第67話 男なら一度ぐらいは、ねぇ?
傷を舐め合うセフレから、恋人になってからのリサ姉は、以前ほど影を感じさせなくなった。
不倫からの離婚という悲しみから、半年以上経過したからなのか、それとも別の理由からか。
俺が居るからだとするなら、それ程嬉しい理由はない。ただ自惚れは厳禁だ。俺は一度、失敗しているのだから。
恋愛はとても難しい。真摯に対応したつもりでも、伝わらない気持ちもある。
自分が思っていた誠実さが、必ずしも正解とは限らない。相手がどう感じているかは、しっかりとコミュニケーションを取らないと分からない。
一度の失敗と、新たに得た知識。タイプの違う年上の女性2人から教わった事。
女性の心と接し方を知った今、同じ過ちを犯すつもりはない。知り合って10年以上経つからと、分かったつもりでいる気はない。
言葉にしなければならない事は多い。以前に好意を伝えたからと、放置してはいけないのだ。
好きとか愛しているとか、日常的に伝えないといけない。もちろん人にはよるけれど。
例えば高嶺部長は、男性からの好意を求めてセフレを作っているのではない。
恋人や結婚を必要と考えておらず、好みに合う男性と性欲の解消が出来ればそれで良い。
だけどリサ姉は違う。再婚して家族を持ちたいと考えている。もう一度家庭を築きたいのだ。
娘と離れて暮らしている以上、また自分の子供を欲しいと願っている。
別れてしまった彩智は、どうしたかったのだろう。本来の目指していた未来と、随分とかけ離れてしまった。
少なくとも俺と付き合っていた頃は、27歳ぐらいで出産を考えていた筈だ。
こんな社会人になったばかりで、妊娠など望んでいなかった。だと言うのに、こんな結末となった。
あれから連絡は来ていないが、少しはマシな結果になっていたら良いのだけれど。
何であれ、3人の女性を見るだけでも全然違う。誰が何を望むかは、それぞれ違っている。
だから恋愛の正解なんて、相手に合わせて考えるしかない。それが高嶺部長から教わった事だ。
こうしていれば良い、という行動もある。傾向として、女性が好むベストな対応はある。
しかしそれが、何時でも何処でも通用するわけではない。それが俺の、間違えてしまった要因。
定番の意見ばかりを見てしまっていた。それが彩智にとって、重要かどうかは分からないのに。
初めての恋人だったから、というのは言い訳にならない。無難な対応を選び続けた結果だ。
だからリサ姉を相手に、愚かなミスを犯さない。そう思っていても、失敗はきっとするだろう。
人と人の関係性である以上は、すれ違うのは避けられない。そう例えば、性癖に関する事とか。
俺は興味本位に任せて、とある物をネット通販で購入していた。リサ姉に着て貰おうと思って。
しかし今、全力で拒否をされている。そんなに嫌がられるとは思っていなかった。
金曜日の夜、夕食を済ませていつもの時間を迎えた時に、とあるお願いをしたのだが。
「何でこんなん買ったん!?」
「その……リサ姉に着て欲しくて」
床に置かれているのは、安っぽい作りの制服。実在しない架空のそれっぽい女子高生の。
俺と出会う前のリサ姉が、かつて着ていた衣装。写真でしか見る事の出来ない過去。
だからこそ、着て欲しいなって。絶対に今着ても可愛いと、自信を持って言えるから。
「30歳にもなって、女子高生のコスプレはキツイて!」
「いやでも、リサ姉なら大丈夫だよ」
これまで何度もセックスはしたけど、コスプレをして貰った事はない。
ちょっとしたアクセントと言うか、マンネリ回避じゃないけれど。今までと違う事もしたいなと。
ずっと同じではいけないと、高嶺部長からも教わったし。ちょっと意味は違うかも知れないけど。
ただ刺激にはなると思うんだよな。俺としては、普段より頑張れると思う。
10代だった頃のリサ姉と、致すみたいでテンションは上がる。どうやっても、その頃のリサ姉とは出来なかったわけだし。
「昔のリサ姉も可愛かったから、見てみたいなって」
「……その言い方はズルいんとちゃう?」
どうにかゴリ押しで通せないだろうか。これを通せたら、色々と行けそうな気がする。
チャイナドレスとかも、似合うと思うんだよな。リサ姉はスタイルが良いから、あの手の衣装も似合う筈。
今まであんまりコスプレに興味は無かったけど、リサ姉に着て貰えるとすれば話は変わる。
たまにで良いから、普段しない格好を見てみたい。例えばクリスマスに、ミニスカサンタとか。
「一輝君、案外スケベやない?」
「こんな趣味に開花するとは思わなかったよ」
リサ姉の指摘は全く否定出来ない。その通りでございますとしか言える事はない。
ただ勘違いして欲しくないのは、こんな事をお願いするのはリサ姉だけだ。
高嶺部長にだって、コスプレを頼んだ事はない。滅茶苦茶エロい下着を着ていた事はあったけど。
それだって、高嶺部長が自分からやった事だ。俺が自分から頼んだ事じゃない。
「1回だけ、今夜だけ着てみない?」
「そうは言うてもさぁ……」
女子高生なリサ姉と、エッチな事をしてみたい。一度考えたら、もう抗えなかった。
ちゃんとした制服じゃないけど、そんなのは構わない。あくまで雰囲気だけの問題だ。
しかし着ている衣装の影響は、案外馬鹿にならない要素だ。高嶺部長にそれを理解させられた。
世間一般で言うところの、勝負下着を知ってしまったから。あれはあれで、凄く良かった。
いつかリサ姉も、着てくれないだろうか。そっちは無理でも、チャイナドレスぐらいは見たい。
「そんなに着て欲しいん?」
「是非ともお願いしたい」
今後色んな姿のリサ姉を、見る事が出来るかどうか左右する話。とても大事なイベントである。
恋人になったからこそ、特別な関係でありたいと言うか。要求内容に対して、少々大袈裟かも知れないが。
でもそう変な欲求ではないとも思うんだよな。好きな人の、普段見れない姿を見たいと思うのは。
「…………写真とか残すのは無しやで」
「約束するよ。絶対記録には残さない」
本音を言えば写真を撮りたい。女子高生なリサ姉の姿は、絶対に可愛いのだから。
しかしここで着てくれるというなら、脳裏に刻み込むだけに留めよう。
例え今夜しか、着てくれなかったとしても。そうなっても忘れないように。
リサ姉とのコスプレエッチなんて、最高に決まっている。忘れられる筈がない。
「……今日だけやで」
恥ずかしそうにしながら、リサ姉が了承してくれた。リサ姉が渋々ながら、脱衣所に制服を持って行く。
着替えて出て来るのを待つ時間が、異様に長く感じた。待ち遠しくて仕方ない。
「こ、こんでエエの?」
「……おお、可愛い」
女子高生の制服を着たリサ姉が、目の前に居る。なんて素晴らしい光景だろうか。
昔の制服とは違うとしても、そんなのは些細な問題に過ぎない。女子高生っぽく見えるかが大事だ。
小麦色の肌をしたリサ姉の、ギャル感が満載の女子高生姿。妙に短いスカートと安っぽさが、余計とエロスを感じさせる。
こんな風に恥ずかしそうにしているのも、あんまり見られない姿だから興奮を誘う。
「最高だよリサ姉、思った以上だよ」
「……これ、喜んでエエんか?」
褒めているんだけどな。大人の色気を纏っているのに、女子高生っぽい雰囲気はある。
女子高生という年齢で無いのは分かっている。その現実と、見た目のギャップがたまらない。
こんなに妖艶な女子高生なんて居ない。だからこそのエッチな感じというか。
言葉で表現するのが難しい。とにかく可愛くて、エロくて理性が吹き飛びそうだ。
今までにない盛り上がり方をした俺は、かなりハッスルしてしまった。少し頑張り過ぎた俺は、もう二度と制服は着ないと言われてしまった。




