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憧れの元ヤンギャルママ(30)が可愛すぎる  作者: ナカジマ
第3章 家族という関係
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第82話 新年最初の仕事

 無事にリサ姉の家族と話し合えた俺は、新年最初の出勤をしている。長めの連休の後は、どうしても出社するのが億劫だ。

 とはいえ、これも俺とリサ姉の未来の為だ。出来るだけ稼いで、安定した家庭を目指す。出産や育児に掛かる費用は、決して安くない。

 だが東京ほどではないにしても、朝の通勤ラッシュは結構辛い。ぎゅうぎゅうのすし詰め状態で、会社の最寄り駅まで電車に乗って移動。

 これがまた精神的な負担なんだよな。俺はまだ体がデカいから、マシな方だとは思うけれど。体幹にも自信はある。ただ、狭苦しいのは変わらない。

 

 マイカー通勤も認められているけど、どうしようか悩むな。地方で子供を持つなら車は必須だ。妊活よりも前に、1台買った方が良いだろうか?

 産気づいた奥さんを、病院まで乗せていくなんて良くある話だ。持っていないと、色々と苦労するハメになるだろう。

 もしかしたら、父さんやリサ姉の両親に、病院まで送迎を頼むかもしれない。そうなると家に置いておく方が良いし、通勤には使えないな。

 新年を迎えて、色々と考えねばならない事が随分と増えたな。出勤が億劫だなんて考えている場合ではない。

 駅に着くと雪崩のように、乗客が外へと溢れ出ていく。その流れに乗って、俺も車両から降りる。


「あ、高嶺(たかみね)部長! 明けましておめでとうございます」


 どうやら同じ電車に乗っていたらしい高嶺部長を見つけた。新年の挨拶は、メッセージアプリで送っておいた。

 でもこうして顔を合わせてからも、改めて挨拶しておいた方が良いだろう。そこまで細かい事を気にする人ではないけれど。


「あら間島(まじま)君、おはよう。年末年始は理沙りさとゆっくり過ごせた?」


「はい! 先日もリサ姉のご家族に、挨拶して来ました」


 その事を伝えると、高嶺部長は少し驚いていた。リサ姉と両親の間に軋轢があるのは、当然高嶺部長だって知っている。

 何なら俺以上に、詳しく知っている筈だ。学生時代から、付き合いがあったのだから。かつてあった色々な事を、見て来たのだろう。

 リサ姉の妊娠が発覚した時、そして出産を決意した時。様々な光景を、2人で見て来たのだ。知らない事の方が少ないのではないか。

 ただ親友だからと言っても、家族の事にまでは首を突っ込めない。見ている事しか出来なかった事も沢山あったと思う。


「そう……やっと解決したのね。きっと貴方のお陰ね」


「いや、それほど何かは出来ていません。結局決めたのはリサ姉ですし」


 俺はあくまでも、筋を通しただけだ。結婚を目指す以上は、挨拶ぐらいしておくべきだ。大人だからと言っても、無視して良い事じゃない。

 古臭い考え方なのかもしれない。だけど俺は、警察官の父親に育てられた。そういう事の大切さは、何度も教えられて来た。

 だから教えに従っただけに過ぎない。ある意味では、自己満足と言われても仕方がない。ただ俺がそうしたかっただけだ。

 結果的にリサ姉と両親の関係が改善したのは、3人がそれぞれ許し合ったからだ。俺はただ、少しだけ関わっただけの話。

 よその家庭に大きな影響を与えられるほど、俺は大層な人間ではない。体力と腕力が自慢なだけの、単なる体育会系でしかない。頭はそんなに良くない。


「間島君が支えになるから、理沙だって決断出来る。上手くやれているようね」


「そ、そうですかね?」


 新年早々から高嶺部長に褒められた。とても良い滑り出しではないだろうか。この調子で、良い方向に全てが進んで行って欲しい。

 まあそんな事を言っても、中々上手くは行かないだろう。世の中そんなに甘くはない。まずは余計なミスをしないように注意だ。

 いきなりから仕事で失敗をしたくない。高嶺部長と2人で歩きながら、会社へと向かう。途中で西川(にしかわ)中沢(なかざわ)さんも合流した。

 4人で会社のエントランスに入り、エレベーターに乗ってロッカールームへ。西川と雑談しながら、コートをロッカーに入れる。


「間島は休みの間、彼女と過ごしたのか?」


「そうだよ。西川はどうしてたんだ?」


 特筆する程ではない他愛ない会話をしつつ、廊下に出て自分の部署へと向かう。うちの会社では、新年最初の業務は雑用だ。

 まずは自分の部署で、掃除や整理整頓を行う。連休の間に溜まった埃を処理して、年末に捨てきれなかったゴミを捨てる。

 他にも営業部の仕事として、営業車の洗車も含まれている。同期や先輩達と共に、会社のガレージで洗車を始める。

 普段は洗車機でも良いのだが、年末と年始は手洗いなのだ。会社の車を丁寧に扱え、という教えも含めた恒例行事だそう。


「寒いなぁ~。この時期はオッサンにゃ辛いよ」


 40代の先輩が、愚痴をこぼしながら営業車を洗っている。寒い事と年齢は関係あるのだろうか。関節痛とかかな?

 俺も寒さを耐えながら、良く乗っているナンバーの車両を同期と共に洗う。せめてお湯が使えたらなぁ。真冬に水で洗車は地獄だ。

 会社に常備されている洗車用の道具を使って、営業部所属の男性陣で次々と洗っていく。女性陣は書類などの整理をしている。

 そっちは高嶺部長が主導しているので、今この場にはいない。あっちはあっちで大変そうだ。山のように書類があるからな。


「間島~スポンジ取って」


「投げるぞ」


 寒いという点を除けば、少し楽しいと思っている。体育会系の部活で集まって、体育館の大掃除をするみたいで。

 学校によるのだろうけど、俺が通っていた学校は年始によくやっていた。あの頃の雰囲気に少し似ている。

 部活をやっていたという経験は、思っていたより大人になっても役に立つ。こういう時のコミュニケーションとかね。

 ただ面倒な作業として行動するよりも、体育会系が集まった時の空気感でやれた方が幾らかマシだ。遊びとまではいかない絶妙なライン。

 ちょっとしたおふざけが許される感じというか、どうせなら楽しく作業しようって雰囲気かな。俺は昔から嫌いじゃないよこの空気。


「さあお前ら、これが終わったら昼飯だ! 早く終わらせるぞ!」


 ベテランの指示で俺達は残った洗車を思わらせて、ぞろぞろと食堂へと向かう。俺はいつもと同じく、リサ姉のお弁当だ。

 新年最初のお弁当は、カラフルな色どりの栄養バランスに優れたメニューだった。レンジで温めたお弁当は、いつものリサ姉の味だ。

 こう寒いと、味噌汁を入れられるお弁当箱を使いたくなる。営業部の先輩が使っていて、あのタイプも良いなと思っている。

 今はまとめ買いした市販のカップ味噌汁を、別途持参しているけれど。リサ姉と少し、相談してみようかな。


 そんな感じで始まった新年の仕事は、何だかんだしている内に終了した。思ったよりも時間が経つのは早かった。

 早く帰宅して、リサ姉との時間を楽しもう。帰ったらリサ姉がいるという関係も、もう数ヶ月で丸1年が経とうとしている。

 再会したのは4月の中旬ぐらいだった。あの頃の俺には、こんな未来は想像も出来なかった。それがもう随分と慣れたものだ。

 帰宅して着替えて、合鍵でリサ姉の家へ向かう。そこには、夕食を作っているエプロン姿のリサ姉が居る。今日もとても可愛いな。


「ただいまリサ姉」


「お帰り~。もうちょいで出来るから、待っててな」


 リサ姉を手伝いながら、出来た料理をテーブルに並べていく。昔から続く、いつもの食卓。大人になっても変わらなかったもの。

 もちろん変化もあったけど、この光景は昔から変わっていない。台所に立つリサ姉と、その手伝いをする俺。

 これからもずっと、この関係が続いていく。いつかはここに、俺達の子供も加わる。そんな日が、そう遠くない内に訪れる。

 きっと大変だろうし、色々な苦労が待っている。だけど俺達はもう決めているから。何があっても、2人で頑張って行くと。

 今までも出来たのだから、これからも変わらない。新年の始まりは、好調な滑り出しだ。仕事とプライベートの両方が良い感じだ。


「ほな食べよか」


「うん、いただきます」


 今日もリサ姉のご飯が美味しい。こんな日がこれからも続いていく。温かな気持ちに包まれながら、俺達の新しい1年が進み始めた。

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