしか聞こえてこない。
ぼくの鼓動が君の鼓動と重なって心地良い音楽となって世界を満たす。
光、輝き、美しいメロディを奏でる世界。
ぼく達はその無限とも思える世界の中で、再び混ざり、再び分かれ、再び混ざり合い、永遠と刹那を繰り返す。
幾星霜の時を超えて光に亀裂が入る。小さかった亀裂は時を重ねるたびに大きく広くなる。そして光がふたつに割れた時、外の世界が目の前に広がった。
君とぼくは2人に分かれお互いを抱きしめている。
そうか戻ってきたんだ。
ぼくたち戻って来たんだね。
隣にいる君はぼくに抱きついたままだ。 どうやら光の繭の中にいたみたいだ。
外に出ると繭は泡の様に消えていく。
太陽が眩しい、それに暖かい。朝日がぼく達を暖かく照らしてるんだ。
光の繭の中から出たぼく達に向かってパパとママが駆け寄ってきた。
「福大・・・福大・・・!」
パパもママも声が震えて、掠れて、途切れながらも、ぼくの名前だけは、はっきりと呼んでる。
「痛いよ。」
パパとママが抱きしめてくる。声にならない声をあげて泣くパパとママ。
パパの手が震えてる。もう絶対に離さない。どこにも行かせない。そんな気持ちが伝わってくる。ありがとうパパ。
ママの声が掠れてる。何度も何度もぼくの名前を呼んでくれたんだね。また福大って呼べる事が嬉しいんだね。パパの喜びが伝わってくるよ。ありがとうママ。
2人の温もりが冷たくなったぼくの体を温めてくれる。
君はそんなパパとママを見ても、ぼくに抱きついたままだ。君の指がぼくの服をギュッと掴んでるのがとっても可愛い。可愛い顔したまま表情ひとつ変えない君。
でも、分かるよ。
君もパパとママに抱きしめられて嬉しいんだよね。
大丈夫、君からもちゃんと伝わってくるから。
朝日に照らされたぼく達の影が一つに重なっていた。




