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憧れの元ヤンギャルママ(30)が可愛すぎる  作者: ナカジマ
第3章 家族という関係
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第84話 バレンタインデー

 リサ姉の誕生日から2日後、2月14日はバレンタインデーだ。男性にとっては、色々と人によって思うところのある日だろう。

 幸いにも俺は、早い段階で母親以外の女性からチョコレートを貰えていた。言うまでもなく、リサ姉からの義理チョコだけど。

 そもそも我が家は父子家庭だから、母親から貰う機会なんてなかった。母親は俺に興味が無かったからね。まあどうでもいい話だ。

 リサ姉はバレンタインに、必ずチョコレートを手作りしていた。娘にあげる分と俺の分、それから父さんと元旦那さんの分。

 昔は合計で4人分を作っていた。彩智(さち)と付き合い出してからは、俺の分はなくなった。気を遣ってくれた結果だけど、少し悲しかった。


 他にも何人か、仲の良い女子がくれた事もあったな。まあそんなわけで、多少は貰えていた方だろう。全く貰えないよりは、多少なりとも恵まれた青春時代だ。

 優劣をつけるべきものではないのだけど、一番美味しかったのはリサ姉のチョコだった。料理が上手いのだから当然だろう。

 成人している専業主婦と、未成年の学生が作ったものでは比較にならない。では既製品と比べると、やっぱりリサ姉が勝つ。

 単にチョコレート溶かして型に入れるのではなく、毎回何かしらの工夫をしていた。チョコケーキの時もあったし、チョコ味のマドレーヌだってあった。

 和食とお菓子作りは、リサ姉の得意分野だ。毎年違うチョコ菓子を作ってくれて、杏奈あんなちゃんと一緒に食べていた。


 バレンタイン以外でも、たまにお菓子を作ってくれた。プリンやロールケーキ、クリスマスにはブッシュドノエル。

 結構な頻度で、リサ姉が作るお菓子を食べていた。昔は当たり前の事だったから、有難さを分かっていなかった。

 もちろんバレンタインについては、義理でも嬉しかったけどね。好きな人から貰うチョコなわけだし。そっちは特別感があったさ。

 だけど高校に入って彩智と付き合い始めてからは、食べる頻度が減って有難みを理解した。初恋のお姉さんというだけでなく、純粋に美味しかったから。

 頼めば作ってくれただろうけど、彼女が居るのに別の女性に作って貰うのもな。それは変な話だろうと思って、頼むのは避けていた。


 だけど今はもう、好きなだけ頼んでも良い。リサ姉は今じゃ俺の恋人だ。誰にも配慮する必要なんてない。しかも今日はバレンタインだ。

 最後にリサ姉が作ったお菓子を食べてから、もう6年ほど間が空いている。俺はこの日を楽しみにしていた。リサ姉の誕生日の次ぐらいに。

 今朝一緒に起きてから、一旦俺の家を出てリサ姉は自宅で調理を進めている。俺は朝食の片付けをしてから、リサ姉の家へ向かう予定だ。

 チョコ菓子を作って貰うのだから、朝食は俺が作ったし片付けは俺1人で十分だ。もうすぐそれも終了する。逸る気持ちを抑えながら、食器棚へ食器を片付ける。

 浮かれて皿を割りましたなんて、馬鹿なミスは犯さない。無事に終わらせた俺は、パジャマから私服に着替えて隣の家へ。


「お待たせ」


「そこそこ時間掛かるし、座って待ってて~」


 昨夜に手伝おうかと提案したけど、それじゃあ意味ないやんと言われてしまった。言われてみればそれもそうかと思い、大人しく待つ事に決めた。

 2人でお菓子作りは、またの機会に楽しむとしよう。適当にサブスクで海外ドラマを観ながら、たまに調理中のリサ姉を見る。

 あんまりジッと見ていると、恥ずかしいからやめるように言われてしまう。付き合いたての頃に、何となく見ていたら注意された。

 だって恋人になったリサ姉が、俺のために料理をしてくれているのだ。その姿を見ているだけでも幸せな気分になれる。

 こんな女性が奥さんだったら、昔そう考えていた事が現実になろうというのだ。どうしても気づけば、視線が行ってしまうのは避けられない。


「そう言えばさ~最近診察に来るおばあちゃんがな」


「うん、それで?」


 リサ姉と雑談をしながら、俺はただひたすらに待ち続ける。こうしていると、昔の光景が脳裏に浮かぶ。まだ杏奈ちゃんが小さかった頃の話だ。

 小学校の頃、ドッジボールが流行っていた。放課後に運動場でギリギリまで遊んだ後、家に着いたらランドセルを置いて隣の家へ行く。

 リサ姉に言われるまま、手洗いうがいをしてリビングへ。そうして俺は、リビングのソファに座ってリサ姉へと話しかけるのだ。

 キッチンで夕食の準備を進めている姿を眺めながら。それだけで俺は、幸せを感じていた。凄く楽しい時間だった。

 

 ドッジボールで最後まで残って、熱いバトルになった話。授業中に習った事の話など、色んな事をリサ姉に伝えていた。ただ褒めて貰いたくて。

 凄いやんと言って貰いたくて、俺は毎日のように語りかけていたのを覚えている。あの頃の俺は、無邪気にただ話をしていた。

 始めの頃は手伝える事が少なくて、どちらかと言えば話す方がメインだった。料理を覚えてからは、本格的なサポートを行っていた。

 杏奈(あんな)ちゃんが遊んで欲しがったら、キッチンからリビングへ移動して子守りを手伝った。そんな時間が、確かにあったのだ。


「よし、一旦生地を寝かすわ……どうしたん?」


「いやちょっと、リサ姉に初恋してた頃の事を思い出してた」


 なんやのそれと言いながら、リサ姉は恥ずかしそうに笑っている。本当に可愛い女性だと思う。容姿が整っているという意味ではない。

 もちろんそれもあるけれど、今可愛いと感じたのは動作やリアクションの話だ。笑い方や動き、細かな表情の変化が可愛いのだ。

 付き合うまでは見せていなかった、リサ姉の女性としての魅力。恋人だから見せてくれている特別な姿。その全てが愛おしい。


「そういうところなんだけどな。可愛いと思うの」


「ホンマにもう。一輝(かずき)君だけやで、31の女にそんな事言うの」


 そんな事はないと思うけど、俺以外に可愛いと伝える男が居ても困る。とても複雑な心情というか、些か独占欲が働くというか。

 俺じゃなくてもリサ姉の魅力は分かるだろう。だけど俺だけが知っておきたい事でもある。しかしリサ姉の価値を下げたくはない。

 31歳だからおばさんだなんて、絶対に思わせたくない。だけどリサ姉をおばさんだなんて思う奴に、本当の価値なんて分からなくても良い。

 この気持は最近ずっと心の中にあって、中々消化するのが難しい。なんだっけ? 二律背反? ジレンマ――で良いのか?

 ともかくそういう感じの、ちょっとした悩みがある。多分これは、そう簡単に解決しないだとろうと思っている。


「俺だけで良いでしょ、リサ姉にそんな事言うの」


「そらそうやけどさぁ」


 リサ姉は生地を寝かせるために、2時間ぐらい掛かるという。だったら少し待っていようと、何やかんやでいちゃつく事になった。

 昔の気持ちを思い出していたせいで、普段よりも余計にリサ姉を触れ合っていたくなった。小麦色の肌は、今日も指に吸い付くようだ。

 頬を撫でていると、触り心地が癖になる。かつてはこんな事、決して許されなかった。だけど今は、どれだけ触れても良い。

 満足が行くまで、いつまでも何度でも触れられる。もちろんそれ以上の行為だって、好きなだけ出来るんだ。

 夢中でリサ姉とスキンシップを取っていたら、あっという間に2時間が経過していた。リサ姉は再び服を着てキッチンへ移動。俺も脱いだ服を着る。


「完成までもうちょいやし、ゆっくりしといて」


「わかった。楽しみにしとく」


 また緩やかな時間が始まり、俺はリサ姉と雑談をしながら完成を待つ。それからオーブンの音が鳴るまで、俺達は待ち続けた。

 軽快な音と共に完成したチョコレートタルトは、見るからに美味しそうだった。久しぶりに貰うリサ姉からのバレンタイン。

 昼食の後にデザートとして食べたけれど、やっぱりとても美味しかった。人生で初めて、義理ではなく本命のチョコをリサ姉から貰えた。

 こんなに嬉しい事はないと、しっかり写真に撮っておいた。記念すべきリサ姉との初バレンタインは、思い出に残る1日となった。

元々この話数で書いていたので惜しかったなぁと。1日遅れですがバレンタインエピソードでした。

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