第45話 今までにないリアクション
高嶺部長から無駄に性欲を掻き立てられたものの、どうにか耐えた俺は夕食を作っている。
それにしても、高嶺部長とも関係を持つとは言え、会う頻度はどうしよう。あまり良く考えて居なかった。
テクニックを磨きたいというのもあるし……週1程度では、流石に少ないかな?
セックスが上手くなれば、リサ姉も喜ぶ。それは良いとして、結局気を引いてどうしたいのか。
リサ姉は初恋のお姉さんで、憧れの女性で、大切な人でもある。昔からずっとそう思っていたし、今でも認識は変わらない。
(そう。今も俺の理想は、リサ姉のままだ)
ただ厄介なのは、自分なりに初恋の整理がついてしまった事。リサ姉に魅力は感じているけど、恋愛対象から一度外してしまっている。
しかもセフレになってしまったお陰で、どういう感情を向けているのか自分で分からない。
憧れの女性とセックスが出来るのは、嬉しいけどベースには性欲がある。そして性欲はイコール恋ではない。
愛のあるセックスかと言うと、少し微妙なラインだ。俺なりに大切な人だと思う気持ちを、毎回込めて行為をしている。
自分の性欲はもちろんあるけど、一番はリサ姉に満足して貰う事。寂しさを紛らわせてあげる事だ。
愛する人から裏切られてしまった、その心の傷を少しでも癒してあげる為に行っている。
(俺は一応そのつもりなんだけど……リサ姉はどうなのだろう)
下心が一切無いとまでは言わない。確かにそういう面があるのは否定しない。俺だって、それ相応の欲求ぐらいある。
何より初恋のお姉さんとセックスが出来るなんて、大体の男性からすれば最高のシチュエーションだろう。
自分だったら断るなんて言える人は、果たしてどれぐらい居るというのか。むしろ言い切れる人が居たら、嘘を疑ってしまう。
女性が苦手とか何かの理由がない限り、受け入れる人が殆どなのではないだろうか。
だからこそ俺は分からないんだ。今の俺がリサ姉へ向けている気持ちが、愛情なのかどうか。本気で結ばれたいと思えるのか。
付き合えるとすれば、もちろん嬉しい。だけどその嬉しいという気持ちは、愛だと言えるのだろうか?
俺がまだ高校生だったら、難しい事は考えずに交際を願っただろう。社会を知らない身分だったら、余計な事は考えなくて良い。
だけど俺はもう、社会人として働く身分だ。学生時代のように、気持ちだけでは先に進めない。
リサ姉は30歳で、また子供が欲しいと願うのなら。結婚があまり遅いと、子供を作るのは難しくなる。
確か以前にも、そんな事を言っていた筈だ。再婚をするならその相手との間に、子供を望む可能性は高い。
あれだけ子育てに必死で、子供が好きなリサ姉の事だ。少なくとも1人ぐらいは欲しいだろう。
じゃあ今の俺が結婚をして、果たしてリサ姉を養っていけるか? 最初は共働きでも良いとしてもだ。
実際に子供を妊娠して、家計を支えるのが1馬力になった時。俺の今の資金力で、2人分を支えるのは厳しい。
じゃあ昇進するのを待てというのは、あまり現実的とは言えない。その頃にはリサ姉は、高齢出産の年齢になる。
仮に俺が今から頑張って、5年で部長クラスまで行けたとして。それでもリサ姉は、35歳なのだから。
(やっぱり俺は……相応しい相手じゃない)
でもそれは条件を変えれば話は変わる。子供を作らないのであれば、結婚までは行ける。共働きで稼げば良いだけ。
だけどそれは、リサ姉にとって幸せな未来なのか? 子供を我慢して貰って、俺と結婚する事が。
俺じゃない30歳ぐらいの、収入と地位の高い男性なら、そんな我慢は必要ない。俺という存在は、リサ姉の幸せに繋がらない。
結局今のままである方が、お互いの為に良いのかも知れない。だけど俺は、リサ姉の気を引こうとしている。
高嶺部長と関係を持って、嫉妬をさせようとしている。どうしてこんな事を、俺は考えてしまうのか。
「ただいま~! 今日も暑いなぁ」
「お帰り、リサ姉」
今日もラフな格好に着替えたリサ姉が、俺の家にやって来た。小麦色の肌が今日も眩しい。
相変わらず可愛いなと思っているし、美人だとも思っている。だがこの気持ちは何だ? 彩智に向けていた感情とは少し違う。
俺の中で特別な人という意識があるから、どうにも元カノとの違いがハッキリとしない。好意であるのだけは間違いないけど。
好意と恋は、似ているけど違う物。そもそも俺は、彩智を愛せていたのだろうか? 今となっては、そこから疑う必要がある。
愛せていなかったから、フラれたのだとしたら? リサ姉を相手に、また同じ事をしてしまったら。
「今日は野菜炒めと、肉じゃがか~エエやん」
「うん、あとお刺身も買って来たよ」
悩んでいたから見落としていたけど、今日はメイクを落として来なかったんだ。いつもなら落としてから来るのに。
それだけ仕事が忙しかったのかな。受付の仕事って、思ったより大変そうだしな。来院する高齢者も多いだろうし。
「あ、あの……リサ姉?」
どういうつもりなのか、リサ姉に背後から抱き着かれている。こんな時間から珍しいな。お酒も入っていないのに。
「ちょっとだけこうさせて」
「い、良いけど」
高嶺部長が変に意識させてくれたから、正直今日は性欲が高まっている。あんまり刺激しないで欲しい。
まさか高嶺部長、これを狙っていたのではないよな流石に? リサ姉と盛り上がるように仕向けられた?
だが今は料理をしている最中だ。中途半端にやめる事は出来ない。それに腹も減っているし、リサ姉も待っているだろう。
出来るだけ平常心を保ちながら、俺は調理を続けていく。飽きたのか何なのか、リサ姉は途中で離れていった。
どういう意味があったのか、良く分からない。今までこんな事は、あんまりして来なかったのに。
本当にリサ姉は、俺が好きなのだろうか? 高嶺部長が言っていたように。これはその表れなのだろうか?
「良し出来た。お待たせリサ姉」
「ありがとう~。ほな食べよっか」
そこからはいつも通りの夜が始まる。普通に食事をして、片付けて2人で軽くお酒を飲む。
何だろう? 心なしかリサ姉からのボディタッチが多いような。今までたまにだけど、こういう時はあった。
ただそういう時は、必ず何かあった時だ。デートで盛り上がったり、辛い事があったり。でも今日は、特別そんな感じでもない。
気分の問題なのか、それとも別の何か理由があるのか。まさかと思うけど、早くも高嶺部長と関係を持った効果が?
昨日の今日で、流石にそれは無いか。幾らなんでも早過ぎるだろう。だったら最初から、高嶺部長と関係を持たせない。
「なぁ一輝君、昨日は雫とどんな事したん?」
「え? えーっと……」
いきなり昨日のプレイ内容を聞かれた。やっぱり気になっていたの? それともただの世間話? どっちなんだ?
分からない、リサ姉の心の内が。だから俺は、少し意地悪をしてみる事にした。リサ姉の反応を見たくて。
「もしかして、同じ事をして欲しいの?」
「…………うん」
何だそのリアクションは? 可愛すぎるだろう。そして何より、夕方から刺激させられていた性欲が爆発した。
俺はそのままリサ姉を押し倒して、そのままセックスを始める。もうシャワーなんてどうでも良い。今すぐリサ姉を抱きたかった。
やっぱり俺は、リサ姉を欲しているのか? それとも高嶺部長に触発されただけなのか。もう良く分からない程、興奮させられてしまった。
2人の美女に翻弄された俺は、ただがむしゃらにリサ姉を抱いた。思うままに、貪るように。俺は一心不乱に、目の前の女性を求め続けた。
今は難しい事を考えないで良い。リサ姉が乱れる姿を、喜ぶ表情を見ていたい。俺はただ、リサ姉に溺れていた。




