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憧れの元ヤンギャルママ(30)が可愛すぎる  作者: ナカジマ
第3章 家族という関係
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第97話 やるべき事だったから

 バタバタと過ごしている内に時は流れ、新年を迎えて2月に入った。そして迎えた12日、再び訪れたリサ姉の誕生日。

 平日だったが有給を取得し、リサ姉と共に懐かしのマリンパークへやって来た。初めて2人でデートをした場所。

 セフレの関係となって、リサ姉が俺を男性扱いし始めてくれた頃の記憶。あの頃は、本当に不思議な関係だった。

 傷の舐め合いをしつつ、何となくお互いに求め合っていた。あの頃はまだ、微妙な関係だったと思う。

 リサ姉もあの頃はまだ、好きと言える程では無かったそう。惹かれてはいたらしいけど。


「何や懐かしいなぁ。ほぼ2年ぶりぐらい?」


「去年は忙しかったからね。次は杏奈ちゃんも連れて来よう」


 今では心因性蕁麻疹が完治した杏奈(あんな)ちゃんだが、ここまで来るのは長かった。完全に症状が消えたのは先月の話だ。

 お陰で連れて行く場所も、気を遣わねばならなかった。トリガーとなる地雷系女子が、なるべく居ない場所である必要があった。

 水着になるプールや海、そもそも来ないであろう山。あとは温泉旅館などを選んで出掛けて来た。

 こう言ったテーマパークは、あまりにも遭遇リスクが高い。去年の内は、杏奈ちゃんを連れては来られなかった。

 受験勉強が本格化する前に、1回ぐらい来られれば良いと思っている。ただ今日ばかりは、2人で過ごさせて貰う。


「あの子もなぁ、もうちょっと落ち着いてくれへんかなぁ?」


「言っている間に高校生だよ? 大丈夫だって」


 自分で言っておいて何だが、もう今年で杏奈ちゃんは中学2年生だ。来年にはもう受験生である。時間の流れは早いな。

 それだけじゃなく、今年からはリサ姉との妊活が始まる。遂に俺達の間にも子供が出来る。まだ少し先の話だけど。

 ただ来週から産婦人科に通い始めて、前準備を整える予定だ。32歳になったリサ姉は、高齢出産に片足を突っ込んでいる。

 妊娠の境目は33歳らしく、不妊治療をしながらでも確率は3割まで落ちる。だが32歳までなら、4割を維持出来る。

 その数字は20代とそう変わらない確率で、確実性は十分にあると言える。後は俺次第だろう。


 精子の検査キットでは、今年に入ってからも問題は無し。ならば残るは、働きながらどれだけ頑張れるかだ。

 後輩もまた4月になれば増えるだろう。仕事を教える立場に回って貰うと、高嶺(たかみね)部長から既に言われている。

 副業も間に挟みつつ、どれだけ回数をこなせるか。全てはそこに掛かっている。俺の体力勝負となって来るだろう。

 だがそれよりも先に、やっておかねばならない事がある。それはリサ姉へのプロポーズだ。

 以前この日に決めると誓い、今日まで準備を進めて来た。有給取得についても、前もって高嶺部長に相談済みだ。


 2月12日がリサ姉の誕生日なのは、言うまでもなく高嶺部長は知っている。全てを口にしなくても、すぐに察してくれた。

 頑張りなさいと背中まで押して貰い、今日という日を迎えた。婚約指輪だって、しっかり買ってある。

 杏奈ちゃんの件もあるから、リサ姉が結婚する気なのは分かっている。今更確認するまでもない事だ。

 でもプロポーズをせずに結婚するのと、した上で結婚するのは違うだろう。やはり筋は通すべきだと思う。

 緊張しながら、リサ姉と懐かしい光景を見て回る。約2年前のGWに、2人で来た初デートのままだ。


「流石にお客さんは減ったね」


「あん時はぎゅうぎゅうやったもんなぁ」


 あの時と同じように、腕を組んで水槽を泳ぐ魚達を見る。当時はリサ姉との密着具合に、かなり意識を持っていかれた。

 まだそんなにリサ姉と肌を重ねておらず、殆ど童貞みたいな反応をしてしまった。実際、あの時は圧倒的な経験不足だった。

 ちょっと初恋のお姉さんに筆おろしをして貰っただけの、女性を知らない男でしかなかった。でも今はもう違う。

 以前のように、リサ姉にリードされねばならない男ではない。胸を張って、リサ姉と共に歩いていける。

 幸せになって欲しいと願うのではなく、俺が幸せにする側へと回った。何もかもが、当時とは違っている。


「懐かしいよね。ここでナンパされてたよね」


 昼食時にリサ姉が、ナンパされた広場へとやって来た。あの男達の見る目だけは確かだったよな。

 リサ姉の大人の魅力を見抜いていたのだから。とはいえ、許すつもりなんて無かったけどね。


「あったなぁ……」


「リサ姉って、ちょいちょいナンパされるよね」


 高嶺部長と行った海でもそうだし、未だに声を掛けられている。見た目だけならまだ、20代後半で通じるしな。

 少しキツそうに見えても、美人である事に変わりはない。今日だって、たまに視線が飛んで来る。

 芸能人だと思われても、不思議ではないオーラがあるからな。本人にそのつもりは無いけれど。

 

「今日はあそこ、行けるんじゃない?」


「え? ああ、アザラシの観られるレストランか? ちょうどエエし行ってみよか」


 前回来た時は人が多過ぎて、入れなかったパーク内のレストラン。アザラシの水槽に囲まれたここの目玉だ。

 2人で行ってみれば、少し並ぶだけで入る事が出来た。入場ゲートを潜ると、周囲には綺麗な水槽が配置されている。

 客席のどこに座っても、アザラシの水槽が見えるようになっている。女性客や家族連れが楽しそうに食事をしていた。

 写真撮影が許可されているので、様々な人達が食事中や食後に写真を撮っている。外国人観光客も居るみたいだ。


「へ~ええやんコレ」


「杏奈ちゃんが喜びそうだね」


 杏奈ちゃんはリサ姉に似て、可愛い動物が好きだ。母娘らしく似ている面は結構多い。違うのは不良生徒ではない事ぐらいか。

 まだ中学生だから、将来ヤンキー化する可能性は残っているけどね。でも今のところは、そうなるとは思えないけど。

 平成のギャルじゃなく、令和のギャルはヤンキーじゃない。ヤンキーはあんまり流行っていないからね。

 多少なりとも居るみたいだけど、杏奈ちゃんはそのタイプではない。ただオシャレなだけの女の子だ。


「料理が来るまで、写真撮ろうや」


「良いよ」


 注文した料理が届くまで、2人で記念撮影をする。それからもリサ姉は、アザラシの写真を撮り続けた。

 相変わらず可愛い人だよな本当に。動物達を前にしたリサ姉は、毎回少女のように喜ぶ。見た目とのギャップが凄い。

 黙っていれば、意思の強そうな平成のギャルなのにな。中身はお茶目で女性らしく、同時に立派な母でもある。

 だから俺は憧れたし、今もこうして愛している。約14年前に出会って、今ではこうして付き合っている。

 目の前で笑っているリサ姉を、俺はこれからも見続ける事が出来る。その為に俺は、リサ姉と結婚をする。


「美味しかったなぁ。また来ようや」


「そうだね」


 昼食を済ませた俺達は、マリンパークを満喫した。一度目と違って、恋人として夕方まで過ごした。

 今でも忘れていない。イルカショーの会場で、リサ姉は俺に杏奈ちゃんとの結婚を勧めた。

 そこで俺は、リサ姉に恋愛対象として見て貰えていないと思った。だけどそれは勘違いで、俺が良く分かっていなかっただけ。

 リサ姉への理解が、あの時は足りていなかった。これからも俺はまた、間違えるかもしれない。

 足りない部分はあるだろう。俺は自分を完璧だなんて思っていない。だけど、それでも俺はリサ姉と共に歩む道を選ぶ。


「ねぇリサ姉。今日はさ、誕生日でしょ?」


「? だからデートなんちゃの?」


 今日ここに来た本当の目的を、リサ姉には教えていない。知っているのは高嶺部長と、杏奈ちゃんだけだ。

 サプライズにする意図も多少はあったけど、それだけが全てではない。出来るだけ自然な形で、伝えたかったから。

 事前に伝えておくと、上手く伝えられないかもしれないから。それだけは避けたくて、こんな形を取った。

 マリンパークの広場にある噴水の前で、俺はポケットに入れていた婚約指輪を手に取る。夕日が周囲を紅く染めている。


「誕生日に俺からお願いがあるんだけどさ。残りのリサ姉の人生を、全部俺にくれないかな?」


「……なっ!? もう……良いに決まっているやんか」


 照れながら笑うリサ姉は、今までの人生で見て来た中で一番可愛い姿だった。

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