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憧れの元ヤンギャルママ(30)が可愛すぎる  作者: ナカジマ
第3章 家族という関係
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第93話 教育の難しさ

 リサ姉と杏奈あんなちゃんの2人と過ごす日々は、忙しいけど凄く充実してもいる。元々仲が良かったのもあるだろう。

 最初から家族同然の関係があったのだから、今更2人と些細な事で揉める理由がない。ただし、俺に立派な父親が出来るかは別の話。

 段階を踏まずに、いきなり思春期の娘は気を遣う。もちろん産まれて間もない頃から知っている。お風呂に入れた事だってある。

 だけどそれはあくまで、良き隣人としての関係性。本物の家族ではないし、勘違いしてはいけない。限りなく近い関係ではあっても、イコールではない。


「杏奈ちゃん、お母さんの気持ちも分かってあげてよ」


「だってさぁ〜」


 喧嘩と呼ぶには些細な諍い。リサ姉の教育奉仕と、杏奈ちゃんの望みがマッチしなかっただけ。具体的にはお金の使い方についてだ。

 元々リサ姉は、少し厳しめな教育をしていた。どちらかと言えば裕福な家庭だからこそ、金銭感覚が狂わないように教えて来た。

 幼い頃からお金の大事さを伝えていたし、無駄遣いの危険さを伝えていた。お小遣いを貯金させていたし、お年玉も全部渡さなかった。

 やろうと思えば高田家では、子供にしては豪遊が出来る家庭だった。高田さんは結構な規模の建設会社を経営していたのを知っている。

 だけどリサ姉は、絶対にそれを良しとしなかった。高田さんが買い与えようとしても、必ず毎回止めていた。何か課題を与えて、クリアしないと駄目だった。

 家の手伝いをするとか、宿題を必ず先にやるとか。貯金を設定額まで貯めないと、使わせないなんてのもあったな。お陰で俺まで無駄遣いをしない大人になったけど。


「学校じゃあ皆が使っているのに」


「本当にそれが理由で欲しいの? 毎日使う?」


 リサ姉に怒られた杏奈ちゃんを連れて、俺達は買い物に出掛けている。土曜日の朝からちょっとしたトラブルだ。どちらの言い分も理解は出来る。

 杏奈ちゃんは、若者向けブランドの香水を欲しがった。瓶のデザインが可愛くて、中高生から高い人気を得ている。

 だから欲しがっても不思議ではない。ただし問題は、毎日使うかと言えば微妙だという事。そう判断したリサ姉の考えは良く分かる。

 今は確かに夏休みの真っ最中だから、毎日香水をつけて出掛けられる。しかし夏休みが終われば、学校が再び始まる。

 そして杏奈ちゃんの通う学校では、香水の使用は校則で禁止されている。学校では必要のないものと扱われるからだ。


「俺もたまにやるからさ、分かるんだよね。買って満足しちゃう事もあるんだ」


「でも匂いって、気になるじゃない?」


 杏奈ちゃんはオシャレな中学生だから、身だしなみを気にするのは分かる。特に今の時代は、男性でも化粧をする時代へと突入している。

 男性のインフルエンサーが、ネット上でメイク講座を配信でやっている。そんな時代なのだから、子供達の美容への意識や興味が高くなるのも分かる。

 それ自体は良い事だと思うけど、やや過剰な面もある。健康を害するまでの細い体を求めたり、本来治療用の薬をダイエット目的で使用したり。

 綺麗でありたいと思うのは理解出来る。女の子が可愛さを追求するのは自然な欲求だろう。全否定する事ではないし、俺もファッションには気を遣っている。


「学校なら制汗スプレーで良いんじゃないかな? そっちは禁止じゃないし」


「……え〜、でもつけて来る子も居るよ?」


 難しい問題だなぁ。確かに俺の時代だってそういう生徒は居た。中学生の時には居なかったけど、高校生になってからは増えた。

 化粧禁止を無視していたり、ピアスをあけていたり。中には金髪に染めていた女子も居た。何より校則と今を生きる10代の認識は少しズレがある。

 ここ最近は随分と緩和されたと聞いたけど、それでも学校は勉強をする所だとする学校が殆どだ。例えば中学校は、スマートフォンの持ち込みは禁止だ。

 そっちは校則というよりも、国の方針だから少し違うけれど。文部科学省が原則禁止と決めている。まあ、俺も杏奈ちゃんと生活を始めるまで知らなかったけど。

 何となく駄目なのは俺の時代でもそうだった。だけど細かい理由までは知らなかった。子供に関する事で知らなかった知識は多い。


「あんまりルールを守らない子を真似ない方が良いよ。何であの子達は許されるの? って思うのは分かるけどね」


 学校は社会ほどルール違反にうるさくはない。だけどこれから進級や進学を続けて行く上で、守らねばならないルールが増えて行く。

 中学からは内申点という、小学校までは意識しないで良かった要素が増える。そして普段の行いが、高校受験に大きく影響する。


「どうして? 香水ぐらい良いじゃん」


「ん〜そうだなぁ。先生の印象が高校受験に影響するからって、言われて分かるかなぁ?」


 まだ杏奈ちゃんは中1だからなぁ。受験をした事がないから、内申書の重要性は理解し辛いかもなぁ。普段の生活態度は成績に直結するんだけど。

 ただ説明が難しいというか、俺は学校の先生ではないし。そもそも先生が説明はしている筈だ。まだピンと来ていないのかな?


「中学からはテストの点数だけじゃなくなるからさ」


「内申点っていうやつ? そんなに変わるの?」


 まあ中学生になったばかりだと、良く分からないよなぁ。俺も昔はあんまり気にしていなかった。

 ただ1つだけ言えるのは、真面目な生徒をやっておく方が良い。悪い意味で目立つと、良い高校に行くのは難しくなる。

 悪目立ちしていた連中で、良い高校や大学に行けているのを見た事が無い。教師からの印象というのは非常に大事だ。


「校則違反は極力しない方がいいよ。何も言わないまま、点数に反映する先生も居るからね」


 今の先生達が、俺の時と同じ顔ぶれかは分からない。ただ黙々と評価を付ける先生が居たのを覚えている。

 内申点の付け方って先生にもよるから、中3になってから足掻いてもどうにもならない。今の内から気をつけた方が安全だ。


「そういうものなの?」


「先生と学校の方針次第だけどね。ただ自由に高校を選びたいなら、危ない橋は渡らない事だね」


 スーパーで食材を買いながら、学校で悪目立ちしない事を勧める。良い意味で目立つのは良いけど、トラブルになりそうな行為はNGだ。

 校則違反は分かり易い内申点を下げる行動だ。重ねていると知らない間に――というのは十分にあり得る。

 遅刻や無断欠席と同様で、余計なところで減点対象になるのは勿体ない。案外ここで引っ掛かる生徒は居るんだよな。

 学校の先生も人間だし、反抗的な生徒より無難に生活している生徒を好む。当たり前の話ではあるんだけどね。


「……うーん、そうなんだ」


「色々とオシャレしたい気持ちは分かるけどね。でも先生が嫌いそうな行為はオススメしないな」


 中学生なのに色気づいて! みたいに思う先生も居るだろうしな。変な目の付けられ方をする可能性は下げるべき。

 メイクもあまり濃くしない方がいいと思う。あくまでナチュラルメイクで留めておく方がいいだろう。

 まあ母親であるリサ姉は……相当ヤンチャをしていたみたいだけどね。高校時代なんて随分と派手だったみたいだから。

 そんな過去があるからこそ、娘である杏奈ちゃんを厳しく育てたのだろうね。反抗的な生徒が、どうなるか知っているから。


「ちなみに運動部の先生とは仲良くしておく方がいいよ。生徒指導部って、大体は体育の先生だし」


「へ~そうなんだ。まだあんまり先生の顔を覚えてないなぁ」


 あまり良い教えではないかもしれないけど、元体育会系の知恵を授けておこう。体育教師の攻略法を。

 まず元気よく挨拶する事、体育教官室の近くを通れる時は通っておく事。接触の回数が多いと、その分覚えられ易くなる。

 毎朝の登校では、校門前で立っている体育の先生に必ず挨拶。昔先輩達から教わった方法だ。

 今も効果があるかは分からないけど、校則違反をするよりは遥かにいい。ちょっとした小ネタを教えながら、杏奈ちゃんと買い物をした。

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