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憧れの元ヤンギャルママ(30)が可愛すぎる  作者: ナカジマ
第3章 家族という関係
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第85話 間島一輝の誕生日

 ウチが一輝(かずき)君と出会ってから、13年がもうすぐ経とうとしている。せやけどその前に、彼の誕生日がやって来る。

 新年度が始まってすぐ、本日4月6日が一輝君の生まれた日。昔から年に1度、お祝いして来たんよな。

 あの頃は少し大人びた男の子やったのに、今ではめっちゃ頼りになる立派な男性へと成長している。

 それこそ気づけば、ウチが惚れてしまうぐらいには。本当にかっこええ男性になってくれた。大人になってからも、一杯助けてくれた。

 例えそれが、初恋の相手やったからとしても。ウチへの好意があっての事なんやから、嬉しいとしか思わない。


 でもホンマに今でも不思議やわ。よう8歳も年上やったウチに、初恋をしてくれたなぁ。大体は同級生とか、学校の先生とかちゃうの?

 隣に住んでいただけの、ウチが対象やなんてな。てっきり姉代わりとして、慕ってくれてたんやと思ってたわ。実際弟みたいやったし。

 もちろん初恋をしてくれたのは、素直に嬉しいと思う。あんなに優しくてエエ子が、ウチを選んでくれていたんやから。

 昔から一輝君の周りには、可愛らしい女の子が一杯居た。活発なタイプの女の子から、結構好かれてたはずなんやけどな。

 実際に一輝君が高校生になったら、彼女が出来てたし。ちょっと遅くないかと、あの頃は思ったけど。中学ぐらいで出来るやろうと思ってた。


 まあでも、お陰でウチが一輝の初めてを貰う事が出来た。それはちょっと嬉しかったな。恋人としては、初めてやないけど。

 今になってみると、少しだけ悔しいと思ってる。どうせやったら、全部の初めてがウチやったら良かったのに。今更言うても仕方ないけど。

 元カノも可愛らしい子やったしな。一輝君が好きになるのも分かるわ。ただ交際の仕方に問題があったのは、ちょっと許せへん。

 もっと一輝君を大切にしてあげて欲しかった。何でも言う事聞いてくれるから、甘えてしまったのも分かるけどや。

 せやけどやっぱりDVはアカンで。もっと良い交際の仕方はあったはずや。だからこそウチは、一輝君を大事にしようと思うてる。


「おお! 凄い、俺の好きな物ばっかりだ」


「一輝君の好きなもんで揃えたんやで」


 一輝君の誕生日、平日やったから1日中サービスは出来ひんかった。その代わりってわけやないけど、ウチの家で精一杯もてなすつもり。

 ウチの誕生日には、ホテルのレストランでのディナーとプレゼントを貰った。ほなウチは、一輝君の誕生日にどうお返ししようか悩んだ。

 結局ウチは、自分で料理を作る方がエエと思った。彼の好きな食べ物を、ウチは全部知っているから。エエ店に行くよりも、エエ食材で作る事にした。

 和風ハンバーグとか肉じゃがとか、料理自体はそこまで珍しくないもんばかり。だけど全部、高級な食材を使って作ってる。

 もちろんホテルのディナーがアカンって事やない。あんなトコ、初めて連れて行ってもろた。彼の気遣いはめっちゃ嬉しかった。


 どうしてもウチは10代で結婚と出産をしたから、世間一般で言うようなデートをあんまりした事がない。育児が優先やったから仕方なかった。

 一輝君はそれを知っていたから、ああして連れて行ってくれたんやろう。ホンマに優しくて、気遣いの出来る大人になったわ。

 再会してからの一輝君は、ずっとウチを大切に扱ってくれた。体だけの関係で終わらせても良かったのに、結婚まで約束してくれた。

 彼は若いんやから、ウチなんて遊び相手にすら普通は選ばない。せやのに真摯に向き合い続けて、告白してくれた。

 恋人になってくれた。だからその感謝をするには、手料理が一番エエと思った。もちろんプレゼントにはちゃんとお金を使っている。


「はいこれ、ウチからの誕生日プレゼント」


「これは……開けていい?」


 一輝君に綺麗な梱包をされた箱を手渡した。プレゼント用の包装を開けると、高級感のある箱が出て来る。中身は店員さんと相談して決めた品。

 中身は2万ちょいの高級なウィスキーや。洋酒が好きな一輝君に、渡すならこれが一番エエかなって。普段は節約してくれているから。

 誕生日プレゼントは金額が全てやない。当然それは分かっているけど、エエもんを渡すのもまた気持ちやと思う。

 それに気持ちやって言うんやったら、手料理の方にめちゃめちゃ込めてあるから。ありがとうって気持ちと、好きやでって気持ちを。


「こ、これは!? グレンキース!?」


「ウチはあんま分からんかってんけど、一輝君ってヨーロッパのお酒好きみたいやし」


 何年ものがどうとかは、ウチには分からんかった。確か20年やったか、それぐらい寝かせてあるヤツ? そんな感じのウィスキーやった。

 洋酒好きにプレゼントするんやったら、オススメやって店員さんが言うてた。スコットランドのお酒やって言うてたな。

 スコットランドがどこにあるんか、ウチはよう知らんけど。有名なウィスキーを売ってる国らしい。ヨーロッパって事しか分からんかった。

 ウチの知識なんてどうでも良くて、一輝君が喜んでくれてたらそんでエエねん。一番大事なんはそこなんやから。

 一輝君が嬉しそうに笑っているから、これでエエねん。誕生日プレゼントって、そういうもんやろ。喜んでくれてホンマに良かった。


「さあさあ! せっかく作ったんやし食べてや。冷めてしまう前に」


「そ、そうだよね。お酒は後にするよ」


 一輝君のために作った料理を一緒に食べながら、2人の夜をウチらは満喫する。いつも一緒やけど、誕生日の夜はまた特別や。

 なんでも記念日は大事やしな。思えば誕生日をちゃんと祝って貰ったのは久しぶりやった。元旦那(アイツ)は、もう何年も祝ってくれてへん。

 相手の誕生日を祝おうとしても、どうでも良さそうやった。もうあの頃から、ウチらは終わっていたんやろうな。

 それでも信じていたけど、結局は裏切られて終わった。そんな数年間を過ごしたウチにとって、一輝君との時間は色々と思い出させてくれる。

 愛し合う関係って、こういう間柄やったわ。お互いを尊重し合って、日々の生活を続けていくもんや。一輝君との間には、それが成立しとる。


「やっぱりリサ姉の料理が一番だよ」


「美味しかった? そんなら良かった」


 彼が笑ってくれているのは、ウチの幸せでもある。いつの間にか失っていた幸せな時間を、一輝君は取り戻してくれた。

 仕方ないと諦めていた男女としての幸福。まだウチを女性として、愛してくれる一輝君。年齢なんて関係ないと、熱心に愛情を向けてくれる。

 まだ夫婦にはなってないけど、一輝君とならエエ家庭を築けると思う。今までにない安心感が、ウチの中で溢れている。

 出産費用が用意出来たら、一輝君と妊活を始める。まさか一輝君と、子供を作るような関係になるなんてなぁ。

 不思議な感覚と、幸せな気持ちが両方ある。まだもう少し先になるけど、言うてる間にその時が来る。なんやちょっと、照れてまうわ。


「リサ姉も一緒に飲まない? せっかくだし」


「エエの? ほんなら貰おうかなぁ」


 プレゼントしたウィスキーを、一輝君と飲む事になった。結構度数が濃いから、だいぶ薄めに割って貰う。それでも結構アルコールが濃い。

 ダウンする程やないけど、体温が上昇しているのが分かる。お酒のせいなんか、一輝君と一緒に居るからか分からへん。

 彼がウチを優しく後ろから抱きしめながら、2人でお酒を飲んでいる。もうここ最近はずっと、夜はこんな感じや。

 大きな体に包まれていると、凄い安心感がある。この人やったら、ずっとウチのそばに居てくれると思える。

 だって彼は、10年以上も前にウチを好きになってくれた人やから。昔からずっと、大切にしてくれた人やから。


「一輝君が居てくれて、ホンマに良かったわ」


「俺だってそうだよ。リサ姉と居られて幸せだ」


 彼の胸板に体重を預けて、ゆっくりと目を閉じる。こうして一輝君に全身で寄りかかれるようになった。その幸せを、ウチはただ噛み締めた。

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